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白井剛×キム・ソンヨン『原色衝動』インタビュー!(2ページ目)

白井剛とキム・ソンヨン、日韓ふたりのダンサーが共演する『原色衝動』。写真界の鬼才・アラーキーの鮮やかな映像を背景に、同年代でもある両者がその関係性を舞台上に投影します。公演に先駆け、白井さんとソンヨンさんのおふたりにインタビュー! 創作の課程と作品への想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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お互いのことを知るために話し合うようなことはあったのでしょうか?

白井>去年の8月に韓国に行ったときは、ふたりで話す時間も結構あったので、一緒に銭湯に行っていろいろ語り合いました。こういうダンスを観たとか、どこどこに行ってきたとか、作品とは関係ないことも話したし、同い年だけどこれからどうして行こうかとか、このプロジェクトは我々ふたりで大丈夫かな、といった話をしたり……。

ソンヨン>韓国料理を食べながら、女の子の話や彼の奥さんの話をしたり、韓国のダンスやエリアの話、今自分たちの周りで何が起こっているかについて話をしたこともありました。一緒に時間を過ごすことで、いろいろなものが生まれてきた。日本と韓国では空気感もまた違っていて、創作をしていても周りにあるものにすごく影響されますよね。韓国で短いショーイングを行いましたが、そのときはフレンドシップをテーマとして選びました。当時はまだ何が自分たちの主題になるのかも手探りしていて、テーマも仮の状態です。ショーイングはセミオープン形式で、日本から来たプロデューサーや関係者、ダンス批評家、あと友人たちが来て、彼らの前で踊りました。

白井>ショーイングでは何となく手応えのようなものを感じましたね。彼はフレンドシップと言ったけど、タイトルは『スリープ・オン・ザ・キル』(笑)。お互いオフェンシブであり続けるということをテーマにしていて、それが彼にとってはフレンドシップなのかもしれないけれど。お互いがお互いに好き勝手にやっていたら、その環境に何が起こるか、ということを試していたような気がします。

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舞台美術にアラーキーさんの写真を用います。どういった経緯でアラーキーさんとコラボレーションすることになったのでしょう。

白井>ふたりで踊るにしては広い空間でもありますし、ふたつの身体の間に何かしら介在するものがあった方がいい。舞台美術をどうしようかとずっと彼と相談していて、美術家の方を紹介してもらったりと、いろいろな方向から可能性を探っていました。そんなとき“最近アラーキーさんが面白いよ”という話を聞いて、ちょうどソンヨンさんが日本に滞在している期間中にアラーキーさんがギャラリーを開催していたので、じゃあ見に行ってみようとなったのが始まりでした。

ソンヨン>アラーキーさんのことはそのとき初めて知りました。残虐性もあって、最初はあまり好きにはなれなかった。何でこんなものを見なきゃいけないんだろう、というのが率直な気持ちでした。たとえばモナリザの絵だったら“何でこんな素晴らしいものが描けたんだろう”と心動かされて、自分でも見たいから見続けてしまう。でもアラーキーさんの作品は、見たくないんだけど見てしまう。聴きたくない音楽を聴き続けるような、見たくないものを見続けている感じ。自分の中で葛藤があって、自分の中のもうひとりの自分が“見続けろ、見続けろ”と言う。

何で彼はこういう作品を描いているんだろうと知りたくなって、インターネットやユーチューブでいろいろ調べてみたんです。最初はちょっと嫌悪感があったけど、奥さんが亡くなった後の作品は少し変わってきたような印象がありました。撮り方も一定の場所からではなくて、いろいろなところから撮ってるような感じがした。常にいろいろなことに興味津々で、試すことが好きな方なんだろうなと思いました。

白井>とはいえそのときは、ふたりのなかでは他の舞台美術でもいいんじゃないかということで一旦落ち着いたんです。でも企画を手がけた山田せつ子さんから改めて“ふたりにこれをぶつけてみたい”という挑戦のような言葉をいただき、僕らも“それならやってやろうか”ぐらいの気持ちにもなって(笑)。ただ実際のところ版権とかいろいろ大変だろうし、ダメモトな話ではありました。取りあえずということでオファーしてみたら、思いがけずトントントンと話が進んでいった感じです。

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