もうすぐ小学生! できることが増える5歳児におすすめの絵本とは?

幼稚園児写真

「話す」「聞く」といった力がつき、ことばでのコミュニケーションが上手になります。ニュースのことばに興味を示し、遊びの中で使うなど、語彙も飛躍的に増える時期です


幼稚園や保育園で、年少さんや年中さんのお手本となり、友だちとの関係を深めていく年長、5歳の頃。心はぐんと成長し、思いやりの心、反省する気持ち、責任感を覚え、目標に向かって努力できるようになってきます。

小学校入学を意識すると、大人は、ついできないことを心配し過ぎたり、自立を強く求めたりしてしまいがちですが、子どもたちは「5歳」のその時を懸命に生きています。

まずは今の感情を受け止め、外で何があっても、家庭が安心できる場所であることをしっかりと伝えていきたいところ。絵本についても、今まであまり絵本を読んでいなかったという場合には、焦らずに下の年齢のものから選んでみてはいかがでしょうか。

冒険を満喫した後のあたたかさを味わえる絵本、ことばの面白さや日常の不思議に触れ、好奇心を刺激してくれる絵本で、楽しいひと時をお過ごしくださいね!

1 5歳っていいな! 『だってだってのおばあさん』

『だってだってのおばあさん』

『だってだってのおばあさん』


「だって わたしは おばあちゃんだもの」が口ぐせのおばあさん。一緒に暮らす5歳の男の子のねこに、魚釣りに誘われても「だって わたしは 98 だもの、98の おばあさんが さかなつりを したら にあわないわ」と断ります。

ところが99歳の誕生日、ケーキに立てるろうそくが5本しかなく、おばあさんは、なんと5歳になってしまいました!

おばあさんが久しぶりに過ごす、5歳のキラキラした1日。今まで行かなかった魚釣り、ずっと来ていなかった広くて優しい風の吹く野原― 「5さいって なんだか ちょうちょみたい」「5さいって なんだか とりみたい」と、おばあさんが声をあげる度に5歳の子どもたちは、くすぐったそうに笑います。

5歳って、なんて素晴らしいんでしょう!

表情豊かなおばあさんとねこの穏やかでほのぼのとしたやりとりは、他の年齢でももちろん楽しめますが、ぜひ5歳のその時に読んでいただきたいと思います。

また、思い込みの方向をちょっと変えただけで、これまでとは全く違う楽しさや喜びを手に入れたおばあさんの姿は、きっと大人にもエールとなるでしょう。

【書籍データ】
書名 『だってだってのおばあさん』
さく・え 佐野洋子
出版社 フレーベル館
価格 1296円

2 自分にもできるかな? 皆一緒に『はじめてのおつかい』

『はじめてのおつかい』(こどものとも傑作集)

『はじめてのおつかい』(こどものとも傑作集)

忙しいママに、牛乳を買ってくるよう頼まれたみいちゃん。これは、みいちゃんにとって、はじめてのおつかいです。百円玉2つを握りしめて、いざ、坂の上のお店へ! ところが、猛スピードで走る自転車とすれ違ったり、転んでお金を落としたり、お店の人になかなか気づいてもらえなかったりと、おつかいは困難の連続です。

子どもたちは、みいちゃんと一緒にドキドキ。緊張して息を止めては、ほっとしてため息をつき、また緊張して……のくり返し。勇気をふりしぼって買った牛乳を手に、お母さんに会えたときには、ひときわ大きなため息が漏れます。

『はじめてのおつかい』裏表紙

こちらは、絵本の裏表紙。甘えるようにママの膝に片足をのせて牛乳を飲んでいるみいちゃんに、子どもたちは大喜び!


『はじめてのおつかい』は、子どもの頃好きだった絵本として挙げる方も多い、言わずと知れたロングセラー。林明子さんの、親しみやすく優しい雰囲気の絵も印象的です。

みいちゃんと一緒に体験した「はじめてのおつかい」、その心の揺れが子どもたちの共感を呼ぶのでしょう。子どもが、そしてかつて子どもだった大人が選ぶ、皆が大好きな絵本です。

絵には、ちょっとしたいたずらがしかけられているので、隅々まで、ぜひお楽しみください。

【書籍データ】
書名 『はじめてのおつかい』(こどものとも傑作集)
さく 筒井頼子
え 林明子
出版社 福音館書店
価格 972円

3 ユーモアは世代を超える! 『だじゃれどうぶつえん』

『だじゃれどうぶつえん』

『だじゃれどうぶつえん』


ライオンがカレーを食べたら、「かライオーン」!
ばっちりメイクにスカートでおめかしのかばが、「わたし かばいい?」

『だじゃれどうぶつえん』は、1冊まるまる、動物のだじゃれで埋め尽くされた絵本。子どもたちは、こちらがあっけにとられるほど大笑いしてくれます。そして、最初は「くだらない」「分からない」なんて言っていた人も、読んでいるうちにじわじわと絵本にひき込まれ、夢中になってきたりして……。

たとえば、おじさんの帽子をとろうとするコアラに「コアラ!」。声に出してみてください。どんなふうに読もうかと、ちょっと考えますよね? 絵とことば、どちらが欠けても成り立たないこの絶妙な組み合わせを、声に出して表現する― 『だじゃれどうぶつえん』には、そんな楽しさがあります。

ちなみに、だじゃれが分かるようになったということは、子どもがまた少し成長したということでもあります。だじゃれのルーツは、日本の伝統的な表現技法。こんなふうに、上質なユーモアに触れながら、子どもたちは日本語を豊かにしていくのかもしれませんね。

5歳くらいから喜ばれる『だじゃれどうぶつえん』、小学生、特に男の子の場合は高学年にも好まれます。そして、大人の方へのプレゼントとしても人気。長く楽しめる絵本です。

【書籍データ】
書名 『だじゃれどうぶつえん』
文 中川ひろたか
絵 高畠純
出版社 絵本館
価格 864円

 

■だじゃれシリーズ

4 「絵本」の面白さがつまった『だいくとおにろく』

『だいくとおにろく』(こどものとも傑作集)

『だいくとおにろく』(こどものとも傑作集)


昔、あるところに、何度橋をかけても流されてしまう大きな川がありました。困り果てた村人は、名高い大工に橋をかけるよう頼みます。大工は、すぐに引き受けたものの、だんだん心配になってきて、川べりで悩んでいました。

そこへぶっくりと現れたのが大きな鬼! 目玉をくれれば橋をかけてやると言います。大工がいい加減な返事をしているうちに、橋はできあがってしまい、鬼は、名前を当てたら許してくれると言うのですが……。

「だいくとおにろく」は、東西問わず昔話の定番である名前を当てる話で、数多くの絵本が出版されていますが、この、松居直さんが再話を、赤羽末吉さんが絵を手がけた『だいくとおにろく』には、怖いだけではなく、なんとも言えない楽しさがあります。

凄まじい勢いの川べりで繰り広げられる、目玉をめぐっての緊迫したやりとり。けれど、大工は、はっきりしないキャラクターで、迫力のおにろくも、なんだかいつもご機嫌そう……。

そして、声に出して読むと分かる、そのおおらかさ、テンポのよさ。ページをめくるタイミングとことばの切れ目も絶妙です。最後の「おにろく!」は、誘わずとも大声で叫ぶお子さんも少なくありません。

絵巻物のように横長の絵本には、モノクロとカラーのページが交互に配置されています。モノクロの濃淡の美しさも、日本の伝統的な色遣いも、それぞれに美しく印象的。カラーになっているのは物語のポイントとなる部分で、川の流れのスピード、鬼の作った橋の見事さ、山の深さが鮮明に伝わってきます。

ちょっぴり怖くて、不思議で、魅力あふれる『だいくとおにろく』。絵本というメディアの面白さをたっぷりと楽しめる絵本です。

【書籍データ】
書名 『だいくとおにろく』(こどものとも傑作集)
再話 松居直 再
画 赤羽末吉
出版社 福音館書店
価格 972円

5 子どもの好きなグリム童話を上質な絵本にした『おおかみと七ひきのこやぎ』

『おおかみと七ひきのこやぎ』(世界傑作絵本シリーズ)

『おおかみと七ひきのこやぎ』(世界傑作絵本シリーズ)


「あけておくれ、こどもたち。おかあさんだよ」「あけないよ。おかあさんじゃないもん」「おまえは きっと おおかみだろ!」― 子どもたちは、この物語も、やぎやおおかみになりきって遊ぶのも、大好き。

ご存じグリム童話の「おおかみと七ひきのこやぎ」ですが、絵本で読むなら、落ち着いた色調の美しい表紙が印象的な、フェリクス・ホフマンの絵の『おおかみと七ひきのこやぎ』がおすすめです。

おかあさんやぎが出かけている間にやってきたおおかみが、こやぎたちを騙し、ただ一匹、末のこやぎを残し、ほかの皆を丸のみにしてしまいました。帰ってきたおかあさんやぎは、嘆き悲しみますが、野原で眠っているおおかみのおなかが、もくもく動くのを見つけて……。

自分の分身のようなこやぎたちに、ごわごわとした毛に鋭い目のいかにも恐ろしげなおおかみ。そのおおかみをのおなかをはさみでぎょきぎょき切り開き、助けてくれるのは、二本足で立ちエプロンをかけた、自分のお母さんのようなやぎです。

圧倒的な力から、自分を救い出してくれた母親に見守られて、こやぎたちは再び明るいところへと飛び出してきます。子どもたちにとって、これ以上に、安心でうれしいことがあるでしょうか。

躍動感にあふれた動物たちだけでなく、やぎたちの家の中や町の様子なども、ぜひじっくりご覧ください。きっと新しい発見がありますよ。

【書籍データ】
書名 『おおかみと七ひきのこやぎ』(世界傑作絵本シリーズ)
著 グリム
絵 フェリクス・ホフマン
訳 せたていじ
出版社 福音館書店
価格 1512円

■5歳頃におすすめのグリム童話

6  愛らしいこぐまの冒険を描いた写真絵本『二ひきのこぐま』

『二ひきのこぐま』

『二ひきのこぐま』


『二ひきのこぐま』は、写真絵本。あまりなじみがないかもしれませんが、モノクロの写真は美しく、動物たちはかわいらしい! けれど、単なる写真集ではなく、とても魅力的な物語です。

寒い冬の間に生まれ、春になるのを待ちかねていた、男の子と女の子のこぐま。ある日、お母さんが、はちみつを取りに行っている間に、「とおくへ いくんじゃないよ」というお母さんの言いつけを忘れ、巣穴からどんどん離れて迷子になってしまいます。

ころんころんと転がるように、タンポポの綿毛のにおいをかいだり、かくれんぼしたりする姿のかわいらしさ。お母さんが見つからなくて途方にくれたり、子牛やコマドリたちに、「おかあさんを みなかった?」と聞いてまわったりするしぐさのいじらしさ。

まるで自分のようなこぐまたちに、子どもたちも、笑ったり、心配したり、心細くなったりと、すぐにこの冒険に夢中になってしまいます。

心配してこぐまたちを探すお母さんと、お母さんに甘えるこぐまの姿を見ていると、親子でぎゅっとしたくなります。気持ちをふんわりとあたためてくれる絵本です。

【書籍データ】
書名 『二ひきのこぐま』
作 イーラ
訳 松岡享子
出版社 こぐま社
価格 1620円
■イーラの写真絵本

7 水の不思議が心に残り続ける『しずくのぼうけん』

『しずくのぼうけん』(こどものとも傑作集)

『しずくのぼうけん』(こどものとも傑作集)


主人公は、村のおばさんのバケツから飛び出した、しずく。ドライクリーニングやさんに行ったり、空に昇ったり、雨粒や氷になったり、水道管から洗濯機に飛び込んだり!

しずくは、姿を変えながら冒険します。でも、どんな姿であっても水は水。びっくりしたり困ったりするしずくを見ながら、子どもたちは、様々な水の形を知り、水の性質への理解を深めます。

文章はとても軽快。何度も読んでいるうちに覚えてしまい、「みずの しずくは きれいずき」(ヘイッ!)「ほこりと いっしょは たまらない」(ヘイッ!)なんて、ラップ調歌う子がいるほどです。

ユーモアのある表情、美しい色遣い、絵にぴったりと合った堀内誠一さんの文字など、見ているだけでも楽しい一冊です。また、ポーランド生まれの『しずくのぼうけん』ですから、女の子やお母さんには、おばさんのファッションや町並みがかわいらしいのも喜ばれます。

この絵本を読んだ後は、雨の日やお風呂の中などふとした瞬間に、きっと冒険中のしずくを思い出すことでしょう。

【書籍データ】
書名 『しずくのぼうけん』(こどものとも傑作集)
さく マリア・テルリコフスカ
やく うちだりさこ
え ボフダン・ブテンコ
出版社 福音館書店
価格 972円

■5歳頃におすすめの知識の絵本

8 子どもも大人も目が離せない『けんかのきもち』

『けんかのきもち』(からだとこころのえほん)

『けんかのきもち』(からだとこころのえほん)


一番の友だちのこうたと大ゲンカをした、たい。「けり いれた。パンチ した。つかんだ。とびかかった」― それなのに負けてしまいます。お母さんにくっついて泣いても、先生に助け舟を出してもらっても、こうたに謝られても、たいのけんかのきもちは終わりません。

圧倒されるような力強い絵が印象的な『けんかのきもち』ですが、ケンカをしてから、気持ちがおさまるまでの、たいの心の揺れが、実にリアルに細やかに描かれています。

「取った!」「ぶたれた!」という小さな頃の分かりやすいケンカが、心も身体も強くぶつけてしまう大ゲンカになるのが、5・6歳の頃です。

思い通りにならないことについて、気持ちをおさめるということの難しさ。子どもたちは、息をつめるようにして、たいを見守ります。ケンカが日常茶飯事の子どもたちにとって、たいのけんかは、とても他人事とは思えないのでしょう。

また、ケンカから目が離せないのは、大人も同じのよう。「夫婦喧嘩でたいみたいになっちゃう」「大人の、子どもとの距離の取り方がいいね」なんて声がよく聞かれます。また、あるお母さんは、濃い眉にがっちりした身体つき、いかにも意志の強そうなたいが、お母さんの膝にすがって泣いている小さな姿に、「大きくなったとつい叱りがちですが、うちの子もきっとこんなふうに頑張っているんだなとはっとしました」と話してくれました。

ラスト、こうと仲直りしたたいの決意には、皆思わずふふっと笑ってしまいます。

【書籍データ】
書名 『けんかのきもち』(からだとこころのえほん)
文 柴田愛子
絵 伊藤秀男
出版社 ポプラ社
価格 1296円

9 何があっても抱きしめてもらえるという幸せ『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』


「お母さん!」「こっち見て!」「聞いて!」、自分の方を向いてほしくて、大きな声で大人を呼ぶ子どもたち。『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』は、そんな子どもたちと同じように、皆にほめてもらいたいばかりに大騒動を引き起こしてしまった機関車のお話です。

ある日、ちゅうちゅうは、重い客車を引かずに自分だけで走っている姿を見てほしいと、猛スピードで逃げ出しました。必死でちゅうちゅうを追いかけるのは、機関士のジムたちです。

物語が進むにつれて、ちゅうちゅうと一体化しまう子どもたち。ぐんぐん上がるスピードに興奮し、はね橋を無事に飛び越せばほっとして、夜遅く暗い森の中で、無事にジムに見つけてもらう頃にはもうぐったりです。

さて、絵本を読んだ後、「でもさ、ちゅうちゅう、また少しくらいは逃げちゃうんじゃない。そしたら今度はジムたちもきっと怒るよね」と言った子がいました。いけないことをしても、絶対に心配して探してくれる、無事を喜んでくれるというのは、きっと子どもたち皆が望むことなのでしょうね。

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』は、『ちいさいおうち』でコールデコット賞を受賞したバージニア・リー・バートンの作品です。画面いっぱいに、黒一色で描かれた絵は、力強くスピード感にあふれ、人や動物はもちろん木やレールにまで表情があるので、隅から隅まで見る楽しみがありますよ。

【書籍データ】
書名 『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』
ぶん・え バージニア・リー・バートン
やく むらおかはなこ
出版社 福音館書店
価格 1296円

 

■バージニア・リー・バートンの絵本(ほか多数)

10 広い世界を知ることが、心をのびやかにしてくれる『せかいのひとびと』

『せかいのひとびと』

『せかいのひとびと』


世界各国の人々がびっしりと描かれた表紙をめくると、地球がぽっかりと浮かび、続いて、アダムとイブのような2人が広大な自然の中で佇む姿が描かれています。さあ、地球の、世界の人々と出会う旅の始まりです。

「いま 地球には どのぐらい 人が いるか 知っている?」そんな問いかけから始まる『せかいのひとびと』。

国や地域によって異なる、体型・肌や目や髪の色・生活・宗教・言語などが、明るくて美しい色遣いでびっしりと描かれた絵と、カラッとして率直な文章で紹介されています。

絵本を貫くのは「人は違うからこそ素晴らしい」というメッセージ。たとえば、皆が全く同じだったら? という仮定と共に示される、単調な世界には子どもならずともゾクッとするほど。

同じように小さく生まれ、同じ地球で暮らし、同じ空気を吸い、同じ太陽に照らされて、最後には必ず死ぬ人間という存在。人間は、世界中にいて、皆それぞれに違った暮らしをし、一人ひとりが自分の人生を生きている― 子どもたちが、その意味を本当の意味で理解するのは、5歳よりも、もう少し大きくなってからかもしれません。

けれど、「わあ、すごいね」「おもしろいね」と飽きずに絵を見つめる子どもたちは、友だちには強い子も優しい子もいること、家庭の事情は皆違うこと、仲良くしたり意地悪したりすることがあることを、すでに経験し、知っています。

絵本は、誰もが思い思いに暮らしているにぎやかな街のイラストとともに、幕を下ろします。「わたしたち みんながみんな それぞれ こんなに ちがっているって すてきでしょ?」そんなシンプルな事実が、子どもたちに大きな希望と可能性を与えてくれるのではないでしょうか。

【書籍データ】
書名 『せかいのひとびと』
えとぶん ピーター・スピアー
やく 松川真弓
出版社 評論社
価格 1620円

 





※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。