マーケティング/マーケティング事例

クラフトビールはなぜ人気?流行を支える4つの理由(2ページ目)

クラフトビールの勢いが止まらない。2015年、クラフトビールの大流行はまず間違いないといえるだろう。それを裏付ける理由は4つある。その理由とは何か。クラフトビール人気の秘密に触れながら、マーケティング視点で解説していきます。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

その3:ビール会社側の理由

ビール会社大手各社は、ここ数年、市場を活性化させる方策を見出せずにいる。その意味で、売れないビール業界にあって成長を続けるクラフトビールに、大手が注目するのは理にかなっている。特に若者層を取り込めるというのは大きい。ビール大手の主力製品のメイン購入者層が40~50代であるのに対して、クラフトビール(たとえば「僕ビール、君ビール。」)のメイン購入者層は20~30代だ。ビール会社大手にとってクラフトビールは、今まで失い続けてきた顧客層を取り戻す絶好の商材といえる。キリンとヤッホーブルーイングとの資本提携のみならず、2015年には、アサヒやサッポロなどの各社も次々とアクションを起していくかもしれない。

メリットはビール会社だけでなく、クラフトビール各社にもある。クラフトビール各社には大手のような資本力がない。そのため生産設備を増強することも、販路を拡大することも自社では難しい。 クラフトビールはビール市場全体には大きなインパクトを及ぼしていないが、ローソンの例から、導入店によって局地的には大手に負けない戦いができることが証明された。

クラフトビール各社は、大手と提携したり、買収されたりすることで、生産面と販路面での充実が見込める。そうすれば、マーケットでのプレゼンスもさらに上がるだろう。このように、ビール大手にとっても、クラフトビール各社にとっても、お互いが手を握ることは大きなメリットがあるのだ。


その4:クラフトビールに吹く追い風

クラフトビールは全国各地に存在する。つまりクラフトビールと日本の地方は密接な関係にある。それは大きな追い風だ。安倍政権が打ち出している「地方創生」方針。地方経済を活性化させるべく、国としてのバックアップが厚くなるだろう。

それだけではない、アベノミクスによる円安政策によって、日本人の志向は海外旅行から国内旅行にシフトしつつある。安くて、近くて、期間が短い、言わば「安・近・短」旅行志向が高まり、地方観光が増加することも、地方各地にあるクラフトビールには追い風だ。現地に行けば現地のものを食べたり、飲んだりしたいというのは自然な成り行きだ。また、デパートや都市部オープンスペースでの地方物産展やB-1グランプリといった「地方食」のイベントも増えている。このような場所でもクラフトビールが飲まれる機会は増加するはずだ。

そもそもビールの本場ドイツには都市ごとにさまざまなクラフトビールがある。それを楽しむことは、都市観光の際の楽しみの一つになっているほどだ。日本のクラフトビールもドイツと同じような魅力を帯びていくことだろう。飲む側(消費者)、作る側(ビール会社)、売る側(コンビニ)というマーケティングにおいて重要な3者すべてにメリットをもたらすクラフトビール。そしてマクロ的な視点でも日本経済の状況から追い風を受けることも確実だ。これだけの成功の要素が揃っていることから、自然な流れでブレイクすることがほぼ確実な状況だと言えるのだ。
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