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湯川麻美子『こうもり』インタビュー!(5ページ目)

この春上演を迎える『こうもり』を最後に、ダンサーを引退される新国立劇場バレエ団プリンシパルの湯川麻美子さん。新国立劇場が開場した1997年よりバレエ団に在籍し、18年間に渡りカンパニーを率いてきました。ここでは、ラストステージを控えた湯川さんにインタビュー。作品への想いと決断の理由、今後の展望をお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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舞台では山本隆之さんと一番多くパートナーを組んできました。

湯川>『こうもり』も四回目までは山本さんがパートナーで、『カルミナ・ブラーナ』の初演やナチョ・ドゥアト作品でも一緒に踊ってきました。彼はサポートも本当に上手だし、自分が自分がというよりは、いかに女性を美しく見せるかを大切にしてくれる。

最後の最後までそうですけど、舞台に出るのってものすごく緊張するんです。これは何十年キャリアを積んでも同じなんだなって思う。唯一楽しめたのは、子供のころの初舞台だけ(笑)。何かアクシデントが起こっても、このひとなら絶対にカバーしてくれると思えるひとでないと、あの怖い舞台には出ていけない。一瞬のタイミングのズレで大きな事故につながってしまうものなので、200%の信頼を寄せられる相手とじゃないと踊れない。

もちろんリハーサルは積んでるけれど、やっぱり生ものだから自分の感情が舞台上でどうなるかわからない。すごくバランスが取れたときは次を少し端折ることもある。音楽も生だし、そのときの興奮によって生じるものを上手くサポートしてくれるひと、気持よく踊らせてくれるひと。パートナーにはそれを一番に求めるところです。山本さんはまさにそうで、自分が下敷きになっても絶対に落とさないから、大丈夫だから、飛び込んでおいで!って伝えてくれる。男性にはそうであって欲しいと思う(笑)。そういう意味では、パートナーにも恵まれましたね。

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2010年5月「カルミナ・ブラーナ」 (撮影:瀬戸秀美) 


18年間舞台に立ってきて、アクシデントやハプニングに遭遇したことはありますか?

湯川>それはもう沢山あります。肋骨にひびが入ったことも4~5回ありますけど、休まず舞台に立ちました。ちょっとしたリフトやサポートで、すぐひびが入っちゃうんですよね。ひびが入ってもギブスをする訳にもいかないので、肋骨って結局どうしようもないんです。気休め程度にテーピングするだけ。もちろん安静にした方がいいんでしょうけど、代役がいないときもあったし、どうしても自分が踊りたいっていう気持ちが少々ムリをしてでも舞台に立たせてくれた気がします。

『カルメン』の初演時には肉離れを起こしたけれど、そのときも舞台に立ちました。喧嘩をするシーンのリハーサルでぐっと脚を踏みならしたら、ふくらはぎの筋断裂を起こして一歩も歩けない状態に。でもどうしても踊りたいからということで、振付家の石井潤先生に待っていただいて、本番の一週間くらい前からリハーサルを始めました。だから怪我により降板、というのはこの18年間一度もないですね。

ちょっとしたハプニングはもういろいろありますよ。リハーサルでは一回も起こらないことが、なぜか本番にだけ起こったりするんです。衣裳がひっかかったり、小道具を落としたり、装置の転換が上手くいかなかったり……。でも作品によっては女性がかがんで取ってはいけない時代背景もあるので、扇子を落としたとしても自分では取れない。そこはバレエ団のチームワークで、あたかもそう決まってたかのように男性がすっと取って手渡したり。

なるべくそういうことがないように注意を払っていても、起こることは起こる。いろいろなハプニングがあって毎回ドキドキしますけど、対処法もやっぱりキャリアを積むほど考えられるようになりましたね。

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2012年12月「シンデレラ」仙女(撮影:鹿摩隆司)


18年間新国立劇場バレエ団を離れずにいた理由、魅力とは?

湯川>例えばシーズン中に次のシーズンのラインナップが発表されると、また新しい演目が入ってきて、どんな作品だろう、どんな役がいただけるんだろうって思う。また古典を再演するときも、今度踊るときはこの前踊ったときよりもこうしたい、こんな風に見えたい、という繰り返しで、他のカンパニーで踊ってみたいと思ったこともなかったし、離れようと考えたことはなかったですね。常に、“次のシーズンも置いていただけますように!”と願いつつの18年でした。

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2006年「ポル・ヴォス・ムエロ」(撮影:瀬戸秀美)



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