建物と資産価値の関係
昨今は、資産性重視の影響からか、最寄駅までの徒歩分数に関心が集まり過ぎているような気がする。確かに利便性は重要だ。しかし、資産価値に直結する要素はそれだけではない。例えば、建物。質の高い構造躯体、眺望価値を引き立てる開口部、共用部などの付加価値。物件選びは総合的に判断したいものだ。そこで今回は、ここ数年見学してきた中で最も印象に残ったマンションをご紹介したい。交通アクセスは南北線他「白金高輪」駅徒歩6分、地上27階地下2階建て、全172戸「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」(事業主:三菱地所レジデンス、野村不動産)。設計・施工の竹中工務店は、敷地の従前の所有者でもある。
構造は、住宅性能表示制度における<耐震性>最上ランクの「免震」。階高は基準階3.41m(最上階3.61m)を確保し、2.7m(最上階2.85m)もの天井高を実現した。これだけでも十分ハイクオリティマンションであるが、注目すべきは資産価値と連動しやすい「外観」と「エントランス」である。
ガラスと天然の割り肌調コンクリートとで構成された外観は、シンメトリな意匠で、見るものに重厚感と洗練されたイメージを与える。さらに、プレキャスト工法の利点を生かし、大きなガラス面とのサイズを統一的に規則性を持たせ、安定感を思わせるシンボリックで(ガラスカーテンウォールでは出しにくい)邸宅感を醸し出すタワーマンションに仕上がっている。
エントランスは、敷地の高低差をいかした演出が見事。隣接地の庭園と連なる敷地内緑地を大階段越しに見上げる格好となり、訪れたゲストには相当インパクトのある景色になるだろう。
モジュール(単位)の発想
下の間取りはモデルルーム185Aタイプ。図面を見ていて驚いたのは、モジュールの発想で空間形成がなされていること。まず一つの開口部にはめ込まれた窓ガラスのサイズが同じ(オレンジの矢印)。次にバルコニー幅と隣り合う窓面のサイズが同じ(黄色の矢印)。そして柱の両側が同サイズ(青い矢印)。外観デザインを重視しながらの(居住性に関わる)通風窓の取り方にも注目したい。ユニークなのは、インテリアにも「対称」が引き継がれていること。上がり框両側のシューズインクローゼット扉(1)これは機能的にも優れている。リビングダイニングに入る両開き扉(2)。廊下の明かり取り(3)。バルコニーコーナーサッシュ(4)。プライベートソーンの水回りは見ていて楽しくなるほど(5)。「個」を尊重した設計は、暮らしのモジュール(単位)にも通ずるということか。
山手線「新駅」から約1.3km
現地は、白金台から坂を下りた目黒通り起点に程近い場所。南側は八芳園や都ホテルの借景が、北側は上記緑地の借景が期待できる。高輪皇族邸も300m圏内。大通りを一本入れば、都心とは思えないような閑静な環境である。バス交通も便利。品川駅高輪口から白金台停留所まで時刻表では所要時間8分である。その短さを意外に思われる方も多いだろう。
最注目は、JR山手線の新駅から約1.3kmの距離にあること。いずれ山手線徒歩圏マンションになる。将来性も期待できる立地条件といえる。
【参考記事】
免震構造の基礎知識