企業のIT活用/IT関連法律の注意点

マイナンバー制度が企業に与える影響

2016年1月からいよいよマイナンバー(個人番号)制度がスタートしました。企業では源泉徴収や社会保険など各種申告にマイナンバーが必要になりますので、従業員、パート社員、アルバイトから集めないといけません。中小企業はもちろん、アルバイトを雇っている個人事業主も対象になります。準備はできていますか。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

マイナンバー制度がスタート

2016年1月からマイナンバー(個人番号)制度がスタートしました。企業では源泉徴収や社会保険など各種申告にマイナンバーが必要になりますので、従業員、パート社員、アルバイトから集めないといけません。

中小企業はもちろん、従業員、パート社員、アルバイトを雇っている個人事業主も源泉徴収義務者ですので、もちろん対象になります。準備はできていますか。

マイナンバー制度がなぜできたのか

自動車運転免許書には12桁の番号がついている

自動車運転免許書には12桁の番号がついている

自動車運転免許には「第」で始まり「号」で終わる12桁の番号がついています。番号は初めて免許交付を受けた都道府県の公安委員会のコード(東京は30)や取得した年の西暦下2桁などで構成されています。ちなみに一番最後の番号は紛失・盗難などによる再交付の回数。ふつうの人は「0」なんですが、よく免許をなくしている人は「1」とか「2」になっています。この番号は警察庁で使われています。

同じように年金手帳には基礎年金番号がつけられ社会保険庁で使われています。各省庁で個人を管理するための番号をつけていますが、省庁内でだけ使っているため、例えば財務省が税収の見積をする場合、国税庁の納税申告書データを利用できず、マクロの経済統計データから類推しています。アメリカ財務省では内国歳入庁のデータベースを使って税収を見積もり、予算編成に反映させていますので精度は高くなります。

また市町町で住民税の計算をする時は国税庁から確定申告書の情報をもらって住所・氏名・生年月日・性別から個人を特定しています。国税と住民税(地方税)では統一した番号がないのでコンピュータは使えず、人海戦術で行っています。

これでは非効率なので、省庁を横断する共通番号がつくれないかと議論され、できたのがマイナンバー(社会保障と税の番号制度)。「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」が制定され、2016年1月から導入されます。

利用範囲を社会保障や税など行政分野に限定しており医療や民間による利用は認めていません。ただし利用範囲については2018年10月をめどに拡大を検討します。ドイツでは商用利用を禁止していますが、スウェーデンは「日常的に使われない限り使い難いものになってしまう」という考え方で、銀行など商業利用で使われています。

マイナンバーとは

マイナンバーは個人を特定する番号で、結婚で姓が変わっても継続する

マイナンバーは個人を特定する番号で、結婚で姓が変わっても継続する

マイナンバーは個人を特定するための番号で出生時から死亡時まで原則、変更されない数字になります。結婚で姓が変わっても継続します。

消えた年金記録問題の原因は日本語で、特に人名。例えば渡邊さんですが「なべ」にはいろいろな外字が30種類ほどあります。年金記録を人名で名寄せしましたが、点を一つ間違うと別人になってしまい消えた年金記録になってしまいました。つまり人名で名寄せはできず、個人番号があれば生涯変わらぬ番号で自分の権利を守ることができます。

個人のメリットとしては行政に提出する資料をなくすことができます。確定申告や補助金の申請時に税務署から納税証明書をとり、勤務先から源泉徴収票などをもらって書類添付しなければなりません。マイナンバー制度がはじまれば自分の個人番号を伝えるだけで、省庁間のネットワークで情報を取りよせられ提出書類が不要になります。

「マイ・ポータル」(情報提供等記録開示システム)というインターネットで確認できるサイトが新しくできます。自分の年金記録を「ねんきんネット」でオンライン確認できますが、同様のものとなるでしょう。自分の年金や税金の払い込みの記録をチェックできます。希望者には個人番号カードが交付され、現在ある住基カードは廃止になります。個人番号カードは運転免許証に代わる身分証となりますので子供や運転免許を持っていない人は恩恵を受けます。

マイナンバー制度で社会保険の未加入事業所がわかる

マイナンバー制度で社会保険の未加入事業所がわかる

マイナンバー制度で社会保険の未加入事業所がわかる

マイナンバーは個人より行政側のメリットが多くなります。長い目でみれば効率化によって行政コストが減れば、結果的に国民負担が減るので個人にもメリットとなります。また完璧ではありませんが、ある程度一人一人の所得がより正確に分かりますので、行政側は年金の不正受給などいろいろな不公平をなくすための対策をとることができます。反対に所得を経年で把握できますので生活保護申請などの審査時間を短縮できます。

また社会保険の未加入事業所、いわゆるブラック企業が分かります。労働保険(労災保険、雇用保険)は法人、個人を問わず労働者を1人でも雇用した場合、必ず加入しなければなりません。社会保険(健康保険、厚生年金保険)は法人の場合、人数に関わらず必ず加入しなければなりません。個人事業は労働者が5人以上の場合は必ず加入しなければなりません。これが原則ですが未加入の企業も多くあります。マイナンバー制度により国税庁の申告データとのすりあわせが行われますので、 未加入会社があぶりだされます。

従業員だけでなく家族のマイナンバーも必要です

給与支払報告書にマイナンバーが必要となる

給与支払報告書にマイナンバーが必要となる

2015年10月から各個人にマイナンバーの通知がはじまり、2016年1月からマイナンバーの利用が始まりました。企業では従業員の税金などを申告する場合にマイナンバーの記載が必要となります。また扶養控除がありますので従業員本人だけでなく扶養家族のマイナンバーを把握しないといけません。マイナンバーの通知書のコピーを会社に出してもらう形になるでしょう。

人事・経理部門が大変で給与、源泉徴収票、支払調書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届など、数多くの書類についてマイナンバーが必要となります。士業やセミナー講師に報酬等支払いをした時の源泉徴収にもマイナンバーが必要。従業員が少なく、エクセルで給与支払報告書を作成しているような場合はマイナンバーの欄を追加するだけですみますが、システム化している場合、プログラム変更をしなければならない。

マイナンバー(個人番号)とは別に法人番号も作られ、国税庁のサイトで個人番号とは異なり公開されます。公開されるのは商号または名称、本店所在地、法人番号となります。法人税の申告などで必要となります。

企業は従業員、パート社員、アルバイト、従業員家族のマイナンバーが漏れないよう厳重に管理しないと法律で罰せられます。他人にマイナンバーを教えても同じです。不正な利益を図る目的で、個人番号を提供又は盗用したりすると懲役、罰金になります。


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