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白井剛×キム・ソンヨン『原色衝動』インタビュー!(3ページ目)

白井剛とキム・ソンヨン、日韓ふたりのダンサーが共演する『原色衝動』。写真界の鬼才・アラーキーの鮮やかな映像を背景に、同年代でもある両者がその関係性を舞台上に投影します。公演に先駆け、白井さんとソンヨンさんのおふたりにインタビュー! 創作の課程と作品への想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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おふたりの印象とアラーキーさんのテイストは正反対のようにも思えます。作品に取り入れていく上で、戸惑う部分はなかったですか?

白井>色にしても直接的な表現感にしても、確かに僕が普段好んで扱うようなビジュアル感ではない。ただ、何となくその当時考えてたこと、僕の中のアイデアだったり、僕らが興味を抱いていたものに“色”があったんです。アラーキーさんの写真に出てくる花やセルロイドの塩ビ人形とか、人工物と自然物が混ざっているところに興味が沸いて。ストローなど人工の物を集めて自分の巣をつくる鳥がいて、木の実と人工物が混ざっている風景にすごくリアリティを感じたことがありました。そこに通じるものを見た気がしたというか……。

子供に血が付いていたり、股間に血が付いているような写真は直接的すぎて最初はちょっと扱いようがないなと思ったけれど、写真をよくよく見てみるといろいろなものが蠢いている。地獄なのか天国なのかわからないそれらの景色をアラーキーさんはパラダイスと言っていて、それまでの写真と全然違うスタイルだなという印象を受けたんです。以前の作品はアラーキーという人物が一番の主人公として前面に出てくる感じだったけど、アラーキーさんがどこかへいなくなっていく感じがした。同じ展示会で空や街並みを撮った写真があったけど、それもアラーキーという人物が消えつつ何かを見ている感じがして、すごく新鮮だなと思いました。

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それに、僕の中で“大好き!”と思えるもの、すぐ受け入れられるものではないものを取り込んでみなければいけないのではと模索していた時期でもありました。ソンヨンさんと一緒に踊ろうと思ったのもそうで、自分の範囲内だけではなく、自分の知らないものと出会ってみようと考えていて。普段出会わないものと対面したときに自分が何をするのか、そこを探ってみようと思ったのもひとつのきっかけでした。いずれも共感するところはあるけれど、完全には一緒になれないというのが特徴です。あとアラーキーさんの写真を見ていると、ちょっと優しかったり可愛かったり遊んでいたりする部分がある。そこに彼の人柄を見た気がしたし、ストレートにシンパシーを感じたところでもありました。

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ソンヨン>アラーキーさんの作品を見ていると、“これが私が見せられるものだ”と話しかけてくる気がします。アラーキーさんが“自分の作品の中に何が見える?”と頭の中に訴えかけてきて、同時にいろいろなものが見えてくる。その先に哲学を見るひともいれば、ちょっと面白い部分だったり、小さなパートに注目して見るひともいる。彼自身これだと決めて撮るのではなく、いろいろな素材を用意して、かき混ぜて、そこから切り取ったものに対してどう考えるか、という部分は個人に任せてる。

僕が何かつくるときは反対で、常に真っ直ぐに進みます。テーマーを決めてそこに向かっていく。一方、アラーキーさんはいろいろなものを見つけて、ワッとつくっていく。結果的に、アラーキーさんの作品は見方によってどんな風にも見える。僕がアラーキーさんの作品と関わる理由、それは自分が彼の作品をどう見せるかにあるのではないかという気がしています。

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