パティシエ、ブーランジェの技術は大量生産の技術

―― フランスで、パティスリーではなくレストランのパティシエになった理由は?

既製品を使ったモノ作りに未来はないと思ったからです。フランスのパティスリーも、実際に行ってみると既製の冷凍ピュレなどを使って簡易的になっていて、がっかりしたんです。レストランには旬のフルーツがフランス全土から集められていました。フレッシュなものでソルベやムースを作ったりしていたんです。
新進気鋭のシェフの考え方を、学生に提示していく

新進気鋭のシェフの考え方を、学生に提示していく

―― それは学校でも習った「本物を探求する」という理念が繋がったということですか。

そうです。ただすべてのものは、長所と短所があります。レストランのパティシエというのはいい食材を使えて華やかな感じだけれども、技術は何年やってもまったく身につきません。

―― その理由は。

パティシエの技術というものは大量生産の技術です。いかに大量においしく作れるかというのが、パン職人にも菓子職人にも必要とされることなので、レストランデセールを作れるようになったとしても、例えば日20万売る店を作ろうと思ったら、絶対にできない。だって、大量には作れないから。

そして、大量生産することは、基本の仕事ができていないとできない。よくみんな勘違いしてクラシックが基本の仕事だと思ってる。違うからね。クラシックは基本じゃなくて型。ひとつの手法です。じゃあ基本の仕事とは何かって言ったら、「早く」、「きれいに」、「おいしく」、「安全に」、そして「衛生面に考慮して」作ること。この5つをすべて備えた仕事が基本の仕事。ものの置き方ひとつとってもそうだよ。それを10年続けたらたぶん一流になれる。
既製品を使ったモノ作りに未来はない、という杉窪さん

既製品を使ったモノ作りに未来はない、という杉窪さん

―― 学生は紙切れ一枚に書かれたクラシックのレシピを学びます。そこにいろんな技術が入っているのを学ぼうとしています。このレシピがたまってくると自信になると思いますが、そこで勘違いしてはならないことは何でしょう。

クラシックっていうのは、その当時ベストだったものです。時代とともにベストは変化していきます。それを勉強するということは時系列を学ぶということだから、時代を経てどういうふうに変化してきたのかわかれば、未来がどう変化するかを予測することができる。だからクラシックに固執していると、多分未来に生き残れない。クラシックが駄目ということではなくて。