「カワイイ」と「楽しい」がキーワード
ジェルボールが単に売れた洗剤ではなく、トレンドにまでなった理由は2つある。一つ目は”カワイイ”、二つ目は”楽しい”だ。それはジェルボール洗剤がプニプニしていて直感的にカワイイことだ。単純だが、これは重要だ。ジェルボールの他の例として、ルンバに代表されるような掃除機ロボットがある。掃除機ロボットは勝手に掃除をしてくれるという点で、掃除の手間を解消してくれるというメリットがある。しかし、それだけではない。ロボットが掃除をしている姿がかわいくて、楽しいという人も多いのだ。ユーザーの中には、ロボットに名前をつけている人すらいる。
ヒットランキングで第7位に入ったTSUM TSUM。ディズニーのキャラクターの顔が正方形の形になったパズドラのようなアプリだ。2014年に入り、電車内でスマホを操作している人が増えた。特にガラケーからスマホに変えた消費者は増え、その多くはゲームを楽しんでいる。そうしたなか、とりわけ女性からの支持が高いゲームがTSUM TSUMだ。いまや女性のスマホユーザーにとって、マストアプリとなった感すらある。このTSUM TSUMも、デフォルメされたディズニーキャラクターの「カワイイ」という要素がうけているのだ。そもそもこの「カワイイ」という要素は、女性を発火点にしたブームにおいては必ず押さえておくべきポイントだ。ディズニー、サンリオなど例を挙げ始めればキリがない。
また、ここ数年のブームである「ゆるキャラ」もまさにそういう要素を反映しているだろう。ふなっしーも、くまモンが、リアルなキャラだったらうけないのだ。二頭身、三頭身だから「カワイイ」と支持されるのである。
日常にいかにして楽しさを加えるか
2014年、アベノミクスによって輸出を主業務にしている大企業の業績は上がった。それに伴い日経平均株価も上がった。しかし、そうした恩恵を被ることが少ない多くの人達にとっては、生活が必ずしも良くなったとは言えない面がある。生活費を切り詰める努力をし、将来に備えて出来るだけ貯蓄する一方、派手な楽しみ方ではなく、どうやって毎日の生活を楽しいものにするかがポイントになった。例えば、地方でイオンが流行った理由の一つはそこにある。イオンに行けば何でも揃っているという利便性もあるが、わざわざ東京や都市部に出ずに、イオンで楽しもうという消費者意識の変化も大きいのだ。
生活者にとって、ずっと我慢することは難しい。どこかで息抜きし、楽しむことが必要だ。それが、日常生活における楽しさの発見だ。洗濯は嫌いだけれど、ジェルボールは楽しいという感覚を持っている人は少なくない。掃除ロボットも同じで、掃除は面倒くさいけれど、ロボットがやってくれるのは楽しいものだ。コーヒーや抹茶のエスプレッソマシンが流行ったのも同じだといえる。外食費を控え、派手な遊びは控えるが、家でなら少し贅沢をして楽しんでも良いだろうということだ。釜タイプの炊飯器が流行ったのも、ただ米を炊くのではなく、少し豪華に美味しい米を炊くことが楽しいのだ。
そこに「日常の中の楽しさ」があるかどうか。2014年のヒット商品を語る上で、これが重要なポイントだったといえるだろう。