実技試験の対策ポイント

平成28年から年2回になった保育士試験。資格取得の目標に届きやすくなりましたね! 受験申請者数も大幅に増加して、いよいよ様々な分野から保育士に転職する社会人が増えていくと思われます。保育士が多様なバックグラウンドを持つことは子どもたちにとっても素晴らしい効果が期待できます。でもその分、「保育士の専門性の維持向上」について、その必要性が今まで以上に問われることになりますね。

この実技試験課題も、「保育の表現技術とは」という視点で、ぜひ正しく理解したうえで資格を取得していただきたいと思います。ねらいを的確に理解していれば、保育実技初心者でも保育の表現技術の基礎を身に付けることができます。そこで今回は、実技試験(音楽・言語・造形)の課題について、おさえるべきポイントをみていきましょう。それぞれの課題が収録されたCD・絵本やテキスト、造形合格者の作品もご紹介します。

音楽表現に関する技術

平成29年の課題曲は「こいのぼり」「一年生になったら」 です。

  • ノリが大切!
今年の2曲は、両方ともいわゆる「ノリ」に特徴があります。「こいのぼり」は、3拍子であることにお気づきでしょうか? こいのぼりが大空を悠々とおよぐ様子を3拍子で表現しているのです。ゆったりと横に揺れるノリを感じて歌う練習をしましょう。「一年生になったら」は、4拍子ですが、行進曲のような勇ましい感じでなく、これも左右に揺れるノリでほのぼのとした雰囲気を感じて歌いましょう。原曲を聴いて、どんな曲なのか、どんな演奏をしたいのか、イメージを持つことが大切です。

  • こどもの健やかな成長を願う気持ちと、希望にあふれた詩の世界
「こいのぼり」は、こどもの健やかな成長と平穏な毎日を願う、そんなイメージがわいてきますね。また、「一年生になったら」は、天才詩人まど・みちおさんが、子どもの視点で一年生になることへのワクワクする気持ちを表した作品です。

ほのぼのとしていて、夢と希望でいっぱいの年長さんの気持ちがよく表れていますよね。今回の課題曲は、このように純度100%のポジティブ・ソングなのです!ということは、試験というたいへん緊張する場面であるにもかかわらず、明るく・朗らかに表現をすることが求められるわけです。初心者にとって難しい点は、実際には不安や緊張といったネガティブな心理状態でありながら、それとは正反対のポジティブな表現をしなくてはいけない、という点だと思います。

歌うときは、こうしたイメージが伝わるような表情や歌唱の雰囲気などについて考慮しているかどうか、そういう点も表現力としての評価ポイントになります。この試験で求められる演奏とは、いまの自分の気持ちを表すことではなく、課題となっている音楽作品を演じることなのです。このポイントをしっかりと理解して、曲想に合った表情や表現を考え、準備していきましょう。

  • 原曲を聴くことが大切
どちらの曲も、まずは原曲をきちんと聴いて、もともとどんな作品なのかを理解することは大変重要です。ピアノ弾き歌いをするときに原曲のサウンドをイメージしながら演奏しているか、それとも原曲を聴いたことがなくただ単に楽譜に記された音符をなぞっているだけか、ということは、表現力に大きく影響してきますし、もちろんこれが評価の善し悪しに直結します。

ぜひ原曲を聴いて、皆さま自身が目指す演奏のイメージをしっかりと作ってください。また曲に対する理解を深め、愛着を持って演奏できるようになると、さらに表現力アップにつながると思います。がんばってくださいね!

課題曲が2曲とも収録されたCDをご紹介します。

言語表現に関する技術

  • 課題の難易度について
4つの課題からひとつを選ぶことになっていますが、おはなしにも、難易度があります。難易度を判断する際の参考として、登場人物(キャラクター)の数があげられます。この試験のように絵や道具を使わずに素話で表現する場合、登場人物が多ければ、当然たくさんの声を使い分けて表現することになり、難易度が上がります。数が少なければ、まずは声の使い分けという点においては易しいということになります。

あとは、物語の展開を絵や道具をつかわずに表現することが難しいおはなし、表現しやすいおはなし、というのもあると思います。まずは全てのおはなしを実際に声を出して表現してみるとよくわかると思います。

  • 課題選びのポイント
課題を選ぶにあたっては難易度だけでなく、まずは原作を読んで、そもそも自分がそのおはなしを楽しいと感じるかどうかも大切にしましょう。聞いている人におはなしの世界を生き生きと表現するためには、まずは語り手である皆さまご自身が楽しいと感じているかどうかが大切だと思いませんか? おはなしの面白さ・よさがわからないのに、ただ単に「多くの人が合格している作品はどれか」というような基準だけで選んでしまうと、豊かな表現力を発揮することが難しくなる場合もあります(そのような題材がたまたま自分の好みに合っていればラッキーなのですが)。

あとは、人前でお話ししたり、演じる(表現する)ことに対する抵抗感や好き嫌いは人によってまったく異なりますので、ご自身の特徴を生かして選ぶようにするとよいと思います。たとえば、人前で演じることに慣れていない、不安がある、すごく嫌だ! というような人は、なるべく登場人物の少ないおはなしを選ぶと取り組みやすいと思います。

課題作品の絵本は「平成27年保育士試験 言語表現課題絵本―実技(16)」でご紹介しています。また、保育士試験の出題内容・条件に合わせた台本の作成例が載っているテキストや実演を収録した動画教材もあります。

造形表現に関する技術

造形表現では、高度なデッサンの技術を追求するよりも、下記ようなポイントをおさえているかどうかが大切です。
  • テーマを絵画で表現する力(何を表しているのか、言葉で説明しなくても見る人に伝わること)
  • 造形のバランスがよいこと(ものの形・大きさ・配置・構図)
  • 人物の表情が豊かに表現されていること
  • 人体各部のサイズのバランスや、関節等が自然で動きのある表現になっていること
  • 健康的で明るく豊かな色彩感覚
また、出題テーマは保育の場面に関するものなので、保育園の1日の生活を詳細に知っている必要があります。1日の流れや、保育園生活の中でこどもたちが体験する出来事、年間行事・月間行事などを具体的に書き出し、それらからテーマを決めて描く練習をするとよいでしょう。

過去に高得点で合格した方の作品を保育士試験 実技(3) 造形―参考作品の紹介で紹介していますので、ぜひ参考にして、具体的にイメージしてみてください。

今年の実技試験のポイントが理解できたでしょうか?

実技試験の合格率は近年、9割程度にまで上がってきています。9割という数値を聞いて、どのように感じるでしょうか。「ほとんどの人が受かる」という印象を受けますか?

でも、具体的な数字で考えてみましょう。実技試験の合格者は毎年1万人前後。仮に合格率を90%、受験者が10,000人として考えた場合、実に1,000人もの人が不合格になるということなのです。このように考えると、決して「誰でも簡単に合格!」というわけにはいかないのがおわかりいただけると思います。

合否を分けるのは「試験のねらいを正しく理解しているか」「ねらいに沿って適切に準備したか」ということに尽きると思います。実技試験は筆記試験とは異なり、ただ間違えずにできたというだけでは合格が難しい科目なのです。「保育実技に求められる技術とは何か」ということを解説し、試験対策について必要な情報を詳しく解説したテキストもあります。このような教材も活用して、正しい方向で確実な準備をして、夢の保育士資格を手に入れましょう!

保育士試験・実技試験についての参考記事

平成27年保育士試験 言語表現課題絵本―実技(16)
保育士試験 実技(9) 造形―豊かな表現のコツ
保育士試験 実技(8) 音楽―試験本番の流れ
保育士試験 実技(6) 造形―画材の準備
保育士試験 実技(5) 音楽―伴奏の正しい選び方
保育士試験 実技(3) 造形―参考作品の紹介
保育士試験 実技(2) 音楽―教室と楽器えらび
保育士試験 実技(1) 試験のねらいと合格率
保育士試験の通信講座やテキスト、ウェブサイトの紹介
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