マーケティング/家電マーケティングのプロが語るお得な家電との付き合い方

ヤマダ電機とイオンはなぜ同時に苦境に陥ったのか?(2ページ目)

家電最大手のヤマダ電機が地方や郊外店を中心にの46店舗の閉鎖を発表した。一方、小売最大手のイオンも苦戦を強いられている。両者に共通する課題とはなにか。マーケティング目線で解説します。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

ヤマダとイオンが復調するヒント

苦境にあるヤマダ電機とイオンは復活できるのだろうか。その鍵は「製品」にある。

マーケティングの基礎理論に4Pというものがある。Product、Price、Place、Promotionの頭文字を合わせたものだ 。Productは製品、Priceは価格、Placeは流通・店舗、Promotionは宣伝販促と考えてもらえば良い。実はヤマダ電機もイオンもProduct以外の3Pは競合と比べて相対的に優位にある。ヤマダ電機とイオンにとっての課題はProductだ。ヤマダ電機は競合と比べて安い印象が強く、実際に安い商品もあるのだが、やや旬が過ぎたものだったり、展示品在庫だったりすることも少なくない。その他の商品を見てみると、実は安くないという商品もあるのだ。一方のイオンは、PB(プライベートブランド)を中心に安い商品が多いのだが、競合と比較して、とりたてて質が高いということをメインコンセプトにしているわけではない。つまり、ヤマダ電機とイオンに共通する大きな課題とは、消費者が欲しいと思える商品を置けるかどうかにあるのだ。


セブンイレブンと日清食品の成功例が参考に

業界は変わるが参考例を紹介したい。コンビニ大手セブンイレブンはPBに力を入れている。それは低価格を追求するものばかりではない。日清食品へのPB依頼の際には、価格を気にせずNB(ナショナルブランド)よりも質の良いものを作って欲しいと伝えている。日清食品は相場よりも高い商品を開発しセブンのPBとして発売することになった。結果としてセブンイレブンにおける日清食品のシェアが高まっただけでなく、セブンイレブン向けの売り上げは10%増えたのだ。

圧倒的なPlace(販売店網)が確立されている販売店で販売する場合、宣伝費をかけず材料費に力を入れることで、より品質の良いものを提供することができる。今の消費者には、多少高くても話題性や魅力ある商品は一度は食べてみよう、試してみようというマインドを持つ人が多くいる。最初はトライアル的に試してみた消費者が、その品質の良さに納得し、リピーターになるという仕組みが生まれる。ヤマダ電機にしても、イオンにしても競合と比べてPlace(販売店網)は強い。つまり、セブンイレブンと同様、より質の高い商品を提供する仕組みを持てる可能性があるのだ。宣伝をしない分、魅力ある商品開発やラインナップに力を入れる。セブンイレブンと日清食品の成功例は、ヤマダ電機とイオンが復活をする上でのヒントになるのではないだろうか。

(※2015年6月2日【訂正】 2012年にヤマダ電機が子会社化したのはベスト電器でした。訂正いたします。)
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