住宅ローンの借り換え・返済/住宅ローンの繰り上げ返済まるわかり

繰り上げ返済、マメに返す?まとめて返す?

住宅ローンを借りるときに、30年、35年と長期の返済期間で組むと毎月の返済額は少なくてすみます。その分、繰り上げ返済をして、できるだけ早くローンを完済したいという人が多くなっています。繰り上げ返済の方法で、どんな違いがあるのでしょうか? 毎年返済する、まとまった資金で返済する、いろいろな方法で比べてみましょう。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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繰り上げ返済は、住宅ローンの返済開始後がもっとも効果が高い

そもそも繰り上げ返済とはどういうことでしょうか。

住宅ローンを借りる際、何年間で返済を終わらせるかを決めますが、同じ金額を同じ金利で借りたとしても、返済期間が短ければ、毎月の返済額の負担は重くなります。そのため、できるだけ長期で借りて毎月の返済額を抑えるというプランが主流になっています。
 
効果的な繰り上げ返済の方法

効果的な繰り上げ返済の方法



たとえば、借入金額3000万円、金利1.31%(※)とした場合、毎月返済額と総返済額は次のようになります(いずれも元利均等、全期間固定、毎月返済のみ)。

25年返済 毎月返済額11万7321円 総返済額3520万円
30年返済 毎月返済額10万823円   総返済額3630万円
35年返済 毎月返済額8万9088円   総返済額3742万円

(※)フラット35 返済期間21年以上35年以下、融資額9割以下の場合の2020年12月金利1.31%

しかし、長期で返済すれば、その分、支払う利息も多くなり、総返済額では短期の返済よりも多くなります。そのため少しでも利息を減らしたいということで、まとまった資金ができたときに、繰り上げ返済を行い、借入元本を減らすのです。こうすることで、その元本分の利息は支払わなくて済むうえ、返済期間も当初より短縮することができるのです。最近は、定年退職前までにローンの返済を終わらせたいと考える人も増えています。

では、繰り上げ返済による、利息の軽減と返済期間の短縮は、どの程度期待できるのでしょうか。

借入金額3000万円、金利1.31%、返済期間35年、1年後に100万円を繰り上げ返済すると、

総返済額3742万円→3687万円
支払利息742万円→687万円(55万円の軽減)
返済期間35年→33年7カ月(1年5カ月短縮)


となります。繰り上げ返済の時期が早ければ早いほど、資金が多ければ多いほど、利息の軽減、期間短縮効果は高くなります。

しかし、実際には、毎年100万円繰り上げ返済できる人はそう多くはないでしょう。1年に1回50万円、3年に1回100万円などまとまった資金が貯まったら繰り上げ返済を行う人が多いのではないでしょうか。あるいは、1万円でも繰り上げ返済したいなら、対応可能な銀行もありますので、毎月こまめに繰り上げ返済することもできるようになっています。

では、どんな返し方をするのが、トクなのか、具体的にみていくことにしましょう。
 

利息の軽減効果は「マメに返す」ほうが、オトク?

借入金額3000万円、金利1.31%、35年返済の場合で、比較してみます。1年に50万円、3年続けて繰り上げ返済する「マメ派」と、3年後に150万円を繰り上げ返済する「おまとめ派」。どちらが有利になるでしょう。

【マメ派】
繰り上げ返済総額 150万円(1回50万円×3年)
総返済額 3742万円→3664万円
支払利息 742万円→664万円(78万円の削減)
返済期間 35年→32年11カ月(2年1カ月の短縮)

【おまとめ派】
繰り上げ返済総額 150万円(返済開始3年後にまとめて1回)
総返済額 3742万円→3667万円
支払利息 742万円→667万円(75万円の削減)
返済期間 35年→32年11カ月(2年1カ月の短縮)


マメ派のほうが、支払利息では3万円ほどオトクですが、返済期間短縮効果は同じ2年1カ月という結果になりました。これは、金利が1.31%という前提のためで、金利が高ければマメ派の繰り上げ返済効果は、より高くなります。また完済するまで定期的に繰り上げ返済をしていけば、やはり利息の軽減効果は高くなります。

しかし、現在の住宅ローンは、かなりの低金利。マメに繰り上げ返済しなくては!と焦らなくても、現時点での金利であれば、まとまった資金ができたときに繰り上げ返済をしても、それほど大きな差が出ないでしょう。
 

金利差が1%以上あるなら、繰り上げよりも借り換えを

仮に1.31%で繰り上げ返済の効果を計算しましたが、2013年以前の「フラット35」の金利は2.0~3.0%程度。現在と1%程度の差がありました。もしも現在の金利水準より1%程度高い金利で住宅ローンを借り、繰り上げ返済を考えているなら、繰り上げ返済よりも借り換えをするべきでしょう。

金利2.5%、借入金額3000万円、35年返済の場合、
毎月返済額 10万7000円
総返済額  4504万円


となりますが、5年後の残債2715万円を、金利1.5%、30年返済で組み直すと、
毎月返済額       9万3700円
借り換え後の総返済額  3374万円

当初5年分の返済額    642万円
総返済額                4016万円


となり、当初の総返済額からは、488万円も浮かせることができるのです。
さらに、借り換えのときに、25年返済で組み直せば、
毎月返済額       10万8600円
借り換え後の総返済額  3258万円
当初5年分の返済額    642万円

総返済額          3900万円

毎月の返済額は、現在より少し増えますが、総返済額では604万円も浮かせることができるのです。

ローンの借り換えでは、登記費用などの諸費用がかかりますが、それを持ち出したとしても、利息軽減効果は非常に高いといえます。
 

繰り上げ返済の手数料には注意が必要

繰り上げ返済をする際に注意したいことが3点あります。

まずは、手数料。繰り上げ返済するときには、基本的に手数料がかかります。最近はインターネットでの申し込みの場合は無料とする金融機関が増えています。例えば、三菱UFJ銀行ではネット申し込みなら、どの金利タイプでも無料。電話5500円、窓口1万6500円(いずれも税込み)となっています。おおむね、ネット申し込みは無料、窓口を利用すると手数料がかかるケースが多いので、何度も繰り上げ返済をする場合は、事前に手数料をチェックするようにしましょう。

次に、繰り上げ返済をして、住宅ローン控除が使えなくなるケースです。住宅ローン控除の適用条件に、返済期間が10年以上というものがあります。繰り上げ返済を頑張って、残りの返済期間が10年をきると、その時点で住宅ローン減税を受けられなくなります。逆に、繰り上げ返済をすることでローン残高が減り、住宅ローン減税で戻ってくるお金が減るから、住宅ローン減税の適用期間が終了する10年後に繰り上げ返済したほうがトクという考え方もあります(消費税10%対応のため、2020年末までに入居の場合は、適用期間が13年に減税延長される時限措置があります。さらに、新型コロナウイルスの影響で期限までに入居できない場合、「2021年12月末までの入居」までを特例対象としていましたが、2021年度税制改正で2022年12月末までの入居と、再延長されることが決定)。

しかし、いずれの場合でも、本人の所得税額、住宅ローンの借入額、金利などの条件によって、結果は違ってきます。一概にどうするのがトクとはいえません。金融機関のシミュレーションなどを使って、自分の場合はどちらがトクなのかを検討する必要があるでしょう。

最後にもう1点。繰り上げ返済は、あくまでも余裕資金で行うことです。子どもの教育費の目途は立っている、生活費の予備費は準備できているというのなら、余裕資金を繰り上げ返済に回すのもいいのですが、あてにしていたボーナスが減ってしまった、収入が思ったほど上がらなかった、そんなケースが想定される場合は、無理をして繰り上げ返済せず、手元資金として運用しておくほうが賢明かもしれません。

できるだけ早く返してしまいたい住宅ローンですが、繰り上げ返済で家計が回らなくなってしまっては元も子もありません。さまざまな観点からシミュレーションして、慎重に行うように心がけてください。

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