心がぐんぐん成長する4歳児におすすめの絵本は?
幼稚園に通い始めると、家庭での癇癪が増えることも。でも、それは緊張の反動や「こうしたい」という思いから。集団生活を経験し、心が育っているのですね
想像力が豊かになり、絵本と現実のできごととを、同じように事実として感じる頃でもあります。お話も上手になるので、自分で作ったストーリーを語ってくれることもあるでしょう。
心も身体も成長する4歳児、そんなときに読みたい絵本をご紹介します。
<目次>
- 4歳の絵本、選び方のポイント
- 『すてきな三にんぐみ』
- 『ぎょうれつのできるレストラン』
- 『よかったねネッドくん』
- 『バムとケロのにちようび』
- 『ラチとらいおん』
- 『でこちゃん』
- 『めっきらもっきらどおんどん』
- 『どうぶつえんガイド』
- 『かみひこうき』
- 『三びきのこぶた』
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4歳の絵本、選び方のポイント
【想像の世界で自由に遊べるファンタジーや昔話】4歳は、「ごっこ遊び」が大好きな頃。それは、役割を理解する力がついてきたり、想像力が豊かになってきたりしている証拠です。物語の起承転結、ストーリー展開も分かるようになってきます。主人公と一緒に泣いたり笑ったりしながら冒険を楽しめるファンタジーや、躍動感があり力強い昔話を喜びます。
昔話絵本は、同じストーリーの絵本が数多く出版されているので、選ぶのが難しいのですが、まずは手にとってみてください。ダイジェスト版でないもの、アニメ風の絵でないものがよいでしょう。また、図書館で質問してみると、実物を見ながらいろいろ教えてもらえますよ。
【さまざまな感情に触れられる絵本】
集団生活を通じ、人の気持ちを理解できるようになったり、コミュニケーションをとることの楽しさを知ったりするので、細やかな感情の描かれた絵本もおすすめです。優しさや思いやりなどのプラスの感情だけでなく、いじわるや怠けたくなるような気持ちに触れられるといいですね。
【自然がテーマの絵本や、科学絵本】
知的好奇心の幅も広がる頃なので、自然や数などの科学絵本、身近な不思議のつまった、年中行事や季節の絵本も楽しめます。友だちとのやりとりを通して、ことばも発達しますので、簡単ななぞなぞやリズミカルな文章も喜びます。
4歳児におすすめの絵本1.
子どもの心に残り続ける『すてきな三にんぐみ』
『すてきな三にんぐみ』
人々を襲っては宝を奪っていた3人の泥棒は、ある日さらってきた子ども、ティファニーちゃんに、宝物の使い道を聞かれてはっとします。これまで、ただひたすら集めていただけだった泥棒たちは、大きなお城を買うことにして……。
この絵本を読んだ子どもたちの感想は、実に様々。ハッピーエンドにほっとする子がいれば、自分に家族がいることを喜ぶ子も、「ラッパじゅう」や「こしょう・ふきつけ」などの脅しの道具に熱中する子もいます。
けれど、共通しているのは、皆、この三にんぐみが好きになってしまうということ!
この絵本をずっと読み続けている小学生が、こう話してくれたことがあります。「前は、みなしごたちが幸せになってよかったって思ってたけど、三にんぐみも幸せになったよね。よかったね」― 何歳で読んでもその時なりの発見や面白さがある、『すてきな三にんぐみ』は、そんな絵本です。
ことばのリズムが、読んでいてとても心地良いので、ぜひ味わってくださいね。
【書籍データ】
書名 『すてきな三にんぐみ』
さく トミー・アンゲラー
やく いまえよしとも やく
出版社 偕成社
4歳児におすすめの絵本2.
読めば誰もがとりこになる『ぎょうれつのできるレストラン』
『ぎょうれつのできるレストラン』
ぐうぐうやまのてっぺんの、とりわけ高い木の上にあるフクロウさんのレストラン。子どもフクロウのポーの夢は、お父さんとお母さんのようなコックさんになることですが、ある日、こっそりおつかいに行こうとして木から落ちてしまい……。
いつも一生懸命なポーの大活躍に、子どもたちはハラハラドキドキ。ポーを助けてくれる動物たちには拍手喝采です。
そして、絵本に出てくるおいしそうなお料理! ポーの作るおいも料理の「おいしそうな」「あまい」「あったかい」においには、動物たちだけでなく、絵本を開いている人は皆吸い寄せられてしまいます。
あたたかな雰囲気で、安心して読める『ぎょうれつのできるレストラン』。日ごろやんちゃな子が「ぐうぐうやまってどこにあるのかなあ」とため息をつく姿が見られるかもしれません。
カバーには、ポーの「かんたんスイートポテト」レシピが付いています。
【書籍データ】
書名 『ぎょうれつのできるレストラン』
作・絵 ふくざわゆみこ
出版社 教育画劇
ぎょうれつのできるレストラン
■ぎょうれつのできるおいしい絵本
4歳児におすすめの絵本3.
ユーモアが子どもたちに人気の『よかったねネッドくん』
『よかったねネッドくん』
ネッドくんに交互に降りかかる、幸運と災難。飛行機が爆発した、でも、パラシュートがあった! なのに、そのパラシュートには穴が開いていた!? というように、テンポよく続いていきます。
その奇想天外な展開に、子どもたちは大笑い! ストーリーを覚えていてもなお楽しいようで、何度でも読みたがります。
いいことがあるときはカラー、悪いことが起こるときは白黒、とクルクル変わるビジュアルも楽しく、最後まで飽きさせません。あまり絵本を読んだことのない子どもでも入り込みやすいですし、大勢で読んでも盛り上がります。
さてネッドくん、無事にパーティー会場にたどり着けるかな?
【書籍データ】
書名 『よかったねネッドくん』
さく レミー・チャーリップ
やく やぎたよしこ
出版社 偕成社 ■4歳頃におすすめのユーモア絵本が楽しい絵本
4歳児におすすめの絵本4.
絵本と日常の楽しみ方を教えてくれる『バムとケロのにちようび』
『バムとケロのにちようび』
ちらかった家をきれいにして、雨なのに外で遊んでどろんこびちゃびちゃのケロをお風呂に入れて、お皿に山盛り(数百個!)のドーナツを作って、お気に入りの本を屋根裏から取ってきて― そんなふうに、バムとケロがどたばたしながらも、楽しく暮らしている様子が描かれています。
バムとケロの家の中も、見飽きることはありません。家具や雑貨の脚が長ぐつを履いていたり、バスタブが犬の形をしていたり、別シリーズの主人公であるガラゴの人形がそっと置いてあったり……。バムとケロが日常の小さなことを楽しんでいるのが伝わってくるようです。
こんなふうに、この絵本には、文章ではなく絵で語られるサイドストーリーがたくさんあるのです。表紙や裏表紙にもしかけがありますし、バムが本を探しているとき、ケロがしているのは……? など、ページを開くたびに新しい発見がありますよ。
バムとケロが屋根裏に向かう絵本の1シーンを、窓の外から見ているのが表紙なら、バムとケロが行ってしまった後の廊下を描いているのが裏表紙
ひらがなが読めるようになる4歳頃には、絵本を読んでもらっていても、意識が文字に向いてしまうことがあるようです。けれど、絵本は絵もまた「読む」もの。絵を見ずにはいられないバムとケロは、絵を見る楽しさを思い出させてくれます。
もしお気に召したら、ぜひシリーズでどうぞ。前のお話に出てきたアイテムが、次のお話にちゃんと出てくるので、バムとケロの世界をより楽しむことができますよ。
【書籍データ】
書名 『バムとケロのにちようび』
作・絵 島田ゆか
出版社 文溪堂 ■バムとケロシリーズ(ほか多数) ■つい欲しくなるバムとケロのグッズいろいろ(ほか多数)
4歳児におすすめの絵本5.
子どもも大人も目が離せない弱虫の大きな成長『ラチとらいおん』
『ラチとらいおん』
この絵本の主人公は、犬も、暗い部屋も、友だちまでも怖いラチという男の子。でも、そんなラチのもとに、ある朝小さな赤いらいおんが現れて……。
『ラチとらいおん』は、弱虫な男の子の成長を描いてはいるものの、決して重たくはなく、軽快でユーモアに満ちた絵本です。
スッとした線に明るい色をつけた絵はおしゃれですし、登場人物は、皆、表情豊か。らいおんの「よくみていたまえ!」という口調や、「いち にっ さん!」と強くなる体操をする姿を、子どもたちはおかしがります。そして笑いながらも、ライオンと数々の困難を乗り越える姿を、しっかりと見ています。
とうとう一人でいじめっ子をやっつけてしまうほどに強くなったラチを見たらいおんは、別の弱虫の子のところへと去っていくのですが、らいおんの残した手紙を読むラチの泣き顔の真剣さを、子どもたちは見逃しません。
「ラチ、強くなったんだね」― ラチは眉をあげ、口を固く結び、気概さえ感じる表情をしています。いろいろなものを怖がって泣いているときのラチの表情とは、全く違うのです。自分に信頼を寄せてくれる人がいるというあたたかさは、きっと、これからずっと、ラチや子どもたちを助けてくれるでしょう。
かわいらしい姿をしながら、たっぷりの愛情でラチを励まし続けたらいおんの「もう、ぼくが いなくても だいじょうぶだよ」には、大人として、親として、思わず涙があふれます。
ずっと手元に置いておきたいという人も多い、大きな一歩を踏み出す勇気をくれる絵本です。
【書籍データ】
書名 『ラチとらいおん』(世界傑作絵本シリーズ)
文・絵 マレーク・ベロニカ
訳 とくながやすもと
出版社 福音館書店 ■根強い人気! ラチとらいおんのグッズいろいろ(ほか多数)
4歳児におすすめの絵本6.
おしゃまな子どもたちの共感を呼ぶ『でこちゃん』
『でこちゃん』
前髪を切り過ぎた切なさは、経験者共通のもの。何をしていてもおでこが気になるでこちゃんを、子どもたちは、皆「あーあ……」という表情で見守ります。
でも、おでこを目立たないようにあれこれ試す姿は、ユーモアたっぷり! また、部屋の中やおつかいに行く商店街にも、「こんなものまで!?」と謎めくほどにいろいろなものが詰め込まれていて、見ごたえ充分です。
でこちゃんや幼稚園の友だちがおでこを大好きになるエピソードも、いかにも女の子らしく、かわいらしい。ほんわか、楽しい気分になります。
カラフルでインパクトのある絵、つい笑ってしまうエピソードなどが、男の子にも人気の絵本です。
【書籍データ】
書名 『でこちゃん』(わたしのえほん)
さく・え つちだのぶこ
出版社 PHP研究所
4歳児におすすめの絵本7.
どこか懐かしいロングセラー『めっきらもっきらどおんどん』
『めっきらもっきらどおんどん』
おばけといっても、ちっとも怖くありません。怖いどころか、かんたと遊びたくて大泣きしたり、遊ぶ順番をめぐって大ゲンカしたりと、元気で無邪気で愛らしいおばけたちです。
こちらおばけの「おたからまんちん」。すいしょうだまのぞいてみると、海が見える!
全体的にどこか懐かしい感じがするのは、たっぷりと水を含んだような美しい色遣いと、わらべ歌に通じる身近な日本語の響きのためかもしれません。
冒険は、かんたがお母さんを呼んだことで幕を下ろします。たっぷり遊んで、お母さんのところへ帰ってくるという安心感をも、子どもたちは喜ぶのでしょうね。
【書籍データ】
書名 『めっきらもっきらどおんどん』(こどものとも傑作集)
作 長谷川摂子
画 ふりやなな
出版社 福音館書店
4歳児におすすめの絵本8.
どんどん次を読みたくなる『どうぶつえんガイド』
『どうぶつえんガイド』
たとえば、キリン。キリンの1番の特徴である「ながーい」がたくさん詰め込まれています。「ながーいくび」「ながーいべろ」「ながーいあし」「ながーいしっぽ」「それからおしっこもながい」、という調子です。
それぞれの解説も実に楽しい。首について「なかよく なりすぎて ほどけなくなる― なんてことは ない」なんて笑いを誘ったかと思えば、おしっこは「ときどき にじも かかる」と、身近でいつも動物を見ている人でないと知らないことがパッと出てきたりするのです。
それもそのはず、『どうぶつえんガイド』の著者は人気の旭山動物園で20年以上飼育員をされていたあべ弘士さん。ライオンやゴリラ、ウサギにペンギン、それから切符を買わずに動物園に入ってくる、カラスやハトやカタツムリまで、次々と登場します。最後に出てくるのが何かは、お楽しみに!
動物の特徴がよく分かるだけでなく、ユーモアたっぷりで読みやすいので、図鑑が苦手な方にもおすすめです。園内案内図のような目次もお見逃しなく。
【書籍データ】
書名 『どうぶつえんガイド』(福音館のかがくのほん)
さく・え あべ弘士
デザイン なかのまさたか
出版社 福音館書店 ■あべ弘士さんの動物の絵本(ほか多数)
4歳児におすすめの絵本9.
身近な「不思議」から科学へと導く『かみひこうき』
『かみひこうき』
こんな身近な試行錯誤を、「みてごらん」「てすとして かんがえてごらん」「どうなるかな」と優しく語りかけながら、科学の心を育んでくれるのが『かみひこうき』です。
この絵本は、紙ひこうきの折り方(折り紙)の本ではありません。よく飛ぶ紙ひこうきを作るには、どうしたらいいのかを考える絵本です。
紹介されているのは、折り方や翼の切り方の工夫といった、チェックポイントやチェック方法。絵本の通りに行かないこともあるけれど、子どもたちは、あれこれ工夫する楽しさや、よく飛ぶ飛行機ができた感激を味わいます。
「ひこうきを かさねて とばしたら どうなるかな」― 絵は、『はじめてのおつかい』『おつきさまこんばんは』でおなじみの林明子さんです
実際に作ってこそ楽しめる絵本なので、寝る前よりも、遊ぶ時間があるときに読むのがおすすめです。懐かしさも手伝って、子どもよりも夢中になってしまう大人の方も多いほどの面白さです。
【書籍データ】
書名 『かみひこうき』(かがくのとも傑作集)
ぶん 小林実
え 林明子
出版社 福音館書店 ■4歳頃に楽しめる知識の絵本
4歳児におすすめの絵本10.
昔話の本当の楽しさを知る『三びきのこぶた』
『三びきのこぶた』
イギリスの昔話である「三びきのこぶた」は、日本でも、いろいろなストーリーとイラストで絵本になっていますが、この『三びきのこぶた』は、昔話をしっかりと再現しています。
既に別の絵本に慣れている方は、2匹のこぶたがオオカミに、オオカミが3番目のこぶたに食べられてしまうことに驚いてしまうかもしれません。けれど、残酷と言うような描写はありませんのでご安心ください。むしろ、恐ろしいオオカミとのやりとりにハラハラし通しだった子どもたちの、「あー、よかった」という表情を見ていただきたいと思います。
子どもたちの心をとらえるのは、簡潔で分かりやすい日本語と色合いの美しい絵。オオカミがこぶたの家を吹き飛ばす「ふうふうの ふっ」や、綿密に描き込まれた家の中お祭りの様子も楽しいものです。
そして、なんとも気になるのが裏表紙。大人になった3番目のこぶたの肖像画を、小さなこぶたたちが見ている絵が描かれています。3兄弟ははだかんぼうだったのに、このこぶたたちは服を着ていて……。この絵は何なのかと、幼稚園児から大人まで、様々な推理が飛び出してきます。
のびやかな昔話の世界を味わっていただける絵本です。
【書籍データ】
書名 『三びきのこぶた』(こどものとも傑作集)
やく 瀬田貞二
え 山田三郎
出版社 福音館書店 ■4歳頃に楽しめる昔話絵本