粉飾決算が分かりやすくなります
昔からいろいろな手口で粉飾決算が行われてきました。手口の一つが架空人件費。これは人件費を多めに支払ったことにして利益を圧縮する方法、反対に人件費を少なめにして利益を増やす方法です。マイナンバーが導入されると法人番号と個人番号が結びつき、架空計上した分があわなくなります。あわない額が多ければ不自然なので当然、税務署が調査に入ります。同じように架空伝票による売掛金増大もよく使われます。販売(売掛金)と購入(買掛金)を法人番号で突合せすれば、額があわないことが、すぐ分かります。掛けの計上時期が会社によって異なると、期をまたぐ場合もありますので合致しないことがありますが2期分でチェックすれば一致します。これが一致しないと同様に原因調査が行われるでしょう。
買戻条件付売上という手口もあります。これは土地など使わない資産を子会社などへ押しつけて土地売却益をだし、決算をよく見せようという手法です。押し付けられた子会社はたまったものではないので一定時間が過ぎると買い戻しされます。法人番号A(親会社)から法人番号B(子会社)に土地売却が行われ、何年かたつと法人番号B(子会社)から法人番号A(親会社)に土地売却が行われます。下グループ会社の法人番号ごとの取引を年度をまたいでチェックすれば、あぶりだすことができます。
資産課税へ税制が変わる
マイナンバーでは既に法律改正され、銀行口座とマイナンバーが紐付されることになりました。紐付されると資産課税を行う環境が整います。フロー(所得)とストック(資産)がありますが、今はフローの流れしか正確に追うことができません。フローにかかる税金が所得税です。個人の口座は銀行や証券会社など、いろいろなところに分散しており、名寄せは基本的に無理です。銀行口座がマイナンバーが紐付できれば個人番号で簡単に名寄せができます。
現在はストック(資産)がどれほどあるか捕捉できないので、相続の時に相続税で行うしかありません。マイナンバーによってストックの補足ができるようになれば資産課税が可能となります。
少子高齢化が進み、生産者年齢人口が右肩下がりで減少しているなか、フロー税制に頼っていれば国はもちません。ストック課税(資産課税)とフロー課税をうまく組み合わせる税制にしていかなければなりません。社会保険料や所得税の計算はフロー(所得)で行っていますがマイナンバー導入によって所得+資産をベースにした計算に変っていくでしょう。
手始めは総合課税でしょう。給与、不動産、事業収入などは累進課税になっていますが、利息、株式、投資信託、FX等の利益は分離課税(20%)となっています。この分離課税がなくなり給与などと合算され、累進課税となっていくでしょう。
もっともマイナンバーと紐付する金融機関が大変です。システム変更もありますが、昔、銀行口座を作る時に本人確認を厳格にやっていなかったためペットの名前や架空の名前で口座開設した時代があり、今も残っています。これらの整理にすごい時間と労力がかかります。
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