中古一戸建て成約件数はマンションの5分の一!?
販売力で定評のあるN不動産の営業マン曰く、「マンション事業部から戸建て事業部に異動して実感したことは<日本人は本当に一戸建てが好き>」。窓の多い通風に優れた家は、日本の風土気候に合っているのだろう。ファミリーであれば音や振動の心配もいらない。しかしながら、東京のような都市部に限ってみると、中古市場においてはマンションが圧倒している。成約件数(2013年)で比較するとマンション17,388件に対し、一戸建て3,538件(グラフ参照)。マンションの5分の一程しか流通していない。
マンションと一戸建てを並行して探す人も少なくない。予算が高まるほどその傾向は強く、「種別よりも物件自体の魅力」を優先する。そもそも市場ストックはマンション約103万戸に対し、一戸建てが約150万戸(総務省、東日本流通機構2008年データを元にリビタ作成資料より)。潜在的な数量では一戸建てが1.5倍あるにもかかわらず、流通量に大きな開きがあるのは何故だろう。
不具合、品質に対する不安が大きい!?
次のグラフは、中古住宅を検討しながらも新築マンションを購入した人のアンケート結果である。「新築のほうが気持ちが良いから」(63.9)が多数占めるが、「隠れた不具合が心配」(24.7)、「耐震性・断熱性など品質が低そう」(22)、「設備の老朽化が懸念」(22.4)、「設備や広さが不満」(18)など劣化や確認しずらい品質に対する漠然とした不安の多いことがわかる。
加えて、一戸建ての場合は取引上最も重要な作業のひとつ「敷地境界点の確認」が欠かせない。区分(マンション)では割愛できるチェックポイントが多く、またそれらが専門的であることが一戸建て中古市場の拡大を阻んでいるものと思われる。潜在需要の顕在化を図るには、こうした買い手の不安の払しょくが不可欠だ。
住宅市場は「フローからストックへ」
戦後日本の住宅政策は、公庫、公営、公団の3本柱であった。量を追い、融資の充実化を図った。持家促進は経済全体に対する波及も大きく、着工戸数はスローガンのごとく扱われた。新築住宅の数が景気の勢いを象徴するかのように。しかし、成熟社会へ移行するにしたがい、方針転換が迫られた。客観的指標を設け(2000年施行『品確法』)、「量から質」を宣言(2006年施行『住生活基本法』)、「フローからストックへ」施策が具現していく(2008年施行『長期優良住宅』)。
中古住宅のローン控除適用条件の見直しは画期的ともいえる。築年数で区切っていたものを「耐震性」など条件がそろえば活用できるよう改善されたことはとても意義深い。後は顧客の不安を拭う検討フローが整えられるかどうか。新築特化ともいえるこれまでのバリューチェーンでは容易ではないが、業界では新たな試みがはじまっている。次の記事でその事例を紹介したい。
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