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保育士試験の実技の狙いと合格率…合格に必要な傾向と対策とは

保育士試験の実技は、独学の受験者が最も情報を必要としている科目だと思います。「実技試験って、いったい何を見られる試験なの?」という皆さんの不安を、保育試験の実技の合格率や音楽・造形・言語表現の出題ポイントを解説することで解消していきたいと思います。

ながみね あき

執筆者:ながみね あき

保育士試験ガイド

保育士試験の実技のねらいと合格率

保育士試験の実技のねらいと合格率


保育士試験の実技は、独学の受験者が最も情報を必要としている科目だと思います。ネットで検索しても、受験者の体験談や噂話がほとんどで、確実に信頼できる情報になかなかたどり着けないのではないでしょうか?そんな不安を解消する助けになればと思い、今回は実技試験のねらいや合格率について紹介していきます。

【保育士試験・目次】  

保育士試験の実技のねらいと求められる技術レベル

実技試験は、
  • 音楽表現に関する技術
  • 造形表現に関する技術
  • 言語表現に関する技術
の3分野のうち、2分野を選択することになっています。いずれも保育実技の技術を見る試験です。

■保育士試験の実技のねらい
保育士試験の実技のねらいは、あくまで保育実技の技術を見ることにあります。出題の意図を正しく理解することががとても重要ですが、なかなかに難しいです。保育園の先生としてこどもたちと触れ合うための試験であるということを考えずに臨んでしまうと、当然のことながら「出題に対する解答としては正しくない」と評価されてしまい、残念ながら不合格ということにもなりえます。練習に取り組む以前に、この解釈が正しくできるかどうかで、明暗が分かれると言っても過言ではありません。

■保育士試験の実技に求められる技術レベル
保育士試験の実技では、日常の保育でこどもたちの表現したい気持ちを引き出し、遊びが発展することを援助する技術があるかを問われます。とても簡単に言い換えれば、こどもたちが「もっと先生と遊びたい!」「先生大好き!」となるような、おうた・おえかき・おはなし遊びができますか?ということが見られるのです。プロの音楽家や画家、舞台俳優のような技術を求める試験ではありません。出題の意図は保育実技の技術を測ることにあるのだと分かっていれば、初心者のかたでも合格することは可能です。

■保育士試験の実技のポイント
実際の現場ではできるかもしれないことでも、試験という緊張状態ではうまくこなせなくなってしまうもの。さらに、こどもがいない状況で保育実技をするため、完全に演技をしなくてはなりません。試験ならではのハードルがあるのも確かで、そこの対策も重要になってきます。
 

気になる保育士試験の実技の合格率

さて、気になる実技試験の合格率についてです。厚労省サイトで公表されているデータを見てみますと、平成17年~21年まではおよそ80%前後で推移していました。しかし、平成22年から徐々に上がり始め、平成26年は88.7%、平成27年には89.1%と発表されています。いまではおよそ9割近くが合格するというデータですね。合格率が上がってきている背景には昨今の保育士不足に対応するかたちで、合格者を増やしたいねらいもあるのかもしれません。
 
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表:保育士試験の実技の合格率 厚労省資料をもとに筆者が作成


■保育士試験の実技の分野別の合格率の特徴
音楽表現については、筆者の講座受講者の構成から見ると、ピアノや弾き歌いの初心者がたいへん多いです。ですから、初心者や中級程度のレベルの方でも、9割近くが合格できる可能性があるということになります。言語表現については、音楽よりもさらに経験者は滅多にいない分野ですから、ほぼ全員が初めてです。なかには、保育所で既に補助的な勤務で現場経験をしている人もちらほらといますが、かなり少数だと思います。例えばこのような経験値で2分野を選択してもおよそ9割ちかくが合格できるということです。

こちらが上記の表の元データが記されている厚労省資料へのリンクです(資料2ページに筆記試験も含めた合格率の推移が掲載されています)。 次に、各分野の出題のポイントについて解説していきます。
 

音楽表現に関する技術の出題ポイント

出題されている楽譜には、歌詞とメロディー、コードネームしか書かれていません。これは最低限の情報が書かれたメモと考えてください。

■音楽表現に関する技術で求められるレベル
これをもとに、
  • 自分にできるレベルの演奏内容にアレンジする。
  • 楽譜やメモを臨機応変に準備して、子どもたちの前で演奏するための用意をする。購入しても自作でもかまわないし、楽譜を使用しなくてもよい。
  • 子どもたちに親しみやすい演奏をする。
このようなことを自分で適宜準備できるかどうか、そして、保育の現場で子どもたちと楽しく音楽で遊ぶことができるかを問われる試験です。ですから、『複雑で難易度の高い伴奏を、間違えずに弾きこなせるか』という試験ではありません。この解釈が正しくできるかどうかが、評価の分かれ目となるでしょう。
 

造形表現に関する技術の出題ポイント

受験者自身が、造形に関する基礎的な知識・技術を備えているかどうかを見られます。

■造形表現に関する技術で求められるレベル
基礎的な知識と技術、そして保育者自身の豊かな感性で、子どもたちの造形表現を援助し、発展させるような遊びが提供できますか? という試験です。画家のように油絵を何週間・何か月もかけて描き込む、というような芸術が求められる訳ではありません。子どもにとって親しみやすい基本的な明るい色使いや構図、人や物の大きさのバランス感覚なども身に付けておきましょう。決められた時間内に、その場で指定されたテーマ・条件に従って描けることがポイントです。その素養があるかどうかを見られる、と考えるとよいでしょう。

■気軽に描くことから始めてみる
実際の保育の場面では、「先生、○○描いて~!」なんて、こどもに頼まれることも多々あるでしょう。そんなときに、さらさらと、カラフルに健全な絵が描けるといいですよね。日ごろから、大作でなくても気軽にイラストを描いてみて、まずは描くという活動に慣れ親しむのもよい練習になると思います。
 

言語表現に関する技術の出題ポイント

受験者の皆さまの中には通信講座の教材のCDなどを持っているかたもいらっしゃると思います。しかしこうした教材は、アナウンサーのような作り込んだ口調で語られています。わたしはこのような素話を聞くと、生身の人間の、自然な感情を感じ取ることができないように思うのですが、皆さまはいかがですか?それに実際の保育の現場で、先生がアナウンサーのような口調で子どもたちに話しかけても、ちっとも子どもたちの心には響かないと思うのです。

■言語表現に関する技術で求められるレベル
ですから、こうした教材を真似することは、あまりオススメできません。暗記したものをただ暗唱するだけでは合格は難しいでしょう。もっと自然に、自分の言葉で子どもたちに話しかけているような表現を、採点委員の前で出来るかどうかがポイントです。「保育園でこどもたちの前に立ったとき、あなたはどんな様子でこどもたちに話しかけるのですか? 」という試験なのです。試験ではこどもに見立てた椅子等に向かって話すよう指示されています。実際は目の前に子どもがいない状況ですので、完全に演技形式の試験となります。言語の試験ではここが特に難しいところです。

いかがでしょうか? 実技試験について、だんだんとイメージがわいてきたでしょうか?試験のねらいを正しく理解することがカギだということがわかってきたと思います。そのほかにも保育士試験受験のためになる記事をピックアップしますので、ぜひ参考になさってくださいね。

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【関連サイト】
保育士試験 厚生労働省
保育士試験を受ける方へ|全国保育士養成協議会
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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