企業のIT活用/システム導入事例

並ばずに精算できるセルフレジの時代に

お昼休み、社員食堂にできるのが精算を待つレジ前の長い列。食べたいものを自由に選ぶカフェテリア方式では、皿を見て、いくらの料理か判断し、次々とレジ入力するレジ担当者が必要です。価格が下がったICタグを活用して一瞬で精算を行うセルフレジが登場しています。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

セルフレジで社員食堂の混雑を改善

お昼休み、社員食堂にできるのは清算を待つ長い列

お昼休み、社員食堂にできるのは清算を待つ長い列

「くら寿司」のレーン上をまわっている皿の上にカバーがかかっていますが、ここにICタグがついています。このICタグで、いつお寿司がつくられたか分かり、設定時間を過ぎるとレーンから自動的にはずれ廃棄されます。我々の身の回りにICタグ(RF-IDタグ、電子タグ)が日常的に使われるようになりました。

お昼休み、皆が社員食堂へ一斉に行くため、精算を待つレジ前に長い列ができます。食べたいものを自由に選ぶカフェテリア方式では、皿を見て、いくらの料理か判断し、次々とレジ入力するレジ担当者が必要です。全料理の値段を覚えないといけないので、新人にはできません。作業にもたつくと、列がどんどん長くなります。これを解決するのがセルフレジ(オートレジ)。

愛知県・一宮市役所の庁舎建て替えに伴い、新しく登場したのが11階の食堂。一般にも開放されているので昼時は職員と市民で混みあいます。そこで導入されたのがオートレジ。全ての食器に金額ごとのICタグを貼り付け、精算を一瞬で終わらすことができます。しかも電子マネーTOICA(トイカ・JR東海)が使えるので、セルフレジ横にある決済端末にTOICAをかざせば支払も終了。すべて無人で行えます。

最近、ICカードの社員証がないと入れないビルが増え、また教室に入ったらICカード読み取り機に学生証をピッーと通さないと出席にならない大学が増えています。ICカードがあたりまえになりはじめましたので、電子マネーICカードにいれ、セルフレジと組み合わせれば、社員食堂や学生食堂では、現金なし無人決済がすぐできます。

ICタグの値段が下がったといっても、まだまだ1枚あたり60円ほどしますので、缶ジュースなどにつけるには高すぎます。社員食堂や学生食堂では皿の裏側に一回、ICタグを取り付けてしまえば洗浄や高温乾燥にも耐えられますので、ずっと使うことができます。これなら導入しても割が合います。

書店やアパレルでもセルフレジが登場

書店やアパレルでもセルフレジが登場

書店やアパレルでもセルフレジが登場

代官山や梅田の蔦屋書店にもセルフレジが導入されています。書籍、DVDなどにICタグを装着。購入する本をセルフレジの台に載せて、購入する本をチェックします。

支払方法は現金、クレジットカードのほか、Tポイントカードも使えます。精算が終わるとICタグに支払済み情報が書き込まれますので、セルフレジの横にある袋に入れて持ち帰ります。精算しないで持ち出せばアラームが鳴りますから万引き防止になります。

本屋は利幅が20%ほどしかない商売ですので、万引きされると本屋は大変。1000円の本を万引きされると、いつもの売上以外に5000円分の本をよけいに売らないと、損失を取り返せません。万引きのせいで、つぶれた書店もあるほどですので万引き防止はかかせません。

セルフレジ導入はアパレル業界にも拡がっています。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが2015年夏をめどに「ジーユー」300店舗にセルフレジを導入すると発表しました。

全品にICタグをつけるので、相当な数のICタグが必要となります。ジーユーの後、ユニクロにも導入を予定していますので、量産効果からますますICタグの価格が下がり、どんどんICタグが世の中に拡がるでしょう。

精算が終わったICタグを店員が回収しているとレジの混雑解消にはなりませんので、服につけたまま家に持ち帰り、お客さんがICタグがついた値札をはずすことになります。ICタグ読み取り装置が安くなって市中に出回ると、街中で誰が何をいくらで買ったかが把握できプライバシーの問題が発生します。そこで精算が終われば自動的にICタグから価格や商品情報を消してしまう技術開発が行われています。

POSレジの償却が終わらないとICタグ導入がすすまない

POSレジの償却が終わらないとICタグ導入がすすまない

POSレジの償却が終わらないとICタグ導入がすすまない

ユニクロを展開するファーストリテイリングは企画から製造、小売までを一貫して行えますので物流のどこかでICタグをつければセルフレジが導入できます。

規模が小さい小売では、なかなかこうはいきません。扱う商品にはJANコード(バーコード)がつけられていますので、メーカーや物流業者にJANコードに代わるICタグをつけてもらわなければなりません。ICタグとつける費用を誰が負担するんだという問題がでてきます。

JANコードとは → 物流を支えるバーコード

またお店ではバーコードを使うためにPOSレジとストアコントローラ(商品コードと価格がはいっている)というコンピュータを使い精算していますが、けっこうな投資額ですので、償却が終わらないと新しい投資はできません。ただ電車に乗るのに現金が当たり前だったのが、今やICカードの時代。小さなお店でもICタグを使うのが当たり前になっていくでしょう。

ICタグで棚卸などがラクチンに

ダンボールのガムテープを外さずに検品できる

ダンボールのガムテープを外さずに検品できる

入荷検品を行うのに一つずつバーコードリーダーを通さずとも、ICタグを導入すればダンボールのガムテープを外さずに検品できます。また商品が重なっている状態でもつるしてある状態でも、情報が読み取れますのでバックヤードでいちいち数えなくても棚卸が終わります。

販売員の勤務時間の30%は検品、棚卸に時間をとられていますので、その分、接客に時間を使うことができます。数はすぐ分かりますが、商品が汚れた、破損したなどは実際のモノを棚卸で確認しなければならないのは今と変わりません。ただ物流でよく問題となる情物不一致はICタグによって、かなり改善されます。

情物一致については → 在庫管理システムが使われない理由

ICタグを使ってお客さんの購買行動を把握することができます。商品が置いてある棚にICタグの読み取り装置を置いておけば、どの商品を手に取って、何分ぐらい検討して戻したかが分かります。次に何をとったかも分かります。

POSでは最終的に買ったものは分かりますが、比較検討した2番手や5番手の商品は分かりませんがICタグでは可能です。また靴のようにサイズや色がいろいろな商品ですと、欠品になっている商品がよくあります。ICタグがあればリアルタイムで欠品の状況が把握でき、売り損じを減らせます。

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