考え方が極端になってしまうのは「うつ病」が原因?

疲れ果てる女性

窮屈な考えの迷路にはまり込むのが「うつ病」の特徴

ほぼ一日中憂鬱な気分が続き、何をしても楽しいと思えない。好きだったことにも取り組めない、眠れない、思考力が低下する――。うつ病は、脳のセロトニン神経の機能の障害によって、このような変調が現れる病気です。

うつ病患者さんの話を傾聴していますと、ある考え方のパターンがあることが分かります。その基本となるのが「極端な認知」(考え方)です。「私は誰からも嫌われている」という“過度の一般化”や、「今度仕事でミスをしたらオシマイだ」といった“全か無か思考”、「社会人として〇〇すべき。母親として〇〇すべき」といった“すべき思考”などは、うつ病の方に見られやすい極端な認知の傾向です。

その他の認知の歪みについては、「「ストレス思考10パターン」をチェック!」という記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。

また、「このままでは貧困老人だ」「わが家の家計は破たんする」といった貧困妄想、「重篤な病気にかかっているに違いない」といった心気妄想、「わが家の不運はすべて私の責任だ」「私は前世からの因縁で罪を背負った人間だ」といった罪業妄想にかられてしまうのが、「うつ病の3大妄想」です(3大妄想については「心配事や不安が強く眠れない…うつ病の3大妄想とは」で詳しく解説しております)。

このほかにも、うつ病の人の悩み方には極端な特徴があります。それは、もうすでに通過してしまった「過去」と、まだ起きてもいない「未来」に対して過剰に悩むことです。

「戻れない過去」への過剰な悩みの具体例

過去に対しての悩み方は、たとえば次のような感じです。戻ることのできない過去に対して後悔し、悩み続けます。
  • 「あのとき、どうして○○しなかったんだろう」
  • 「なぜこの生き方を選択してしまったんだろう」
  • 「今まで信じてきたことは、すべて間違いだった」
  • 「考えてみれば、私の人生にはいつもロクなことはなかった」 など
また、次のように「過去の自分」と「今の自分」を比較して悩むのも、うつ病の人の悩み方の特徴です。
  • 「前は色々なことができたのに、なぜ今はできないんだろう」
  • 「あのときは輝いていたのに、今は何もかもまったくダメだ」 など
このように、もう戻ることのできない過去を後悔したり、「過去の自分」と「現在の自分」を比べて過剰に悲観的になり、無価値観に陥っていくのが、うつ病の人の過去の悩み方の特徴です。

「まだわからない未来」への過剰な悩みの具体例

一方、うつ病の人は未来に対しても、極端に悩み続けます。「将来何もいいことが起こらない」と決めつけてしまうこともあります。たとえば次のような感じです。
  • 「これから先、自分には何も良いことなど起こらない」
  • 「夢? 目標? そんなものを考えたところで、何にもならない」
  • 「未来に期待を抱くだけムダだ。期待は必ず裏切られる」
  • 「人生には何の意味もない。情熱を傾けて取り組む意味は何もない」
  • 「私が何かをしても必ず失敗する。私はその程度の存在なのだ」 など
このように、未来には何も良いことが待っておらず、「期待して何か行動を起こしたところで、必ず悪い結果になる」と決めつけてしまうのです。こうして、自分自身の悪運を呪い、成功者と自分を比べて無価値観に陥るのが、うつ病の人の未来の悩み方の特徴です。

セロトニン神経の異常が原因で、極端な認知が生み出される

悩む男性

セロトニン神経が正常に働いていないと、他の方向から考え直すことが難しくなる

こうした悩み方について、「なぜそんな風に考えるの?」「もっと楽に考えてみてはどうかな?」と提案したところで、頑として受け付けず、上のような考え方から離れられなくなるのがうつ病の特性です。

そもそもうつ病は、脳のセロトニン神経の機能の障害によって生じる病気です。セロトニン神経は精神状態を安定させ、安心感や冷静さを保つ作用を持つ神経です。この神経が正常に働いていれば、過去への後悔が生じたとしても、「いや、今更そんなことを考えたところで何の意味もない」「起こったことに悩むより、未来に向かって歩いていこう」というように、現実に合わせて合理的な判断をすることができます。

しかし、セロトニン神経が正常に働いていないと、不安や憂鬱感などのネガティブな気分にどっぷりとはまってしまい、過去を鬱々と後悔し続けたり、未来にはまったく希望が持てないような心境になってしまうのです。

薬と休養で脳の機能を正常化させることが大切

うつ病の症状による後悔や不安を解消するには、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの薬を服用して、セロトニン神経が正常に働くようにすることが大切です。そして、余計なことを考えすぎないようにゆっくりと脳を休ませることが必要です。

精神科の医師はうつ病の患者さんに対して、「今は、“やるべきこと”から自分を解き放ってあげましょう。とにかくゆっくり休んでください」と言います。思考力や記憶力、決断力などが低下した状態によって物事を考えて取り組んでも、現実に即した合理的な判断ができず、物事が正常に進みにくいからです。

しかし、それはセロトニン神経の機能が一時的に不全になっているからであり、薬を服用して脳神経の機能を整え、休養によって脳神経を休ませれば、次第に回復していきます。

過去に対して過剰に後悔し、未来に対して過剰に不安になる思考から抜けられないときには、うつ病を疑ってみることも大切です。そして、まずは精神科を受診することをお勧めします。自分自身に対しては、「脳が疲れているから、そう感じてしまうんだね」と心の中でやさしく声をかけ、後悔や不安が浮かぶたびに自分の疲れをいたわり、それ以上考え続けないように脳を休ませてあげることをお勧めします。
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