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湯川麻美子『こうもり』インタビュー!(3ページ目)

この春上演を迎える『こうもり』を最後に、ダンサーを引退される新国立劇場バレエ団プリンシパルの湯川麻美子さん。新国立劇場が開場した1997年よりバレエ団に在籍し、18年間に渡りカンパニーを率いてきました。ここでは、ラストステージを控えた湯川さんにインタビュー。作品への想いと決断の理由、今後の展望をお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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4月26日の舞台を最後にバレエ団を退団されます。
引退を決めた理由は何だったのでしょう。

湯川>もう十分踊ってきたな、っていう想いがあります。これまで踊ってきた演目を振り返ってみると、あれもやった、これもやった、苦労したっけ……なんて、本当にお腹いっぱいなくらい(笑)。

最初に主演させていただいた『こうもり』で最後を迎えるというのも、自分の中では運命的なものを感じます。役柄に対して思っているものだったり、役柄の内面を沢山のお客さまの前でさらけ出せるツールとして、子供のときに最初に出会ったのがバレエでした。そういう意味でも、自分の思うように身体が表現できる内に第一線を退きたい、それを舞台の上で出せる内にと思って引退を決めました。

本当に沢山踊らせていただいたし、実力以上のチャンスをいただいてきました。ずっと夢見ていたプロのダンサーになれて、それだけで生活していける環境に置いていただいた。多くの方が小さい頃からダンサーを目指して頑張っているけど、叶うのは本当にひと握り。特に日本人の場合はそう。どれだけ稽古をしても、結局いろいろな方との出会いがあって、チャンスをいただき、努力をして掴むことで、初めて成り立つものだと思う。

そういう意味でも沢山の出会いに恵まれたし、ダンサーとして幸運だったなと思います。そう思えるところまで置いていただいた。致命的な怪我や劇場側から戦力外通告をされたら諦めるしかないけれど、自分で退く時期を決めさせていただけたのは幸せだなって思います。

舞台が大好きなので、この2~3年は迷いながら過ごしていた部分もありました。こけら落としのときにオーディションを受けて入った同期のソリストたちの中で、一番最後まで残っていたことになります。ずっと一緒に頑張ってきたダンサーたちもいろいろな理由で退いて、今は客席で応援してくれている。

同期のダンサーが辞めていくのを見て、“どういう気持ちでそこに至るんだろう?”と考えていたけど、やっぱりそこは想像がつかないところでもあって。ただ実際その日が迫ってくると、本当に“ありがとうございました!”って気持ちしかないんだなって感じます。先生方や仲間たち、舞台を動かしてくださるスタッフさん全員に対してそう思う。みなさんがいないと劇場が成り立たないし、私が体験した喜びも苦しみも味わうことはできなかった。何よりお客さまがいないと公演を打つことができないし、ずっと応援してくださった方も沢山いらっしゃる。お客さまに本当に感謝です。

ph

2012年4月「Ag+G」(撮影:鹿摩隆司)



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