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湯川麻美子『こうもり』インタビュー!(4ページ目)

この春上演を迎える『こうもり』を最後に、ダンサーを引退される新国立劇場バレエ団プリンシパルの湯川麻美子さん。新国立劇場が開場した1997年よりバレエ団に在籍し、18年間に渡りカンパニーを率いてきました。ここでは、ラストステージを控えた湯川さんにインタビュー。作品への想いと決断の理由、今後の展望をお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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バレエ団の設立時から18年間共に歩んできて、当初と今で変わったなと感じる部分はありますか?

湯川>『眠れる森の美女』で1stシーズンが始まったはいいけれど、その次のシーズンもバレエ団が存続していくのか、次のシーズンも自分は契約してもらえるのか、本当にどうなるかわからなかった。すごく不安定なところからのスタートでしたし、バレエ団としてシステムが軌道に乗るまで随分時間がかかったと思います。

私たちダンサーの意識もそう。バレエが好きだから舞台に立つのではなく、お客さまがチケット代を払ってくださってるから公演が成り立っていて、そこで果たすべき責任がある。自分の体調がどうであれ、プライベートがどうであれ、どれだけ練習を積んでどれだけの舞台をみせられるかが大切。本当の意味で、みんながプロだという意識を持つまでは、やっぱり時間がかかったような気がします。

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2011年10月「パゴダの王子」 (撮影:瀬戸秀美)


最も印象深い作品、想い入れのある役柄は何ですか?

湯川>『カルミナ・ブラーナ』のフォルトゥナです。(振付家の)デヴィッド・ビントレーさんともそのとき初めてお会いしました。最初にフォルトゥナの振りを一部覚えてオーディションをすることになり、そこで見せられたのが冒頭のハイヒールで登場するソロの映像。もう衝撃でした。もちろん曲は知ってたけれど、まさかああ出てくるとは思っていなかったので。“絶対これがやりたい!”って、見ただけで恋に落ちた。一目惚れ具合でいうと、フォルトナがナンバーワンですね。

これまで三回『カルミナ・ブラーナ』を踊らせていただきました。最後の公演はちょうどビントレーさんの芸術監督の任期が終わりに近づいていたころ。幕が開く前、そろそろ私ひとりがスタンバイしなきゃいけないっていうときになっても、ビントレーさんがまだ舞台の上にいるんです。何だろうと思ってたらとことこ寄ってきて、“あれから10年だね、きっとこれで最後だね”と言われて。芸術監督の任期の終わりと、私の年齢的なものもあったと思います。

10年前に出会ったフォルトナに私がどれだけ惚れ込んでいたかもビントレーさんが一番ご存じだし、私の個性、私が舞台で出したいものを一番理解してくださって、振付家としてそれを活かした作品をつくってくださった方でした。特に『アラジン』と『パゴダの王子』は最初の一歩からつくっていただけた、本当に大切な作品です。そういう振付家に出会えたこと、まして芸術監督としていてくださったのは、私にとって宝物のような時間でした。

プロとしてキャリアを積める期間って、人生で考えるとすごく短いと思うんです。その短い期間の中で、どういう振付家のどういう作品、どういう役に巡り会うか、というのがキャリアを左右する一番大きな決め手になる。私はここで、クラシックからコンテンポラリーに至るまで、世界中の振付家のいろいろな作品を踊るチャンスをいただけた。

本当に貴重な体験だったし楽しかったけど、もちろん大変でもありまた。新しい作品を上演する度に、それを習得しなきゃいけない。ミックス・プロのときなんて、同時に5演目練習したこともありました。午前はコンテンポラリーのリハーサルをやって、午後からはチューダー作品で90度以上手を上げないマイムの練習をしたり……。でも改めて振り返ると、本当に幸せなキャリアを積ませていただけたんだなって思うし、深く感謝しています。

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2014年4月「カルミナ・ブラーナ」(撮影:鹿摩隆司)



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