<ラインナップ>
- 宅地建物取引業法の改正
- 法令上の制限の改正
- 不動産鑑定評価基準の一部改正
- 税法の改正
宅地建物取引業法の改正
1.取引士証および従業者証明書のプライバシー保護
取引士証および従業者証明書の提示についても改正がありました。これまで、重要事項説明の際や取引関係者から求められたとき等に、取引主任者は取引主任者証を、従業者は従業者証明書を、隠すことなく提示しなければなりませんでした。
改正により、提示の際に、取引士証に記されている住所欄にシールを貼り隠すことができるようになりました。個人情報保護の観点からの改正点です。
【予想問題】
売主A、買主Bの間の宅地の売買について宅地建物取引業者Cが媒介をした場合、Cの従業者である取引士がBに対して重要事項説明を行うときは提示する取引士証の住所欄をシール等で隠すことができないが、取引関係者等から提示を求められた際は住所欄をシール等で隠すことができる。
<解説>
⇒× 重要事項説明の際も、取引関係者等から提示を求められた際も、住所欄をシール等で隠すことができます。
2.宅地建物取引士への格上げ
取引主任者から取引士に格上げされたことで次の規定が追加されました。
(1) 専門家として公正かつ誠実に業務を処理すべきであるとする原則規定(15条)
取引士は、宅地建物取引の専門家として、専門的知識をもって適切な助言や重要事項の説明等を行い、消費者が安心して取引を行うことができる環境つくりをしなければなりません。そのため、取引士は、常に公正な立場を保持して、業務に誠実に従事することで、紛争等を防止するとともに、取引士が中心となってリフォーム会社、瑕疵担保会社、金融機関等の宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携を図り、宅地及び建物の円滑な取引の遂行を図る必要があるものとします。
(2) 私的な行為を含め取引士の信用を失墜させるような行為の禁止規定(15条の2)
取引士は、その業務が取引の相手方だけでなく社会からも信頼されていることから、信用を傷つけるような行為をしてはなりません。信用を傷つけるような行為とは、宅地建物取引士の職務に反し、または職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為で、取引士としての職業倫理に反するような行為であり、職務として行われるものに限らず、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為も含まれます。
(3) 知識能力の維持向上を努力義務とする規定(15条の3)
取引士は、専門家である以上、常に最新の法令等を入手して、それを実務能力に反映させる必要があります。取引士に課せられた努力義務です。
【予想問題1】
宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うべきであるが、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携は専門外の業務となるのでできる限り他の従業員に任せるべきである。
<解説>
⇒× 宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならないとされています。
【予想問題2】
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないが、その対象は職務として行われるものに限ら、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為はその対象とならない。
<解説>
⇒× 職務として行われるものに限らず、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為も含まれます。
【予想問題3】
宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならないが、宅地建物取引業者に勤務していない場合はその必要がない。
<解説>
⇒× 知識及び能力の維持向上の努力義務は宅建業者に勤務していなくても同様です。
3.宅地建物取引業者による従業員の教育
宅地建物取引業者は、その従業者に対し、登録講習をはじめ各種研修等に参加させ、又は研修等の開催により、必要な教育を行うよう努める義務があるとされました。
【予想問題】
宅地建物取引業者は、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行わなければならず、これに違反した場合は10万円以下の過料に処せられる。
<解説>
⇒× 従業者への教育は努力義務であり、違反した場合に制裁はありません。
4.宅建業の免許欠格事由と取引士の登録欠格事由の追加
「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」(暴力団員等)(法5条1項3号の3)、「暴力団員等がその事業活動を支配する者」(法5条1項8号の2)の2つが宅建業者の免許欠格事由に付け加えられました。
取引士の登録欠格事由にも「暴力団員等」が追加されました(法18条1項5号の3)。
平成19年6月に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)が取りまとめられ、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本理念や具体な対応が示されて以来、年々暴力団等に対する規制が強化されています。今回の改正もその一環です。
また、いわゆる「暴力団排除条例」についても、平成23年10月1日をもって全都道府県で施行されており、不動産を譲渡する者に対し、その譲渡に係る契約の相手方に、対象不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めることなどが規定されています。
これまでは、不動産取引の当事者から暴力団を排除することがその主眼でしたが、今回の改正では宅建業者及び取引士から暴力団を排除する内なる規制強化ということになります。
【予想問題】
A社の取締役が、8年前まで暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条第6号に規定する暴力団員だった場合、A社は免許を受けることができない。
<解説>
⇒× 暴力団排除の要件は5年です。8年前に脱退していれば免許を受けることができます。
5.重要事項の追加
地震に対する安全性が確保されていないマンションの建替え等の円滑化を図るため、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が一部改正されました。特に、同法105条1項の改正で、耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和する特例が定められた点が重要です。その理由は、敷地面積規模に係る制限等を知らないでそのマンションを購入等した者が不測の損害を被るおそれがあるため、同法105条1項が新たに重要事項説明事項と位置づけられたからです。
【予想問題】
マンションの貸借の媒介において,当該マンションがマンションの建替え等の円滑化に関する法律第105条1項に規定する特定行政庁の許可を受けて容積率制限の緩和特例の適用を受けるマンションは敷地面積規模に係る制限等を受けることについては重要事項として説明しなかった。
<解説>
⇒〇 上記の内容は建物の貸借の場合には説明する必要がありません。
6.報酬額の計算方法の改正
免税事業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額について、仕入れに係る消費税等相当額をコスト上昇要因として価格に転嫁することができるとされています。価格に転嫁できる仕入れに係る消費税等相当額の限度額については、税抜金額に消費税法施行令で定めるみなし仕入れ率(50%)と消費税(地方消費税を含む。)の税率(8%)を乗じたもの(つまり、税抜金額の0.04倍)とされていました。
この点について、消費税法施行令の改正によるみなし仕入れ率の変更を踏まえ、平成27年4月1日以降に締結された売買等の契約に係る価格に転嫁できる仕入れに係る消費税等相当額の限度については、税抜金額に消費税法施行令で定めるみなし仕入れ率(40%)と消費税(地方消費税を含む。)の税率(8%)を乗じたもの(つまり税抜き金額の0.032倍)となりました。
次のページでは改正されたらすぐに出題される傾向が強い法令上の制限の改正点についてご説明いたします。