ビール業界の現状

クラフトビールの盛り上がりで、業界はどうなる?

クラフトビールの盛り上がりで、業界はどうなる?

苦戦を強いられているビール業界。前年比割れが続いており、右肩下がりのトレンドをどのようにして食い止めるか、業界は試行錯誤している。そのなかで、2015年にビール業界が期待を寄せているものが二つある。一つはプレミアムビール、もう一つはクラフトビールだ。

特にクラフトビールに対する期待は高い。2014年9月、キリンビールは「よなよなエール」などユニークな商品を次々と製造・販売するクラフトビール最大手ヤッホーブルーイングと資本提携を行った。このヤッホーブルーイングは10年連続の増収増益で、利益率は二桁を記録している。

同社は2014年10月に、ローソン限定で「僕ビール、君ビール」を発売し、1ヶ月で3ヶ月分の販売予定数量を達成。話題をさらった。単月の売上高ではアサヒスーパードライに次ぐ第2位、キリンの一番搾りを上回った。しかし、実際には、ビール類(発泡酒・第3のビール含む)におけるクラフトビールのマーケットシェアはわずか0.5%しかない。マーケットシェアだけを取れば、キリン、アサヒを始めとするビール会社大手のビール事業には何の影響もないレベルと言っていいだろう。しかし、それでもビール業界が注目するのは、次に解説する4つの理由があるからだ。


1:消費者側の理由

まず一つ目の理由は「消費者側」にある。現状を見てみると、とりわけ若い人を中心にビール離れが加速している。居酒屋にいってもかつてのように「とりあえずビール」という言葉はなく、チューハイやソフトドリンクやワインなど個々人が好きなものを1杯目から頼んでいる。会社での飲み会に参加しない、友達とも居酒屋には行かないといった若者がそもそも増えているのだが、居酒屋に行ってもビールを飲まないという若者も増えている。

消費者のビール離れの原因はいろいろある。その根底にあるのは、時代とともに「とりあえずビール」といった掛け声がなくなり、積極的にビールを飲むといった空気感が醸成されなくなったことがだろう。酒を飲めるようになった二十歳の若者。かつては、先輩達にビールを飲まされ、苦くて美味しくないと思いながら、徐々にその味を好きになっていった人も少なくなかった。ところが、今はそうしたも機会も減った。ビールが苦手な人は、付き合いだからといってわざわざ苦いビールを飲まなくていいのだ。その点、クラフトビールの場合、苦みが少ないものが多い。この「味」の違いにより、ビールが苦手な人への間口は広がった。

もう一つあるのがSNS(ソーシャルメディア)の存在だ。若者をはじめ、多くの人たちが、心動かされたものや珍しいものに触れるたび、写真を撮ってSNSにアップしている。クラフトビールには数多くの種類があるため、そうしたアクションにはもってこいだ。SNSにアップしたくなる要素を含んでいる。SNSを通じ、従来のビールとは全く異なる多くの反応を得られるのがクラフトビールなのだ。

さらに「プチ贅沢」志向の高まりも大きい。豪華な飲食店に行くよりも、日常よりも少し贅沢な飲食店の方が若者の心を満足させる。「俺のフレンチ」などが流行したのも、この要素が大きい。クラフトビールは通常のビールやチューハイよりも高価なものがほとんど。クラフトビールを飲むということは、プチ贅沢気分を味わうということなのだ。


2:販売店側の理由

販売店側の理由とは、すなわちコンビニ側の理由と言い換えてもいいだろう。ここ数年、さまざまなアイデアを商品化してトレンドを作るコンビニに話題が集まっている。弁当・総菜・スイーツの充実、薬局の併設、カフェ化や低価格高品質コーヒーの販売ほか、その多様な展開は目を見張るものだ。

ところが実際の数字を見ると、コンビニの既存店売上高はセブンイレブンを除いて対前年比割れとなっている。つまり手を変え品を変え、顧客を呼び込もうとしているのだが、なかなか厳しい成果となっているのだ。

クラフトビールは、そこに現れた新星のような存在だ。冒頭でも述べたように、ローソンでの販売実績を見れば、コンビニ側としては大きな期待を寄せられる商品。事実、2014年12月にセブンイレブンもヤッホーブルーイングに問い合わせをしているほどだ。コンビニにしてみれば、クラフトビールは消費者に店まで足を向けてもらう大きなポテンシャルがあるのだ。そして、理由はそれだけではない。価格面での貢献も大きい。クラフトビールの価格は従来のビールより高いのだ。たとえば、Amazonでの価格比較にはなるが(2015年1月現在)、350ml24缶の価格比較では、アサヒスーパードライ 4406円、キリン一番搾り 4515円に対して、ヤッホーブルーイングの「月面画報」は 6912円。コンビニが、従来のビール類よりも客単価がアップできるクラフトビールに期待を寄せることは当然の成り行きなのだ。