マーケティング/マーケティング事例

“赤い服の客”が集まるご当地家電量販店、人気の秘密

家電量販店ではお客の来店促進のためさまざまなイベントを実施しています。商品の体験会、実演会などが多いですが、北陸を中心に店舗展開する家電量販店「100満ボルト」では、一風変わった取り組みでファンを獲得しています。

伊森 ちづる

執筆者:伊森 ちづる

家電マーケティングガイド

謎の集団が家電量販店に集合!?

日曜の昼下がり。石川県金沢市に立地する家電量販店「100満ボルト」に"赤い服"を来たお客や"赤いアイテム"を持つお客が次々集まっています。どうして似たような服装の人ばかり集まるのでしょうか?この"赤い服の客"を呼び込むアプローチは、同社がお客の来店頻度を上げるため取り組みの1つ。その仕掛けと、"赤い服"の正体に迫ります。

正体は地元J2チームのサポーター

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金沢直江店は駐車場に特設会場を設置している

実は"赤い服の客"の正体は、地元J2のサッカーチーム・ツエーゲン金沢のサポーターです。100満ボルトでは主に金沢本店と金沢直江店の2店舗でツエーゲンを応援できるような特設会場を設置しています。

特設会場を設置している店舗の1つ、100満ボルトの金沢本店ではツエーゲン応援グッズを集めたコーナーを展開しています。試合がある日は同コーナーに大画面テレビと椅子を用意するので、 ツエーゲン金沢のファンが店頭に集まります。

一方、金沢直江店では、なんと駐車場に大画面テレビを設置した特設会場を用意しています。パブリックビーイングと指定した日でなくても、来店客は自由に試合が観戦できます。パブリックビューイングと告知した日には、さらに多くのサポーターがユニフォームに身を包み来店。屋外ということもあって応援に熱が入り、観客同士の一体感が味わえるそうです。

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J2優勝を決めた際の試合は多くのファンが特設会場で観戦した

こうした100満ボルトの取り組みがサポーターに浸透し、「県外までツエーゲンを応援しに行けない方、100満ボルトで盛り上がりましょう!」などとやり取りするサポーターが現れるほど。昨年11月にツエーゲン金沢がJ2昇格を決めた試合では、初めてパブリックビューイングを実施し、多くのサポーターが100満ボルトの特設会場で喜びを分かち合いました。 ちなみに100満ボルトでは今シーズン最後のパブリックビューイングを11月14日に予定しています。

100満ボルトはなぜPVをする?

家電量販店のテレビコーナーでスポーツの試合を放送し、お客がそれを見に来るというのは、少なくありません。しかし、100満ボルトのように、特定のチームを応援する特設会場を設置するのは珍しいことです。

同社がパブリックビューイングを行う理由の1つにスカパーの販促があります。実は家電量販店では、スカパーをはじめとする有料チャンネルの契約に応じてインセンティブが得られます。そのため、有料チャンネルのPRに力を入れる店舗が多いのですが、100満ボルトではサッカーを切り口に有料チャンネルをPRしているというわけです。しかも、有料チャンネル獲得件数に応じてツエーゲン金沢にもJリーグを通して支援金が支払われるので、両者がWin-Winの関係になるのです。

もう1つの理由は"店舗の地域化"です。金沢本店の伊登英明店長は15年6月に取材した際、「地元を応援することでのお客様に100満ボルトに対して親しみを感じていただきたい」と話していました。つまり、地元のクラブを応援することで店舗を地域社会に溶け込ませる狙いがそこにはもあります。

試合を撮影できるイベントも実施

店舗の地域化に向けて100満ボルトでは、ツエーゲンと協力してさまざまなイベントを企画しています。

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ピッチ脇から試合を撮影する姿は真剣そのもの

例えば、9月に実施したカメラ女子撮影講座もその1つ。これはイベント期間中に100満ボルトで所定金額以上買い物した女性(申込先着15名)を対象に行ったもの。参加者は、オリンパス専任講師の指導のもと、サッカー場のピッチ脇から練習試合で熱い戦いを繰り広げる選手達を撮影しました。同社では、ほかにも親子を対象にした撮影イベントなどを実施しています。(こちらはキヤノンの講師が指導)。

ほかの企業でも、店内でカメラ撮影講座を実施することはありますが、この100満ボルトの企画のように店の外に出て行う撮影イベントは全国的に珍しい試みです。これは、参加者に高機能カメラならではの撮影の楽しさを体感してもらうだけでなく、地元J2チームのサポーターを100満ボルトのファン、リピーターにしたいという企業側の戦略が背景にあるのです。

地域化を進める家電量販店

家電量販業界は、効率を重視した店舗オペレーションで成長してきた業界です。同じ企業の店舗であれば、どの店舗にいっても大きな違いはないと感じる人も多いのではないでしょうか。

しかし、社会環境の変化により、家電需要が縮小傾向になってきた現在では、少しずつその方向性が変化してきています。100満ボルトのように、地域に関連した情報発信することで、「行くと何か新しい発見がある」「地域にあった情報をくれる」とお客に感じてもらい、お客にとっての「オンリーワン」店舗になることを目指している店も少なくありません。全国の面白い家電量販店やその店舗を今後も取り上げていきます。

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