所得税よりも高くなりがちな住民税の節税も意識しよう
国税庁発表の民間給与実態統計調査(平成30年分)によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は441万円となっています。このぐらいの年収の多くの人は、所得税の最高税率と住民税率が同じ10%ということになりますが、所得控除額が住民税のほうが少なくなるため、住民税のほうが高く感じることが多いのです。収入が多くない人ほど、住民税を節税するメリットは大きくなります。今回は、所得税だけではなく住民税の節税も意識しましょうということについて解説します。【関連記事をチェック!】
住民税の所得控除額とは?所得税と違う項目と金額は
住民税と所得税の違いとは、
・扶養控除額などの控除額が所得税よりも低い
・住宅ローン控除は、所得税から控除できなかった時に可能となる(限度額あり)
・少額配当も加算される
・申告課税方式の所得税と違い、賦課課税方式である
・均等割がある
などです。
住民税を節税する上で、注意すべき点は?
「年末調整や確定申告などで、控除できる金額は、最高額まで全て申告する!」ということです。例えば、住宅ローン控除が適用される人の例で見ていきましょう。例:住宅ローン控除が使える人の例
課税される所得金額が297万7000円(給与収入487万5000円、給与所得 約335万7600円、基礎控除38万円)
「住宅ローン控除を申告したから医療費控除や生命保険料控除は面倒なので申告しなくていいや、どうせ、所得税はかからないから!」と考えてしまう人も多いようです。しかし、住宅ローンは、所得税で満額控除されておらず、控除不足がある場合など(住民税から住宅ローン控除を取り戻せるケースとは)を除き、住民税からは控除されません。
所得税はかからなくても、所得税と同じ税率の住民税が課税される可能性がありえます。例えば、課税される所得金額が297万7000円(給与収入487万5000円、給与所得 約335万7600円、基礎控除38万円)の場合、住宅ローン控除前の所得税額20万200円で、住宅ローン控除限度額が20万円だった場合、もちろん、所得税額は200円です。
この人の払う住民税は、基礎控除が33万円で、かつ、住宅ローン控除20万円がありませんので、課税される所得金額は302万7000円、住民税額は30万2600円となってしまいます(細かい計算は省きましたが、実際の住民税は、都道府県が4%、市町村が6%で、それぞれ100円未満の端数を切り捨てるため、100円の相違が出ています)。
この人が入院等をして医療費控除を50万円受けた場合、所得税額を減らす効果は200円しかありません。しかしながら、住民税は5万円が減額されて25万2600円となります。医療費控除に限らず、生命保険料控除や社会保険料控除など、控除できる金額は、住民税まで意識して、最高額まで全て申告することが重要となります。
ちなみに
住宅ローン控除前の所得税額20万200円と住民税額30万2600円の差額10万2400円は下記の違いによるものです。① 所得税における税率の5%部分(課税される所得金額195万円までは5%)
⇒+9万7500円
②基礎控除額の差額5万円部分(所得税38万円、住民税33万円)
⇒+5000円
③住民税端数処理分
道府県民税:課税標準302万7000円×税率4%=12万1080円(100円未満切捨)△80円
市町村民税:課税標準302万7000円×税率6%=18万1620円(100円未満切捨)△20円
⇒△100円
上記の差引きの合計が10万2400円になっているのです。
住民税は、前年分の給与収入等をベースとして計算され、年末調整において還付される訳ではないため意識していない人が非常に多いのですが、決して軽い税負担ではありません。いま一度、意識してみましょう。
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