住宅ローンの借入/住宅ローンの基礎を学ぼう

ボーナスをあてにしない住宅ローンの組み方

ボーナスの使い道の一つに、住宅ローンの返済があります。ひところに比べ、住宅ローンを毎月返済のみで組む人が増えてきましたが、ボーナス時返済を組み合わせるケースは依然として多いようです。ボーナスの大半を住宅ローンの返済にあてるリスクを考えてみましょう。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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ボーナスの使い道の一つに、住宅ローンの返済があります。ひところに比べ、住宅ローンを毎月返済のみで組む人が増えてきましたが、ボーナス時返済を組み合わせるケースは依然として多いようです。ボーナスの大半を住宅ローンの返済にあてるリスクを考えてみましょう。

<目次>

毎月の住宅ローン返済額を抑えるためのボーナス利用はキケン

マイナス金利政策の影響で住宅ローン金利は、過去最低水準が続いています。そのため、当初の予算を超えた資金計画を組みがちですが、住宅ローンの資金計画は、いくら借りられるかではなく、いくらなら返せるかで考えるのが基本です。最近は金利上昇の傾向もありますので、最低金利ではなく、少し高めの金利で試算した上で、無理がないか考えるようにしましょう。
住宅ローンとボーナス

住宅ローンとボーナス

同じ融資額を借りても、融資額の何割かをボーナス時返済にあてると、毎月返済のみの場合に比べて、毎月の返済額を抑えることができます。そのため、このぐらいだったら毎月返せるかな?と本来の実力以上のローンを組んでしまうケースは少なくありません。

しかし、ボーナスは企業業績によって左右されるもので、過剰にボーナスに頼った資金計画は、滞納リスクを高めることになります。いくらなら返せるかは毎月返済のみで考え、あくまでもボーナス時返済は無理のない範囲で収めるべきです。

ボーナス時返済があるほうが住宅ローンの総返済額が多くなる?

たとえば、3000万円を金利2.0%、35年返済で借りる場合をみてみましょう(いずれも元利均等返済)。

●毎月返済のみでボーナス時返済はゼロ
毎月返済額……9万9378円
年間返済額……119万2536円
総返済額……約4174万円

●融資額の1割(300万円)をボーナス時返済に回す
毎月返済額……8万9440円
ボーナス時返済額……5万9798円/回
年間返済額……119万2876円
総返済額……約4175万円

●融資額の2割(600万円)をボーナス時返済に回す
毎月返済額……7万9503円
ボーナス時返済額……11万9596円/回
年間返済額……119万3228円
総返済額……約4176万円

ボーナス時返済に回す割合が増えれば、毎月返済額は少なくなりますが、総返済額は若干増えます。額自体はそれほどの差がないので、ボーナス時返済を活用すれば毎月の家計がラクになると思ってしまう人も少なくありません。

しかし毎月の家計がラクになっても、ボーナス時返済で無理をしてしまったら、元も子もありません。

ここで大事なのは、何割ボーナス時返済にするかではなく、無理のない毎月返済額はいくらなのか、ボーナスの変動があっても、いくらならボーナスで無理なく返せるか、ということです。

もしも、「毎月10万円程度なら無理なく返せる」ということであれば、あえてボーナス時返済を組み込まなくてもいいですし、毎月8万円程度が限界なら、ボーナス併用で無理するより、購入する物件価格を下げ、借入金額を抑えるという決断が重要になってきます。

住宅ローン返済の延滞だけは絶対避けなければならない

無理のない範囲でボーナス時返済を併用するということであれば、現在、住宅取得のためにボーナスからいくら貯蓄をしているのか、ということが一つの目安になるでしょう。ただ頭金づくりのためと期間を区切って貯蓄をするのと、ボーナス時に必ず10万円、20万円とまとまった支出がローン返済が終わるまで続くのとでは、状況が違ってきます。

長い返済の間には、さまざまな予想外の出来事もあるでしょう。子どもの教育費が思いのほかかかることになった、年俸制の企業に転職した、病気やケガで収入が減ったなど、予定外のことはあるものです。

そうしたときに、ボーナス時返済が重荷になることだけは避けたいものです。住宅ローンは途中で返済プランを変更することも可能ですが、状況が変化したときに借り入れの金融機関に相談することをせず、支払い延滞になる人も少なくありません。

こうしたことを防ぐためにも、当初の資金計画では、過剰にボーナスに頼った返済計画は避けるべきでしょう。

ボーナスを繰り上げ返済に使ったほうがお得

では、ボーナスをどう活用するのがいいでしょう。

現在の低金利の状況では、あえて繰り上げ返済をしない、住宅ローン控除の適用期間が終わるまでは繰り上げ返済をしないという人もいます。一般的には、余剰資金があれば、返済開始直後の早い段階から繰り上げ返済をするのが、最も繰り上げ効果が高くなります。

つまり、返済開始直後からあまり経たないうちに繰り上げ返済をすれば、支払わなくてすむ利息は多くなり、返済期間も大幅に短縮できるということです。

30年、35年と長期の返済であれば、定年退職後も住宅ローンの返済が続く可能性があります。したがって、繰り上げ返済で返済期間を短縮させ、支払い利息を圧縮させるのは、先行きが不透明な時代だからこそ、効果が高いといえるでしょう。

たとえば、先の例で3000万円、金利2.0%、35年返済を毎月返済だけで借りた場合、毎月返済額は9万9378円。総返済額は約4174万円でした。

ボーナス時返済を併用しない代わりに、1年後にボーナスから10万円繰り上げ返済すると、総返済額は約4165万円と、約9万円軽減できます。返済期間は1カ月短縮できます。

これを毎回繰り返せば、繰り上げ返済による総返済額の減少、返済期間の短縮は、かなり効果がでるのです。

もちろん繰り上げ返済は、毎回しなくてもいいものです。今年は子どもの教育費がかかる、今年は家族で海外旅行に行くことを優先する、など、臨機応変にボーナスの使い道を考えることができるのです。最近では、繰り上げ返済が少額でも可能な金融機関も増えていますから、100万円などまとまった金額で返済する必要もないのです。

ボーナスを家計の調整弁として使うことで、日々の家計は安定します。住宅ローンも同じで、毎月の返済額だけを家計に組み込んでおけば管理もしやすく、ボーナスはボーナスで、別の使い道を考えることもできるでしょう。ボーナス時返済ありきではなく、優先順位の高い教育費などの確保も念頭に置いた資金計画を心がけるようにしましょう。

これから住宅購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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