「白金台5丁目」という場所
以前ある雑誌の企画で「住みたい街はどこか?」と聞かれたことがある。駅や街の名前ではなく、もう少し具体的に町名まで挙げよということであった。そんなとき、まっさきに頭に浮かぶのは2種類の景色。ひとつが南方向が下り傾斜の高台地、もうひとつは南面が広大な緑と隣接する立地である。前者でいえば一番町(千代田区)や市ヶ谷砂土原3丁目(新宿区)、元麻布2丁目(港区)、自由が丘1~3丁目(目黒区)などが。後者は「千鳥が淵」の三番町(千代田区)、「有栖川公園」の南麻布5丁目(港区)、そして「国立自然教育園」の白金台5丁目(港区)などが候補に挙がろうか。
なかでも都心にありながら雑踏とは無縁で、一般に無料公開されない「国立自然教育園」と隣接する白金台5丁目は、その閑静さにおいて群を抜く。大名屋敷の庭園にはじまり皇室御料地として宮内省管轄となった後、天然記念物・史跡に指定。園内はまるで手つかずの原始林のようで「自然豊かな」という表現がこれほど適した場所もない。そして、その北側に隣接するマンションが「芝白金ヒルズ」(港区白金台5丁目)である。
新耐震ヴィンテージマンション「芝白金ヒルズ」
「芝白金ヒルズ」の交通アクセスは東京メトロ南北線「白金台」駅から徒歩6分。1985年築。分譲主は三菱地所、施工は前田建設工業。地上7階建て、総戸数21戸。専有面積150平米超を中心とした、新耐震の永住型高級ヴィンテージマンションである。小ぶりな鉄筋コンクリート造の建物でありながら、しっかりと車寄せを配し、その天井には半球形のドームを掲げるさまは、通りかかる者に「邸宅としての品格」を一瞬にして悟らせる。よく見れば、隣り合わせの美術館と同調のデザインである。抑制の利いた重厚感は昭和のバブル以前特有のもの。景観を造り上げる第一条件は規模(スケール)ではない、そんな思いにさせてくれる外観である。
リングシャッターゲート付き地下駐車場からは、そのまま住戸フロアに直結。内廊下設計である。今回取材したリフォーム住戸は170平米超。間取りは4LDK。高級ヴィンテージマンションならではの高質な建具をいかしながら、設備・内装を一部替え、利用価値の飛躍的向上を図った。次のページでその詳細をご紹介する。