知り合って2年の月日が経ち、お互い変わったなと思う部分はありますか？
大貫＞出会ったときからあまりにも多くの時間を一緒に過ごしてきたからか、実際のところよくわからない。宮尾さんはずっと貪欲だったし、今もずっと求め続けてるし、現状に満足していない。スタンスがずっと一緒なので、変わったかどうかはわからないですね。宮尾＞近すぎず遠すぎずなんですけどね。たぶんお互い舞台上にいるところを見ないとわからないと思う。知らない引き出しはいっぱいあるけど、それが昔からあったものなのかはわからない。でも今回リハもそうだし初めてのシチュエーションが多いから、変化というより“あ、こうやるんだ” って、新しい部分を見る場面が沢山あるのを感じます。やっぱり彼は消化が早いですよね。それはダンサーとして大きな強み。僕もバレエジェンツに振付けていて感じたことですが、早いひとはほんとに早い。振りを10もらったらあっという間に自分の踊りにして、100返してきたり……。あと『クレメンティア』の発足者のひとりだから、自分のことだけではなく作品全体を見ている感じがします。
大貫＞宮尾さんに関しては、改めて身体が柔らかいんだなって思いましたね（笑）。うつぶせに寝て、左足が右手についちゃうんです。あと、実はストイックだということを知りました。宮尾さんが踊るパートを自分で振付けしてるのを見ていたら、そんなに追い込まなくてもいいのにっていうくらいシンドイ振りにしていて。自分に厳しいひとなんだなって思いました。よく一緒に飲んでるとき“明日も朝からレッスンだよ”なんて言ってるけど、本当にやってるのかなって思ってた。実はちゃんと毎日やってるんですよね。でも僕はやらないから（笑）。
宮尾＞それは組織に属してて、監視員がいるかいないかの違いだと思うよ（笑）。
大貫＞組織に属すと縛りは強くなるけれど、そのかわりちゃんとトレーニングはできるのかもしれない。自分は自由だけど、自由の良さと悪さはやっぱりあると思います。僕はやるって決めたら徹底的にやるけれど、なかなか最近そのスイッチが重くて。錆びてるらしいんですよね。油をささないといけない。
宮尾＞僕がオイルになればいいんじゃない？
大貫＞そうそう。刺激もらってますよ。“やらなきゃ！”って。
最後に、舞台への意気込みをお聞かせください。
大貫＞最初はこのメンバーの中で僕が一番良かったってお客さんに言わせたいと思ってたけど、意識が少しずつ変わってきてて、“『クレメンティア』って何か良かったよね”って言わせたいと思いはじめてる。それぞれのジャンルの第一線を走ってる人間がひとつのステージに集まって、みんなでつくり上げていく。その作業がすごくしんどくて、すごく楽しい。こうやってクロスオーバーしていく舞台がもっと日本で増えていけばいいなと思う。シャネルとストラヴィンスキーが出会って生まれた何かがあるように、海外ではジャンルを超えたクロスオーバーが昔からあったけど、日本はないじゃないですか。最近はバレエとコンテンポラリーが歩み寄るような作品も増えてきたけれど、生の演奏と衣裳と演出と美術と……って、もっともっとさまざまな要素がクロスオーバーしていくような新しい形のカンパニーになっていけたらと思うし、そういう意識で本番を迎えていきたい。これは始まりであって終わりじゃないという気がしてる。だからこそ妥協なく向かいたいなって思います。宮尾＞クレメンティア（寛容の意）ではあるけれど、舞台上では舞台人としてあえて牙をむいて切磋していきたい。それで最終的に受け入れていければ、結果として高め合い、いいレベルの舞台になると思う。あと、いろいろなジャンルを知るチャンスだとも思っていて。例えばバレエダンサーの宮尾を観に来てくださったお客さまが、日本舞踊の良さだとか音楽の素晴らしさを発見することもできる。一度で5度おいしいステージです（笑）。さまざまなジャンルに触れる機会なので、是非観に来て欲しいですね。
