シニア(70歳以上)の高額療養費制度、2017年8月から一部改正
私たちは、健康保険などに加入していると、病気やケガで治療を受けた場合、窓口で自己負担分(3割など)を支払えば良いしくみになっていますが、この他に、高額療養費制度も利用することができます。高額療養費制度とは、1カ月あたりの医療費の自己負担額が高額になった場合、手続きをすることで所定の自己負担限度額を超えた医療費分が返金される制度です。年齢や所得に応じて、月当たりの自己負担限度額が決められていますが、国が負担する分(社会保障費)が膨大に膨れ上がっているため、徐々に自己負担限度額が引き上げられる傾向にあります。2015(平成27)年1月には、現役世代を中心とする(70歳未満の)方の所得区分と自己負担限度額が改定されました。(●高額療養費見直しで、ウチの医療費、増えるの?)
その後は、シニア世代の方にも少しずつ負担をしてもらうことになり、2017年8月は、70歳以上の方の自己負担限度額が引き上げられました。改定後の自己負担限度額は、次の表をご覧ください。
現役並みに所得がある方の「外来(個人)分の自己負担限度額」は、44,400円から57,600円に引き上げられました。一般の方は、「外来(個人)分の自己負担限度額」が、12,000円から14,000円に引き上げられましたが、「年間14万4,000円まで」という上限額が新たに設けられました。また、一般の方の「外来+入院(世帯ごと)」の自己負担限度額は、44,400円から57,600円へ引き上げられましたが、年3回以上上限に達した方(多数回)は、4回目以降の上限が44,400円とされています。住民税が非課税など、所得が低い方は、引き上げはありません。シニア世代の中でも、ある程度収入がある方には、少しずつ自己負担分を増やしてもらい、病気治療等で医療費がかかる方や収入が低い方には配慮をしている、という感じです。
高額介護サービス費も、2017年8月から一部引き上げ!
一方、介護サービスに関する自己負担額も徐々に引き上げられています。すでに2015年8月から、「一定以上所得がある人」は、介護サービスを利用する際の自己負担割合が20%に引き上げられたり、高額介護サービス費(*)の自己負担限度額が引き上げられたりしました。2017年8月からは、高額介護サービス費が一部改正され、以下の表のようになりました。(*)高額介護サービス費:1ヶ月間に支払う介護サービスの自己負担額が高額になった場合、申請をすると所得区分に応じて還付を受けることができる制度。
世帯のどなたかが市区町村民税を課税されていれば、現役並み所得がある方と同様、自己負担額の上限が月44,400円に引き上げられました。とはいえ、いきなり自己負担額を引き上げられたら大変な方もいらっしゃるので、『同じ世帯の全ての65歳以上の方(サービスを利用していない方を含む)の利用者負担割合が1割の世帯は、平成32年7月まで年間上限額446,400円(37,200円×12)を適用する』という条件が設けられました。利用者負担割合が、1割になるかどうかの基準は、次の図表をご覧ください。
コラムを読んでくださっている方々の中には、ご両親と同居をして家計を負担している方、同居はしていないけれども、定期的に仕送りをしている、という方もいらっしゃると思います。普段はあまりお金の話をする機会がないかもしれませんが、ご両親の健康が心配という方は、医療費や介護費の自己負担割合がどれくらいなのか、この機会にご両親がお住まいの自治体等に確認してみてはいかがでしょうか。
医療・介護費の自己負担増、どう備える?
一般的に、75歳を過ぎたころから要介護になる割合が高くなる、と言われています。今懸念されているのは、団塊世代の方が75歳を過ぎる2025年頃、医療費や介護費用が大幅に増える、と予測されていることです。今のうちから、少しずつシニア世代の方にも負担をしていただくようなしくみにする必要があるそうで、今後もさらなる自己負担額引き上げが予定されているとのこと。万が一、ご両親の医療・介護費用が増えた場合に、貯蓄や家計から賄えるかどうか、ライフプラン作成や家計のチェックについて、ご両親にも情報提供して差し上げてください。シニア世代に限らず、私たち現役世代にも共通して言えることですが、医療・介護制度に関する最新情報はチェックしつつ、健康維持や早期発見・早期治療のための予算は削らないでいただきたいと思います。
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