災害避難訓練としての意味もあるキャンプの知識

阪神淡路大震災で倒壊した家屋

阪神淡路大震災から20年以上が経った。その教訓を生かして備えることは重要

阪神淡路大震災の当時、僕はアウトドア雑誌の編集長を務めていました。真冬に、なんの前触れもなく唐突に起きた自然災害。その猛威に国民が呆然と立ち尽くすなか、アウトドアの心得のある有志たちがさまざまな支援物資、アウトドアグッズを手にいち早く被災地を目指しました。僕の友人たちもアウトドア用の寝袋や燃料をザックに詰め込んで車ではいけない被災地にバイクを走らせました。

僕の雑誌でも緊急特集を組み、アウトドアスペシャリストや栄養学の専門家から話を聞き、記事を差し替えたことを今も鮮明に覚えています。普段の生活基盤のまったくない野外生活での衣食住のすべて、さらに緊急事態への備えは、まさに災害時のそれによく似ています。自然の中で楽しい日々を過ごすばかりではなく、災害避難訓練としての意味もあるキャンプ。家族ぐるみでバイタリティあふれる創意工夫と知恵を身につける、そういう視点からも、アウトドアライフを体験してみてることはとても意義があるのです。

そこで今回はそうしたアウトドアでの知恵のなかでもとくに不測の事態に役立つものをピックアップしてお届けします


新聞の保温力はすごい!

手持ちのウエアが不足したり、急に冷え込んだりすることもあります。対策として昔から登山者の間で知られているのが、一度クシャクシャにした新聞紙を胴体(肌着の上)に巻きつけること。インク汚れもありますが、そうも言っていられません。このときかならずクシャクシャにするのがポイント。空気の層をつくることで保温性が断然高くなるのです。新聞紙以外では段ボールを切ってベストのような形状にして羽織るのも保温防風両面で効果的です。


ゴミ袋でつくるポンチョ

簡易型の雨具、ウインドブレーカーとしては、大きなゴミ袋が使えます。それも頭を出す穴、手を出す穴を開けるだけ。頭部は別途カバーする必要はあります。また、腰をひもで縛れば風にも強く、動きやすくなります。小さな子どもはこれで十分ですが、さらにもう一枚使ってスカートのようなものをつくれば、大人でも全身カバーできます。防災袋にはなにかと役立つので必ず入れておきたいものです。


ポリ袋でつくる簡易長靴

足元の濡れは不快感のみならず、全身の冷えをもたらします。しかし、アウトドア活動の経験がない人は驚くほど足元が無防備。また、備えのないときに降り出した雨やぬかるみにはなかなか対応できないのも事実です。そんなときはポリ袋を上手に使いましょう。とはいっても靴の上からポリ袋を履くとすぐに穴があいてしまいますので、ポリ袋を靴下の上に履き、そのうえから靴を履くという方法があります。袋の上の方はテープなどでとめてください。もちろん靴はびしょ濡れになってしまいますが、足は快適に保てるのです。


あると便利!段ボールは快適万能素材

新聞紙とならんで、段ボールは優秀な保温断熱材。さらに、加工しやすく、若干の防水性もある、まさに万能素材です。目隠しや間仕切り、床に敷き詰め断熱材にする他、ガムテープでつなぎ合わせて箱をつくれば優秀な保温シェルターになります。冬山登山のテントが小さいことからもわかるように、小さなシェルターは人がいるだけでも暖かいのです。

段ボールの活用法は避難所での睡眠の質の向上にも役立ちます。詳しくは、「避難所でもしっかり眠るために……災害時の睡眠術」をご覧ください。


少ない水で洗い物をする方法

普段の台所とは違い、アウトドアでも災害時でも水は貴重です。そこで一番節約したいのが、食事をした後の食器を洗うときの水。おすすめは洗い物の前にペーパー類で拭き取る方法。最後にパンで食器を拭いて、食べてしまえばペーパーさえも節約。また阪神淡路大震災では、食器にラップをかけて使い、食後はラップを廃棄するという方法が有名になりました。


アルミ箔は万能キッチンツール

アルミ箔は重ねて火にかければフライパン代わりの調理器具になり、またお皿状にすれば食器になります。もちろん、食器や調理器具のフタやカバーにも。さらにアウトドアの世界では、焚き火の遮熱板(輻射熱で暖かさが増す)、クシャっとまとめてゴシゴシすればたわし代わり。ろうそくの後ろに立てれば反射して明るさが増す照明に。しばらく使用していなかった懐中電灯がいざというとき点灯しない!そんなときの電極修理にまで使える優れものなのです。


ポリ袋でご飯を炊く

水や燃料を節約し炊飯するアイデアです。耐熱性のあるポリプロピレン、保存用のジッパーつきポリ袋など(専用「炊飯袋」も売られています)に水と米を同量入れ、口をしっかり締め、水を入れた鍋に入れて20分程度炊きあげます。湧いたお湯は他の用途へ。なおジッパーつきポリ袋でも可能と言われますが、加熱不向きなので難がありますのでご注意を。


空き缶が飯ごうの代わりになる

火にかけられる食器がない場合、アルミの飲料缶(缶切りで上ぶたを全開に)を使う方法があります(他の素材の缶にはハンダづけなどで直火不向きな容器もあるので注意)。炊飯も可能で、アルミ箔を2枚重ねて缶に密着させ、フタにします。東日本大震災のときは、細く裂いた牛乳パックを燃料に使ってご飯をたく「サバイバルめし」が有名になりました。ただし、炊き上がりは火加減の調整が容易なキャンプ用コンロの方が断然いいので、燃料やコンロは用意しておくといいでしょう。

また、空き缶をストーブやランプにすることもできます。「空き缶で作る超軽量アルコールストーブがスゴイ 」「災害時に役立つアルミ缶非常用ランプの作り方」もあわせてご覧ください。

注意!レトルト食品の消費期限の落とし穴

日常の食事、そしてキャンプから非常食まで大活躍のレトルト食品。しかし、消費期限に差があることは案外知られていないのでは? メーカーや製法で多少の差はありますが、トレーに入って透明なフィルムでフタされているものは短く、中の見えない袋に入っているものはかなり長いというのがその傾向。防災袋の中身はときどきチェック。期限が近いものがあったら、せっかくの機会だと考えてアウトドアで実際に調理して試食を。そうして、経験を貯金しておきましょう。


じつは寒冷地では使えないカセットコンロを使うには?

普段の鍋物などに使うカセットコンロは基本的に室内使用が前提なので、燃料ガスボンベの圧が低く、寒冷地、さらに風が吹くとボンベが冷えてしまい、火力が大幅にダウンします。はっきり言って冬場のアウトドアでは役に立ちません。しかし、金属製レンジガードなどの不燃性の板でまわりを囲うことで、ある程度の改善は見込めます。レンジガード等がない場合は木の板をアルミ箔で巻いてガードするなどの工夫を。


3日分は備蓄しておきたい保存食は食べ慣れたものを

新型インフルエンザ騒動当時も言われていましたが、3日分程度の食料備蓄が推奨されています。水も加えると(ひとり1日2リットル)かなりの量ですが、用意したいものです。これが各家庭にあったならば、買い占めパニックなど起こさずに済んだでしょう。また、レンジ食品は電気なしでは調理できませんので避ける方が無難です。緊急時用保存食はなるべく普段食べ慣れているものにしましょう。精神的に不安定で食が進まないとなれば、食べ慣れていないものは、なおさらのどを通りませんから。


備蓄食材は子どもやお年寄りに心配りを

噛む力が弱いお年寄りや小さな子どもには、大人と同じ食事というのは難しいかもしれません。また緊急時には精神的にも、あまり食が進まないことが考えられます。そこで、保存食にプラスして、カロリー補給できる甘いフルーツの缶詰や、お湯だけでつくれるインスタントのスープを用意しておきましょう。


水道水を空のペットボトルで長期間保存する方法

ペットボトル

普通の水道水も入れ方に工夫すれば長期保存可能

水はどの程度保存できるか? というと、水道水の場合、塩素の添加や滅菌処理で意外に持ちます。東京都はペットボトル等に空気を入れないように密閉した場合、常温で3日、冷蔵庫で7日、沸かして使うならさらに数日大丈夫と発表しています。また「道の駅」などで汲める名水も一部では少量塩素を添加して保存性を高めています。コツはペットボトルの口すりきりまで水をしっかりと入れてキャップをすること。


単3電池を単2にして使う裏技

サイズの合わない電池は無意味、ではありません。単3電池を単1や単2にして使えるアダプタが電器店や100円ショップなどでも売られています。もっとも、単2電池と単3電池は長さが同じですから、熱を持つ場合があるため緊急時限定となりますが、単三電池に紙や絶縁テープを巻いて太くすれば単2として使用可能です。


エマージェンシーシートは使い方を間違えると暖かくない!

エマージェンシーブランケット

コンパクトに収納できて保温性のあるエマージェンシーブランケットも使用法を間違うと効果は半減

コンパクトに畳める薄いアルミ蒸着フィルムを保温に使う「エマージェンシー(レスキュー)シート」。最近では100円ショップでも売られるようになり、一般にも知られるようになってきましたが、体を包む方法で暖かさが違います。素材そのものに保温力はなく、体熱を反射しているだけなので、体に密着させてしまうとむしろ寒いのです。空気を含むように、ふわっと羽織るようにするのがコツです。


少ない水で洗濯する意外な方法

災害時はもちろんのこと、一部のキャンプ場を除き、野外生活では洗濯機など望めません。そんなときに便利なのが、ジッパー等で密閉できるポリ袋。洗濯物と洗剤、水を入れて「もみ洗い」します。ただし脱水は望めないので、下着や靴下向き。厚手のコットンなど水を含みすぎる衣類は乾くまで時間がかかります。


常設簡易トイレをつくってみる

一番の心配事といえばトイレ。トイレのない場所に簡易トイレを作る方法としては、座面を外したイスとバケツを使ってつくるのがおすすめです。基本はバケツにポリ袋を広げて、汚物を毎回処理することになりますが、抗菌凝固剤を使う衛生的な「携帯トイレ」も販売されています。イスのフレームにタオルを巻いたり、シートや着替え用テントで目隠しをすれば一時的に用を足すことは可能です。


車にいつも積んでおきたいものはなに?

車の補修部品=電球やヒューズ、簡単な工具は当然ですが、夜間の故障時に備えて明るい懐中電灯も必須。毛布、やや太いロープ10mほど、Tシャツやパンツ(トラベル用の紙パンツが便利)程度の着替え、雨具、ペットボトルの水、といったものはいつも積んでおけばレジャー先でのトラブルから緊急避難まで、きっと役立ちます。



備えあれば憂いなし。日々の心構えと装備。アウトドアでの経験を積むことで少しでも装備に慣れておくことの重要性を感じていただければ幸いです。(記事協力=さくま功)


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