リーダーシップ/リーダーシップの基本知識

リーダーシップに必要な「納得と同調」とは(2ページ目)

「リーダーシップの旅 見えないものを見る」はリーダーシップ研究および実践の第一人者である神戸大学の金井壽宏氏とアイ・エス・エル(ISL)理事長の野田智義氏が、2日間の対談を行い、それを素材として本にしたものです。要素還元主義ではなく、結果として、現象としてのリーダーシップ論であることがユニークなところです。

藤田 聰

執筆者:藤田 聰

キャリアプラン・リーダーシップガイド


リード・ザ・セルフから、次にピープル、そしてソサエティーへ

本では、自分の夢が他者の夢になる共振関係を通して、一緒に旅をする仲間が出現すると示唆しています。こうした「フォロワー」ができることで、「ひとり旅」をしていた者が、結果として「リーダー」となるのです。これを著者は、「リード・ザ・セルフ」から「リード・ザ・ピープル」への移行と呼んでいます。この移行は、「リーダーシップの旅」の最も重要な転換点のひとつになるのだと思います。

セルフからピープル、そしてソサエティーとリードする対象は変化していく

セルフからピープル、そしてソサエティーとリードする対象は変化していく

「リード・ザ・ピープル」への転換点でリーダーが発揮する力を「構想力」「実現力」「意志力」「基軸力」の4つで説明しています。しかし、そうした力を簡単に習得することはできません。なぜなら、リーダーシップは経験を通して身につけるものだからです。これは、「リーダーだけがリーダーを育てられる」という観点と一対となっています。経験によって到達した境地の伝承は一筋縄ではいきません。

ここでのリーダーシップ論は、「リード・ザ・ピープル」を経て、最後に「リード・ザ・ソサエティ」の段階を迎えます。それは、リーダーの内面において「利己」と「利他」の境界が消えたときに到達する段階であることが暗示されます。

健全な社会性を持ったリーダーだけが、真の意味で「リード・ザ・ソサエティ」を許されます。そのとき、フォロワーたちもまた、それぞれの「ひとり旅」に歩み出すのです。誰しもが「リード・ザ・セルフ」をできる社会を創れたとき、「リーダー」と「フォロワー」の境界も消え、現代社会を覆う「孤独」の内実も変容するでしょう。「リーダーシップの旅」の本質は、社会への「恩返し」にあるのかもしれません。

「リーダーシップは1人称の長い旅」という気付きを与えることでしょう。リーダーシップの本質が分かっていなかったことに気付かせてくれます。会社という上下関係のもとで人がついてくるのであれば疑似のリーダーですが、組織がなくても「この人についていきたい」と思わせられるようなリーダーになろうと、考えを改めさせる貴重な本だと思います。

「命令と服従」をベースとしたリーダーではなく、「納得と同調」をベースとしたリーダーが今後は持てはやされることでしょう。

取り上げた文献:
「リーダーシップの旅 見えないものを見る」  



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