中国茶/おすすめの青茶・烏龍茶

香りの名前で選ぶ楽しみがある広東省の中国茶(2ページ目)

蒸し暑い雨の夜、どこからともなく漂う濃厚な甘いクチナシの香り。そんな花の香りを思わせる湯気を吸いこんで、琥珀色のお茶にそっとくちづけた瞬間、中国茶の虜になるかもしれません。様々な花や果物を連想させる香りを持つ鳳凰単叢(ほうおうたんそう)の中から今回は黄枝香(こうしこう)をご紹介いたします。

久永 佳子

執筆者:久永 佳子

お茶・中国茶ガイド


蒸し暑さを忘れさせるクチナシの香り

黄枝香

細長くよじれた褐色がかった黄枝香の茶葉はお湯を注ぐ前からいい香り

雨の夜道でまとわりつくような蒸し暑さをしばし忘れてしまうほどの芳醇な甘い香りにはっとさせられる、梅雨時期に咲く白いクチナシの花。正岡子規は「薄月夜花くちなしの匂ひけり」という句を詠んでいます。雨の滴でしっとりと潤った光沢のある純白の花びらは、徐々にクリーム色へと変化していきます。

そんなクチナシの香りを思わせるお茶が鳳凰単叢(ほうおうたんそう)黄枝香(こうしこう)。黄枝香は黄梔香ともいい、つまりクチナシの香りを表しています。黄枝香は、鳳凰単叢十大花蜜香型のひとつ。この他にも様々な香りの名前のついた鳳凰単叢があるので、茶名を見ているだけでも好きな香りが見つかりそうです。

茶葉にお湯を注ぎ、焙煎の甘い香りを封じ込めるように蓋をして淹れたお茶は淡い琥珀色。お湯を注いだ時の香りがどこに消えたのかと思うほど、がらりと表情を変え、美麗な山々の風景が脳裏をかすめるような、生命力に満ちた芳醇な香りに驚くこともしばしば。艶やかな琥珀色に満たされた茶杯を口元に近づけると、梅雨時期の夜道ではっとさせられた甘くやさしい香りがよみがえります。季節の香りを啜る至福のひとときは、イライラや疲れを緩和するのに一役かってくれることでしょう。

冷茶で楽しむ場合は、茶葉が十分に浸るくらいのお湯を注ぎ、数分置いて茶葉を開かせてから、水と氷を加えて一気に冷やします。お湯で淹れたものよりも、洋梨のようなフルーティーさや甘みが際立ち、するすると喉元を過ぎていく爽やかさに、ふーっと幸せなため息がもれそうです。

好きな香りで元気をチャージしよう

クチナシの花と黄枝香

クチナシの花と黄枝香

初夏のクチナシや秋のキンモクセイをはじめ、雨上がりの匂い、畳の匂い、食べ物の匂いなど、ふと感じた香りでイライラがすっと解消されたり、懐かしい気持ちになったりしたことはありませんか。香りは、脳の考える部分よりも先に、感じる部分に伝わることから、自律神経や免疫系のバランスを整え、リラックスさせる働きがあるとも言われています。

ご自身が心地良く感じる香りは、きっと疲れた心身を癒してくれることでしょう。心地良いと感じる香りは人それぞれ。自然の香りから命名された種類の豊富な鳳凰単叢を楽しんでみませんか。
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