住宅ローンの頭金を貯めるメリット、もうない?
住宅購入時の頭金とは、住宅を購入する際、手付金や申込金などの名目で最初に支払う金銭のことで、物件価格の一部に充当されるものです。実際、頭金を支払うことで、借入額が減少するため、住宅ローンの返済の負担が軽減されます。
これは理にかなったアプローチであり、金利上昇ではない局面では推奨されるものです。
しかし、金利上昇時には、物件価格の20%程度でなくとも、頭金を貯めるといったアドバイス自体が逆効果であること、つまり、頭金を貯めないほうがよいことがほとんどであることを確認していきましょう。
住宅ローンの頭金を貯めるメリットはもうない?
低金利時代に終止符か フラット35などの固定金利が急上昇
長期金利の上昇を受けて、住宅ローンの固定金利が急速に上昇しています。例えば、住宅金融支援機構【フラット35】(融資率9割以下)では、2023年8月に1.72%だった金利が、11月には1.96%となり、3カ月連続で0.08%ずつ上昇しています。
同様に、都市銀行をはじめとした各金融機関の固定金利も上昇し続けているといった状況をご存じの方も多いのではないでしょうか。
「全額借入vs頭金を貯める」返済額をシミュレーション
ここでは、住宅購入時に3000万円が必要であると仮定して、全額借り入れる場合と、これから頭金を貯めて一部に充てる場合とで比較していきます。▽1.96%で3000万円を借りた場合
- 10年返済であれば、3306万331円の総返済額となります。
- 20年返済であれば、3628万7226円の総返済額となります。
- 30年返済であれば、3970万3057円の総返済額となります。
次に、毎月5万円ずつ1年間で頭金60万円を追加して貯めている間に、金利が1.96%から0.2%上昇した状況を想定します。
▽2.16%で2940万円を借りることになった場合
- 10年返済であれば、3271万5708円の総返済額となり、追加の頭金60万円を加えると、3331万5708円の負担。
- 20年返済であれば、3623万2164円の総返済額となり、追加の頭金60万円を加えると、3683万2164円の負担。
- 30年返済であれば、3997万2604円の総返済額となり、追加の頭金60万円を加えると、4057万2604円の負担。
▽1.96%で3000万円を借りた場合との比較
- 10年返済……総返済額は約35万円減りますが、約25万円の負担増。
- 20年返済……総返済額は約5万円減りますが、約55万円の負担増。
- 30年返済……総返済額も約27万円増えるため、約87万円の負担増。
シミュレーションでみたように、返済期間が長くなればなるほど、頭金をこれから貯めるくらいなら、早く借りたほうがよいといった結果になります。
借入額が高額になったり、金利の上昇幅が大きかったりするほど、この傾向は顕著になります。
結論としては、数十万円の頭金の違いであれば、貯めないほうがよいといえます。
頭金1000万円を追加で用意できたケースをシミュレーション
もっとも、相続や贈与などで百万円、千万円単位の頭金の違いがあるのであれば、金利上昇時であっても、頭金を多くして、借入額を減らすといった戦略が有効となります。それでは、頭金1000万円を追加で用意することができたものの、金利が1.96%から0.2%上昇してしまった状況を想定してみましょう。上のケースと同様に住宅購入時に3000万円が必要であると仮定します。
▽2.16%で2000万円の借り入れで済んだ場合
- 10年返済であれば、2225万5564円の総返済額となり、追加の頭金1000万円を加えると、3225万5564円の負担。
- 20年返済であれば、2464万7654円の総返済額となり、追加の頭金1000万円を加えると、3464万7654円の負担。
- 30年返済であれば、2719万2167円の総返済額となり、追加の頭金1000万円を加えると、3719万2167円の負担。
▽1.96%で3000万円を借りた場合との比較
- 10年返済……約81万円の負担減。
- 20年返済……約164万円の負担減。
- 30年返済……約251万円の負担減。
ちなみに、金融電卓がなくても、下記のサイトなどで、金利や借入額、返済期間をご自分で想定しながらシミュレーションすることができます。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644
まとめ
金利上昇時には、苦労して頭金を貯めるといったことが逆効果であることをシミュレーションを通じて、実感していただけたのではないでしょうか。苦労して頭金を貯めたことで、逆に、負担が大きくなってしまったといった事態に陥らないよう、金利上昇時の住宅購入のポイントを知っておいていただければと思います。