企業のIT活用/IT経営の基礎知識

ホスティング・ハウジングとは? 違いやメリット・デメリットを比較

ホスティングとハウジングの違いとは何なのでしょうか。企業が自社でサーバーを運用せず外部へアウトソーシングする、ホスティングとハウジングのケースが増えています。メリット・デメリット、IT戦略の基本となるその違いについて解説します。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

ホスティングとハウジングの違いとは? 外部サーバーを利用する企業

ハウジングとホスティングの違いとは?

地震に対する備えはできていますか?


皆さんの会社では自社内にサーバーをおいて運用されていますか。東日本大震災を引き合いに出すまでもなく、日本は大地震等の天災がいつどこで起きても不思議ではない状況です。大きな地震が発生した場合、サーバーをむきだしで置いているとラックが倒壊しサーバーは破壊されてしまいます。

自社内の業務にしかサーバーを使っていない場合、伝票処理に戻すなど他の手段で代替が可能ですが、ホームページを運用したり、電子商取引を行うなど外部に情報発信している場合はサービスを止められません。そこで自社内にサーバーを置かず、外部にアウトソーシングする方法を採用する企業が多くあります。アウトソーシングには色々なサービスがあります。ではどんなサービスがあるのかみてみましょう。大きく分けて「ホスティング」と「ハウジング」があります。

ホスティングサービス=レンタルサーバーのこと

ホスティングとはサービス事業者が用意したサーバーを貸し出すサービスのことで、サーバーの所有権は事業者側にあります。サーバーを丸ごと貸し出す「専用ホスティング」、1台のサーバーを複数のユーザーで共有する「共用ホスティング」があります。「共有ホスティング」は「シェアードホスティング」と呼ぶ場合もあります。丸ごと貸し出す専用ホスティングに比べ、共用ホスティングは費用が安くなります。ホスティングは「レンタルサーバー」とも呼びます。
 

ハウジングサービス=サーバーを預けるサービス

ハウジングとは顧客がサーバーなどの機材を用意してサービス事業者に預けるサービスです。自社で独自の機材を持ち込むので機材の選定や組み合わせは自由になります。サーバーの所有権は自社にあります。サービス事業者が提供するのはサーバーを置くスペースやバックボーン回線となります。ハウジングは「コロケーション(collocation)」サービスとも呼びます。

サービス事業者の規模は色々ありますが、規模が大きく、高スペックでスケールの大きなハウジングサービス提供事業者をデータセンターやIDC(インターネット・データセンター)と呼んでいます。
 

企業がハウジングやホスティングを使うメリットはコスト減

昔はアウトソーシングを受託するサービス事業者が存在せず自社でサーバーを管理・保守する必要があり、大変な手間やコストをかけて管理していました。インターネットが普及し、通信容量が増え、回線使用料が下がったこともありアウトソーシング事業が成り立つようになりました。2000年頃から数多くのサービス事業者が誕生しました。

ではアウトソーシングするメリットを考えてみましょう。自社サーバーで運用する場合、光ファイバーを申し込み、回線をひき、システムを立ち上げるのに時間がかかりますが、アウトシーシングの場合、素早く立ち上げることができます。

また自社サーバーの場合、サーバーを設置する場所を耐震構造にする必要がある、24時間365日稼働する場合は要員を配置する必要があるなど、コスト高になります。また日進月歩で性能が向上するサーバーの状況では自社サーバーの減価償却が終わる前に陳腐化することもあります。これらがアウトソーシングする上で避けられるのです。他のメリットとしては、
 
  • データのバックアップができる
  • 安定した高速回線を利用できる
  • 社外からは自社サーバーを運用しているようにみえる
  • 高度な専門知識が不要

といったことがあります。反対にアウトソーシングのデメリットは何かあるのでしょうか。みてみましょう。
 

企業がハウジングやホスティングを使うデメリットは業者リスク

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大手のデータセンターではサーバが故障しても別系統のサーバにすぐ切り替える


アウトソーシングサービス事業者が業績不振などで倒産してしまった場合、Webサービスが途切れてしまいます。ホスティングサービスでは月額数百円でサービスを提供する事業者が登場しています。事業者の事業基盤がしっかりしていればよいのですが、中には従業員2名ほどの会社でホスティングサービスを提供しているところもあり、倒産リスクが懸念されます。少し価格が高くても財務状況のよいサービス事業者を選ぶ必要があります。

また24時間365日稼働させていると、どうしてもハード的なエラーが発生します。大手のデータセンターではサーバーが故障しても別系統のサーバーにすぐ切り替えるなどサービスが継続されるようにしますが、小さなサービス事業者では二重化しておらず「ハードエラーが直るまではサービス休止」という場合もあります。
 

価格はオプションサービス次第

価格は色々な機能や付加サービスを要求すればするほど高くなります。サービス提供事業者にとっては耐震構造のビルを建てるコストや24時間365日体制で監視する要員配置を3交代制で行うなどコスト増となりサービスを提供する料金にはねかえります。一般的な付加サービスとしては下記があります。
 
  • トラブル時に連絡する
  • UPS(無停電装置)を備え、停電にも対応する
  • 耐震構造、防火構造になっている
  • 電力会社からの電源が二重化されている
  • 必要時にさらに高速な回線に切り替えたり、大容量のハードディスクへの移行ができる
  • 入退室管理等セキュリティがしっかりしている
 

ハウジング・ホスティング選択のポイントはSLAをよく見る!

自社にとってどこまでの機能が必要なのか見極めることが必要です。その中で安いサービス事業者を選択するのがよいでしょう。ただし実際に使ってみないと分からない点もあります。共有ホスティングを申し込んで最初は快適に使っていましたが共有するユーザが増えてレスポンスが低下することもあります。多くのサービス事業者はSLA(Service Level Agreement:サービスレベルの保証契約)を呈示しています。内容を確認して必要とするサービス保証となっているか確認をしましょう。

ただし注意が必要です。例えば「稼働率99.9%」と記載されていると、「すごいな」と思ってしまいますが、計算してみると「24時間×365日×0.1%=8.76時間」となります。つまり年に8時間は止まってしまうということです。自社にとって、この時間は許容範囲かどうか判断する必要があります。

SLAには他にもサーバのレスポンスタイム(応答時間)の保証、障害復旧時間の保証などがあります。ただ高いレベルのSLAを要求しますと価格も高くなりますので、バランスの優れた事業者を選ぶのがコツです。
 

サーバーのサービス事業者を選ぶポイント

ハウジングサービスの場合はサービス事業者の場所が問題となります。トラブル時にはユーザー企業がデータセンターへ駆けつける必要があり、自社に近いところにする必要があります。ホスティングサービスは自社が駆けつける必要は特にありませんので、場所はどこでもかまいませんが、バックボーン回線が自社が必要とするレベルか等は確認が必要です。

大切なサーバーを預けたり借りるところなので実際に現場を見せてもらうのもよいでしょう。しっかりとしたセキュリティ管理がなされているかを確認できます。ネット上の口コミ情報も参考となります。事業者の規模は大きければいい、というものでもなく、小さなサービス事業者でも無理をきいてもらったり小回りがきいたり等、大手にできない柔軟な対応をしてもらえることがあります。

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