平成26年undefined宅地建物取引業法改正

平成26年宅地建物取引業法の改正で取引主任者が取引士に格上げされました。

平成26年6月25日に宅地建物取引業法が改正され、平成27年4月1日より施行されました。

これまで、宅地建物取引主任者と呼ばれていた名称が、宅地建物取引士となったことで、その役割や責務等についても改正がありました。

その影響もあり、全体的に試験問題の難易度は上がりました。
権利関係(民法等)は個数問題と判決文引用問題が定番となるだけでなく、判例を踏まえた実務的な事例問題が増えました。
宅地建物取引業法等は、国土交通省のガイドラインに記されている事例をベースとした実務的な事例問題が多くなりました。重要事項説明の問題数が増え、これまで出題されたことがなかった法35条1項2号の法令上の制限の説明事項について、建物貸借の媒介の際にも説明する例外事項が出題されました。個数問題も年々数を増し、正確な暗記が強いられるようになっています。
法令上の制限は、これまでと変わらない問題でした。
税法は、贈与税の直近の改正点が出題された点以外、これまでと変化はありませんでした。

以下、今回の改正点と今後の宅建試験への影響、新たな宅建士試験に向けての学習の4つの秘訣を書きます。

平成26年の宅建業法の改正点と改正の目的

《改正点》
以下の6つの事項が改正点となりました。

•宅地建物取引主任者から宅地建物取引士に(2条4号関係)
•宅地建物取引士の業務処理の原則(15条関係)
•宅地建物取引士の信用失墜行為の禁止(15条の2関係)
•宅地建物取引士の知識及び能力の維持向上(15条の3関係)
•宅地建物取引業者による従業員の教育(31条の2関係)
•免許及び取引士登録に係る欠格事由及び取消・消除事由の追加(5条1項及び66条1項関係、18条1項及び68条の2第1項関係)

《改正の目的》
今回の改正は、宅地建物取引主任者における宅地建物の安全な取引のために果たすべき責任の増大や、中古住宅の円滑な流通に向けた関係者との連携等、その役割が大きくなっていることがその目的の中心となります。また、取引の際に必要な重要事項の説明が煩雑化していることも、今回の改正の目的となります。

宅地建物取引主任者から取引士へ

名称が、宅地建物取引士(以下、「取引士」という)に変更されました。

取引士に関しては過去に何度も改正があり、その都度、その役割や法的義務が拡大し社会的な地位がどんどん高くなっています。

昭和32年の改正ではじめて、「宅地建物取引員」という資格が生まれました。その後、昭和39年の改正で、宅地建物取引主任者と名称が変わり、事務所に1人以上設置することが免許基準となりました。

昭和46年の改正では、それまで取引主任者の職務についての定めがなかったものを都道府県知事への登録制にして、重要事項説明書面への記名・押印とその説明、37条書面(契約書面)への記名押印を取引主任者の担当とし、取引主任者証明書の携帯と提示義務、監督処分等が定められました。

昭和55年の改正では、事務所に備える専任の取引主任者の数を1人から、10人に1人以上に増やし、さらに昭和63年の改正でその数は5人に1人以上となりました。

今回の平成26年の改正は、これらに次ぐ大きな改正といえます。

なお、すでにお持ちの宅地建物取引主任者証については、改正法付則第4条において宅地建物取引士証とみなされます。平成27年4月1日以降も有効期限の範囲内においては有効です。また、取引主任者が現在持っていて有効期間が満了していない取引主任者証を宅地建物取引士証に切り替えることも可能です。詳細は各都道府県事務所にお問い合わせください。

また、取引士証の提示についても改正がありました。これまで、重要事項説明の際と、取引関係者から求められたときに、取引主任者は取引主任者証を提示しなければなりませんでした。改正により、提示の際に、取引士証に記されている住所欄にシールを貼り隠すことができるようになりました。取引士の個人情報保護の観点からの改正点です。

田中謙次の出題予想!(平成27年度以降の宅建試験での出題予想)
【問 題】 取引士は、取引関係者から取引士証の提示を求められた際にはその住所欄にシールを添付する等の方法で隠すことが許されているが、重要事項説明の際の提示では住所欄を隠すことは許されない。

⇒ 誤り 重要事項説明の際も、取引士証の住所欄をシール等で隠すことができます。

宅地建物取引士の業務処理の原則

「宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない」(宅建業法15条)と定められました。

公正誠実義務について、国土交通省はガイドラインで次のような解釈を行いました。

宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、専門的知識をもって適切な助言や重要事項の説明等を行い、消費者が安心して取引を行うことができる環境を整備することが必要です。このため、宅地建物取引士は、常に公正な立場を保持して、業務に誠実に従事することで、紛争等を防止するとともに、宅地建物取引士が中心となってリフォーム会社、瑕疵担保会社、金融機関等の宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携を図り、宅地及び建物の円滑な取引の遂行を図る必要があるものとします。

国土交通省の政策担当者は、この点を強調しておりました。

近年、取引主任者の役割は、単に重要事項説明や契約成立の立会に終わらず、金融機関による融資のあっせん、リノベーション(改築により価値を上げること)やリフォーム(新築時の状態に戻すこと)業者との連携業務、平成19年に成立した住宅瑕疵担保履行法による新築建物に対する10年間の担保責任と保険会社への加入等の義務付けに関連する業務等、ますます増えるとともに複雑かつ高度にもなっています。

宅地建物取引士の信用失墜行為の禁止

「宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」(法15条の2)と定められました。

信用失墜行為の禁止について、国土交通省はガイドラインで次のような解釈を行いました。

宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として専門的知識をもって重要事項の説明等を行う責務を負っており、その業務が取引の相手方だけでなく社会からも信頼されていることから、宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為をしてはならないものとします。宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為とは、宅地建物取引士の職務に反し、または職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為で、宅地建物取引士としての職業倫理に反するような行為であり、職務として行われるものに限らず、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為も含まれます。

かなり抽象的な規定で、しかも、ガイドラインでは職務に直接関係しない私的な行為もその対象となるとしているのが特徴です。ただ、この規定に対応する監督処分や罰則の箇所の改正はないので、私的な行為により指示処分等の監督処分になることはないと思われます。具体的には、宅建業法68条1項3号の「宅地建物取引士として行なう事務に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」という指示処分・事務禁止処分の対象行為となるかどうかの問題ですが、制裁にあたる規定なので拡大解釈は避けるべきでしょう。

田中謙次の出題予想!(平成27年度以降の宅建試験での出題予想)
【問 題】 取引士が休暇中に泥酔して警察官職務執行法第3条1項2号により保護をうけた場合、信用又は品位を害するような行為をしたとして指示処分及び罰金刑の対象となる。

⇒ 誤り 宅地建物取引士として行なう事務に関し不正又は著しく不当な行為をしたときとまではいえない場合は指示処分の対象にもなりません。罰金刑の対象行為でもありません。

宅地建物取引士の知識能力の維持向上

「宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない」(法15条の3)と定められました。

知識及び能力の維持・向上について、国土交通省はガイドラインで次のような解釈を行いました。

宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、常に最新の法令等を的確に把握し、これに合わせて必要な実務能力を磨くとともに、知識を更新するよう努めるものとします。

この点については、全国宅地建物取引業協会や各都道府県の宅建協会等の公的な団体で行われる研修の充実と、取引士証の交付の際に必要な法定講習の講義時間が5時間から6時間に変更となる等で対応する動きとなります。なお、規定自体は努力義務となっているので、違反したことでの直接の法的効果はありません。

宅地建物取引業者による従業員の教育

「宅地建物取引業者は、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない」(法31条の2)と定められました。

この点について、国土交通省はガイドラインで次のような解釈を行いました。

宅地建物取引業者は、その従業者に対し、登録講習をはじめ各種研修等に参加させ、又は研修等の開催により、必要な教育を行うよう努めるものとします。

今回の改正では、宅建士に限らず一般従業員に対する教育(努力)義務が宅建業者に課せられました。宅建業者に勤務する従業員の場合、そのほとんどが宅建試験を受験することから、従業員のみが受講・受験できる登録講習(5問免除講習)が、従業員教育の中核に位置づけられたようです。法的には努力義務なので、違反したことでの直接の監督処分等はありません。

なお、私は、宅建協会での講師や企業研修をプロデュースする会社を経営する立場なので、多くの宅建業者(特に人事担当者)からこの点について相談を受けております。大手企業は今まで以上に研修の数を増やしたり、宅建受験対策も早い段階で始めたりする等で対応しております。また、全国宅地建物取引業協会での不動産キャリアパーソン(通信教育)や各支部で実施される研修の拡充の動きがあります。

田中謙次の出題予想!(平成27年度以降の宅建試験での出題予想)
【問 題】 宅地建物取引業者に勤務する取引士及び従業員は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならず、宅地建物取引業者は研修等を実施する義務を負う。

⇒ 誤り 事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない対象に一般従業員は含まれず、研修等の実施は義務ではなく努力義務にすぎません。

免許及び取引士登録に係る欠格事由及び取消・消除事由の追加

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者」(以下「暴力団員等」という。)(法5条1項3号の3)、「暴力団員等がその事業活動を支配する者」(法5条1項8号の2)の2つが宅建業者の免許欠格事由に付け加えられました。

取引士の登録欠格事由にも「暴力団員等」が追加されました(法18条1項5号の3)。

平成19年6月に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)が取りまとめられ、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本理念や具体な対応が示されて以来、年々暴力団等に対する規制が強化されています。今回の改正もその一環です。

また、いわゆる「暴力団排除条例」についても、平成23年10月1日をもって全都道府県で施行されており、不動産を譲渡する者に対し、その譲渡に係る契約の相手方に、対象不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めることなどが規定されています。

詳細は国土交通省ホームページを参照下さい。
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000024.html

これまでは、不動産取引の当事者から暴力団を排除することがその主眼でしたが、今回の改正では宅建業者及び取引士から暴力団を排除する内なる規制強化ということになります。

この点について、直接警察庁に問い合わせたところ、採用する取引士が暴力団員等であるか否かは各所轄の警察署で聞くことができるそうです。ただ、それ相応の手続は必要となります。詳細は警察庁又は各警察署に問い合わせて下さい。

新たな宅建士試験に向けた4つの学習の秘訣

1.判例の学習方法を身に付けよう

近く民法の改正もひかえております。新しい民法では、今以上に契約が重視されます。契約が重視されることは、実際の事件を背景とした判例理論が重視されることを意味します。ですから、判例学習なくして宅建試験の権利関係をマスターすることはありえません。

判例は、まずは事実と結論を覚えましょう。できる限り具体的に事実を学んだ方が忘れない記憶になります。次に、判決にいたる大前提である条文解釈を読み、テキストのどこの部分に関連する判例なのかを意識しましょう。最後に、学んだ判例がテキストに書いてなければ付箋に書いてテキストの関連するページに貼り付けましょう。

2.条文を意識しよう

ここ数年の問題は、条文の細かい知識や、条文にあるかないかを問う問題が目立ちます。しかも、何度も出題されているので、捨てるわけにはいきません。過去に何度も出題されている重要な点については、条文も一度は読んでおくべきでしょう。特に、借地借家法や建物区分所有法は効果的です。

3.法令上の制限は重要事項説明を意識する


今回の宅建業法の改正の目的でもあるので、重要事項説明における法令上の制限の扱いは特に学習しておかなければなりません。ただ、ここは宅建業に従事したことのない初学者の方にとったらイメージしにくく大変だと思います。自分が買主だったら、自分が借主だったらと想像して、契約前に説明してほしい内容=重要事項説明の内容というように関連付けて学習すると理解しやすくなります。

4.関連企業との連携問題に注意する

今回の改正にあるように、宅地建物取引士に新たに課せられた法的な役割は、関連企業との連携のリーダーシップです。この能力の有無を宅建試験で判断しようとした場合は、おそらく事例問題となるでしょう。すなわち、リフォーム業者との連携なら請負契約や業務委託契約、瑕疵担保会社との連携なら担保責任や保険契約、金融機関等との連携なら抵当権設定や所有権留保契約といったような長い文章の実務的な問題があると思われます。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。