不動産鑑定評価基準の一部改正
国土交通省の「不動産鑑定評価基準」、「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」及び「価格等調査ガイドライン」、「価格等調査ガイドライン運用上の留意事項」(以下「改正基準等」という。)が改正され、平成26年11月1日から施行されました。今回の改正には以下のような社会的背景があります。1.ストック型社会の進展への対応
(1)建物に係る価格形成要因が充実されました。
・建物の用途に応じた価格形成要因が整備されました。
・防災意識の高まりや省エネルギー対応の動き等を踏まえた各用途に共通する価格形成要因が見直されました。
(2)原価法に係る規定の見直し等
・建物の増改築や修繕等の状況を適切に反映した評価が徹底されました。再調達原価の算定や減価修正の方法が整理されました。
・既存建物の増改築・修繕等が行われることを前提とする評価プロセス(「未竣工建物等鑑定評価」)が導入されました。
2.不動産市場の国際化への対応
(1)スコープ・オブ・ワークの概念が導入されました。
・土壌汚染等の特定の価格形成要因について、不動産鑑定士の実施する調査を合理的な範囲で可能とする「調査範囲等条件」が導入されました。
・手法適用が合理化されました。3方式の併用が市場の特性を適切に反映した複数手法を適用すべきものと変更されました。
・建築中の建物等について竣工後を前提とする評価プロセス(「未竣工建物等鑑定評価」)が導入されました。
(2)価格概念に関するIVSとの整合性の向上
・証券化対象不動産に係る価格の表示が変更されました。
(3)証券化対象不動産の多様化へ対応
3.事業用不動産に係る規定が充実しました。
・事業用不動産の特殊性を踏まえ、その収益性を適切に把握して評価する方法や留意点等の規定が新設されました。
4.改正点
(1)特定価格の定義
(改正前)
特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
(改正後)
特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
(2)価格を求める鑑定評価の手法
(改正前)
原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において、再調達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効であり、対象不動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適切に求めることができるときはこの手法を適用することができる。
この場合において、対象不動産が現に存在するものでないときは、価格時点における再調達原価を適切に求めることができる場合に限り適用することができるものとする。
(改正後)
原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において、再調達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効であり、対象不動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適切に求めることができるときはこの手法を適用することができる。
(削除)
(3)鑑定評価方式の適用
(改正前)
鑑定評価方式の適用に当たっては、鑑定評価方式を当該案件に即して適切に適用すべきである。この場合、原則として、原価方式、比較方式及び収益方式の三方式を併用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により三方式の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
(改正後)
鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
【予想問題】
原価法において、対象不動産が現に存在するものでないときは、価格時点における再調達原価を適切に求めることができる場合に限り適用することができる。
<解説>
⇒× 平成27年にこの記述は削除されました。
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