2016年は例年以上?もしクマに出会ってしまったら

2016年の5月下旬から6月にかけて秋田県鹿角市から青森県境付近でツキノワグマによるとみられる人身被害事故が相次いでいます。射殺されたクマの体内からは人体の一部が見つかっており、現地周辺では「人間の味を覚えたクマが新たに人を襲う可能性がある」として警戒感を強めています。

このように今年は全国で例年以上にクマの目撃情報が寄せられており、東北はじめ各地で警戒態勢を強めています。これからの季節、キャンパーたちの食糧を狙って、キャンプ場でもクマが出没しないとは限りません。そこで今回はクマに出合わないために、そしてもしも出合ってしまったらどうするか?についてまとめてみました。

キャンプ場でクマに遭遇

以前、私がアウトドア雑誌の編集者をしていたとき、秋田県のクマが多数出没するエリアで数日キャンプを張ったことがありました。そこは山ブドウなどの樹木や空き家にクマの爪痕が多数残っている場所。その日は川を挟んだ向こう側になんとなく野生の気配がしており、夜、就寝前には地元ガイドの方のアドバイスに従いテントサイトで爆竹を鳴らし人間の存在を周囲に知らせて寝袋に入ったのです。

クマの親子

沢沿いはクマに出合う確率が高い

明け方、僕とカメラマンが寝るテントに泣きながらモデルの女の子が逃げ込んできました「クマ、クマ、クマ~~」。

悲鳴にもならない声とひきつった顔は蒼白。一瞬で事態を飲み込んだ我々はテントで息をひそめました。5分、10分、気配は感じられません。

このままこうしていても事態は変わらないと思った僕は意を決してテントの外へ。すでに外をうろついていたと思われる野生動物は姿を消していました。モデルの子の話によると明け方、低い唸り声とともに彼女のテントのまわりを獣がうろうろとする気配が。恐ろしくて、声をあげることもテントのファスナーをあけることもできなかった彼女はしばらく息をひそめたあと、獣の気配が遠くなった瞬間を狙ってナイフでテントを切り裂いてわれわれのもとに駆け込んでいたというわけです。

当り前のことですが、キャンプなどアウトドアでの遊びは野生動物のテリトリーにわれわれのほうが足を踏み込んでいくわけですから、遭遇する確率はぐっと上がるのは間違いありません。とりわけ餌不足の年の場合はキャンパーたちの持ちこんだ食糧の匂いは飢えた彼らをおびき寄せるには十分すぎるでしょう。

少し前になりますが世界的なクライマー山野井泰史さんが東京都奥多摩でクマと遭遇、格闘した事件は世間を驚かせましたが、その壮絶な体験は人里近くに現れたクマの危険性を物語っています。山野井さんの事件については、こちらの記事に詳しく書かれています。


なぜクマは危険を犯してまで人里に現れるのか

まずはよく誤解されていますが、本州に生息するツキノワグマの主食は木の実類。決して肉食獣ではありません。しかし動物の死体なども餌としているようなので草食というわけではなくて雑食です。死肉を食べるということなのでクマと出合ったとき死んだふりをするというのはあまり効果がないといえるかもしれません。

もともと日本の集落は集落を取り囲むようにしてまわりに広葉樹が茂る里山があり、さらにその周辺にクマが生息する山林がありました。集落の人は里山を利用していたので、下草刈りや伐採など適度に手が入り、そこが人間とクマのテリトリーの緩衝帯になっていたのです。ところが近年は里山に手が入らず荒れ放題になりその周辺の山林との境界がボーダーレスに。さらに集落も過疎化が進んでいるために人間の気配が希薄に。つまりクマにとって人間とのテリトリーの境界が非常にあいまいになってしまっているのです。そのためエサを求めて知らず、知らずに農作物などがある集落エリアに現れることが増えてきているのです。本来、クマはとても臆病で自ら危険を冒してまで人に近付いてこないのです。


キャンプのときは食料の保管に注意!

以前、アラスカの川をゴムボートで下りながらキャンプしたときには、ツアーの前日にコーディネーター兼ガイドと「クマに襲われて死んでも一切文句はいいません。補償も要求しません」という念書を交わしました。ま、それくらいアウトドアで遊ぶときは覚悟しろよ!というわけなのですが、日本のオートキャンプ場でファミリーキャンプを楽しむときにはそこまでナーバスになる必要はないでしょう。

今回、この記事を書くにあたり調査した限りでは、山菜取りや登山、農作業中にクマの被害にあっている人は多いものの、キャンプ場で被害にあった例は見られませんでした。しかし、クマがキャンプ場近辺に出没したという例は他数あるので、そういう場所を避けるのがいちばんの防衛策。

キャンプ地として選ぶ場所も沢沿いやササの生い茂った薮の側はクマが好む場所のためとくに注意が必要です。

クマの写真

日本に生息する最大の猛獣がクマ

次にこれはクマに限ったことではりませんが、食料や残飯などの始末をきちんとすること。できればテントサイトと距離のあるとこで保管できればベストです。前述した秋田でキャンプしたときも食料やゴミはテント地からぐっと離して駐車したクルマの中に保管しました。クマがよく出る地域のキャンプ場ではそいう管理用の場所を設けているところもあるようです。

そのほか、できるだけ単独行動は避け、大勢でいることでクマに人間の存在を気付かせておくのも有効です。そのほか犬を連れいていく(アラスカの現地ガイドなどは猟犬を連れている)というのも効果的ですが訓練を受けてない普通の犬ではその効果のほどは期待できません。山道に入るときにクマ鈴をつける、棒でガンガンたらいなどをたたきながら歩いて騒ぐという方法も推奨されていますが、相手は野生です。どれも絶対確実とは言いきれません。


もし不運にもクマに出合ったなら

2014年の4月に北海道で山菜取りをしていた女性がヒグマに襲われ、同行の女性がナタで一撃して撃退したというニュースがありましたが、突然の出来事に対処して勇敢に戦えるのというのは希有な例。では、もしも運悪く鉢合せになってしまったらどうすればいいのでしょうか。

環境省が推奨する対処法は下記の通り
  • まず遠くにいるクマにきづいたときは、あわてず、落ち着いてその場から離れること。
  • クマを驚かせるような大声を出したり、フラッシュをたいたりしないこと。
  • 近くにクマがいたときはクマに背をむけず、おちついてゆっくりとクマを見ながら後づさりしながらその場を離れること(背をむけるとクマは一気に追いかけてくる習性があるそうです。その速度時速50キロ!! 絶対に逃げ切れませんね)。
  • 至近距離で出会ってしまったら、あわてず(といっても無理だと思いますが)急な動作で驚いて襲ってくることがあるので、冷静にクマがその場をさってから離れるようにする。
  • 襲われたときは両手で頭をガードする(過去に襲われて生き延びた人の例では、後頭部を腕でガードしてダンゴムシのように背を丸めて九死に一生を得たケースが見受けられるようです)。
  • 食料などを携帯している場合は荷物などをその場に置くこと(クマの興味がそちらにうつりそのすきに逃げられることも)。

襲ってきた場合は覚悟を決めて戦うしかないわけですが、前出の女性のようにナタなどの武器やクマ撃退用のスプレーを持って入ればそれを使って、急所である鼻先めがけて叩きつける、もしくは発射する。これで生還した例も多数あります。

今回の秋田での事件のように人間をエサと認識したクマにとっては、クマ除けの定番と言われる「クマ鈴」や「爆竹」はそこにエサがいるという合図になってしまい、かえってクマを呼び寄せる危険があると警鐘を鳴らす専門家もいます。なのでこれまで有効とされていた対処法も絶対ではないと心得ましょう。

ともかく、まずは出合わないのがいちばんです。キャンプに出かける前には目的地周辺のクマ目撃情報やニュースを頻繁にチェック(現在だけでなく過去に遡って調べること)して、危険な地域は避けるようにする。それにまさる策はないと言えるでしょう。

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