「虎ノ門」地名の由来
徳川将軍は、江戸城のまわりに二重の郭(くるわ)を築いてこれを防御の要とした。内郭、外郭と呼ばれる城壁である。それぞれ複数の門を設け、人の出入りを管理したわけだ。これが現在の内堀通りと外堀通り、環状1号線ならびに2号線の原型となった。江戸築城は、古来東アジアから伝わる都市形成の風水の一種「四神相応」にならうものである。「四神相応」とは東に青竜、南に朱雀、西に白虎、北に玄武の四神にかなう選地思想をいう。具体的な地勢としては東が川、南が池または海、西に大道、北に山。「江戸東京学事典」(三省堂発行)においては以下のように記されている。
さて、この「右(西)の大道」は東海道を指すという。したがって、白虎からとって外郭の御門を「虎ノ門」と名付けた。場所は、今の文化庁の東隣辺りにあったようだ。地下鉄「虎ノ門」駅構内からは、現存する城壁(一部)を間近にみることができる。「およそ此江戸城、天下の城の格に叶い、その土地は四神相応に相叶えり。まず前は地面打開き、商売の便りよき下町の賑わいは、前朱雀に習い、人の群り集る常磐橋、また竜の口の落口潔きは、左青竜の流れを表し、往還の通路は品川まで打続き、右白虎を表して虎門あり、うしろは山の手に続き、玄武の勢いあり…」(『柳営秘鑑』)
アジアヘッドクオーター構想を実感する「虎ノ門ヒルズ」開業
本年6月11日「虎ノ門ヒルズ」が開業した。オフィス、店舗、住宅(37~46階:172戸)、ホテル(「アンダーズ東京」)からなる52階建ての超高層複合タワー。地上247mは「ミッドタウン・タワー」(約248m)に次ぐ高さとなる。最大のトピックは、環状2号線(一部新橋・虎ノ門間、通称「新虎通り」2014年3月29日開通)がビルの地下を通過していること。同線は2016年(予定)には汐留から「築地大橋」を経由して湾岸地区へ。いずれ羽田空港と都心を約20分で繋ぐ大動脈となる。京都に向かう大道の起点は400年の時を経て、世界に開く玄関口へと生まれ変わったわけだ。アジアヘッドクオーター構想の具現のひとつともいえる。
最新鋭の技術を駆使し、時代の先進性を読み取って建築された話題の建物。その住居フロア「虎ノ門ヒルズレジデンス」(森ビル)はどのような空間なのか。この度、なかでも高層階における一部リフォームを施した住戸を取材した。次のページでその詳細を解説したい。