幻の香料『キフィ』とは
幻の香料キフィ
キフィについての処方が残されていた、エドフ神殿の壁画
古代エジプトでは、香りは「甦り=再生」に繋がると考えられており、香料は、古代エジプト人にとって、欠くことの出来ないアイテムとして、主に神殿で焚かれていたそうです。
その為、中東からヨーロッパへ運ばれる香料やスパイス等は、黄金以上の貴重品として扱われていました。
心を落ち着かせる香り『キフィ』
キフィに使用されていた香料の1つ、ミルラ
1日に3つの香りが使われていた理由があります。
日の出に焚かれていたフランキンセンスは、太陽神ラーの汗が固まったものと信じられ、フランキンセンスを燃やして立ち上る薫香は、魂をラーのいる天へと連れて行ってくれると信じられていたそうです。
正午に焚かれていたミルラは、太陽神ラーの涙から生まれるとされ、エジプトの不死鳥「ベヌウ」は、500年に一度生まれ変わる際に、ミルラでできた卵型の容器を作り、そこに死んだばかりの親鳥の亡骸を収めてヘリオポリスまで運び、ラーの神殿で火葬にしたと言われており、ミルラとラーは深く関わるものとして信じられていました。
日没に焚かれていたキフィには、心を落ちつかせる働きがあると言われ、ファラオ(王)や高僧が瞑想等の際に使用したり、ミイラを作る時にも利用されていたとの事。また、寝つきを良くするため、悪魔が寝室に入らないようにと、歴代のファラオ達も使用していたそうです。
※キフィというネーミングは、「聖なる煙」すなわち、悪魔が寝室に入らないようにという意味で付けられたそうです。
キフィの処方箋
キフィについての処方が残されていた、エドフ神殿
そして、エドフ神殿の壁画に記されていたキフィ。
更には、古代エジプトの神官であったマネトが記したキフィや、ラムセス3世が使っていたといわれているキフィなど。
エジプトへ行った際に、いくつかの処方を目にしたのですが、その時代のファラオ(王様)によって、処方も異なります。
代表的なキフィの、主な調合香料は、ショウブ、シナモン、ペパーミント、没薬、レモングラス、アカシア、レーズン、ヘンナ、ジュニパー、ピスタチオ、カシア桂皮、松脂、カシア、オレンジ、バラ、蜂蜜、ワインなど。
古書には、詳しい処方や作り方も書いてあったのですが、香料同士をブレンドするというよりは、薬を処方する。と言うイメージに受け取れました。
また、キフィは別名「神々を迎える香水」と呼ばれ、眠りを誘う香として焚いたり、薬として服用したりなどしていたと記述が残っています。
【関連記事】