大手外食の仕掛けるヒット商品の再登板

吉野家

吉野家は10月29日に1400万食を売り上げた「牛すき鍋膳」の復活を決めた

大手外食チェーンでかつてのヒット商品の復活が相次いでいる。

吉野家は、昨年11月に投入してから今年の5月まで1400万食と異例のヒットを飛ばし、牛丼業界の“おひとり様鍋ブーム”の先駆けとなった「牛すき鍋膳」と「牛チゲ鍋膳」を10月29日から復活させた。

牛丼業界での激しい競争に苦しむ吉野家が、商売の信条とする『はやい、うまい、やすい』のうち、『はやい』を諦めてまで開発し成功を収めた苦心のメニューだ。この牛すき鍋膳は、吉野家にとって、すき家や松屋との牛丼御三家の価格戦争で苦戦を強いられていた状況を一発逆転に導いた、まさに“伝家の宝刀”ともいえる存在。今年はこの牛すき鍋膳を“プチ贅沢”の最近のトレンドを踏まえて、5月の販売終了時の590円より40円高い630円と強気の価格設定で投入し、再ヒットを望む。

一方、ハンバーガー業界ではマクドナルドもかつての人気商品の復活を決定。今年の5月に期間限定で販売し、好評を得たとんかつマックバーガーを10月29日から定番メニューに加えた。このとんかつマックバーガーは、客足が遠のいたマクドナルドの顧客を呼び戻すための戦略商品として位置付けられ、販売終了後の6月からは「みんなのとんかつソース開発プロジェクト」を立ち上げ。外部の専門家や消費者の代表を巻き込んで、顧客が本当に望んでいる商品作りに取り組んできた。8月には全国規模で開発したオリジナルソースのとんかつマックバーガーをお披露目し、投票で最もおいしいソースを決定。その結果、人気の高かったごまかつソースで華々しい復活を遂げたのだ。

なぜ、吉野家やマクドナルドはかつてのヒット商品を復活させたのか?

このかつてのヒット商品の復活の背景を分析すると、各社それぞれの事情が浮き彫りとなる。

まず、吉野家は昨年11月に牛すき鍋膳を投入後、消費税が増税される4月まで堅調な売上の伸びを記録してきた。

吉野家

吉野家は昨年12月から「牛すき鍋膳」で驚異的な売上増を記録した



今年の売上を見てみると消費税増税後に一時的な落ち込みは見られたもののここ最近は回復傾向にある。ただ、12月からは昨年の牛すき鍋膳の爆発的なヒットで前年同月比の売上をクリアするためには、同じような起爆剤がどうしても必要になってくる。そこで、新たなメニュー開発をしてリスクを冒すよりは、昨年のエースに再登板してもらい高いハードルをクリアしようという狙いがあるのだ。

一方、マクドナルドの場合はより深刻な事情が浮き彫りになる。マクドナルドはここ2年ほど顧客の減少傾向が続いていた。そんな矢先、7月にはチキンマックナゲットなどチキン関連商品を仕入れる中国の工場で使用期限切れの原料使用問題が発覚。食の安全に不安を抱いた顧客の足が遠のき、7月以降深刻な顧客離れが加速して業績が悪化している。この影響でマクドナルドは2014年1月-9月期の決算で、売上高が前年同期比12.7%減の1,722億円、税引き後利益は75億円の赤字に転落するなど、経営の屋台骨が揺らぐ大変なピンチを迎えているのだ。

マクドナルド

マクドナルドの顧客離れが深刻化し、売上は大幅なマイナスが続いている


この苦境を脱しようと今年は次々と新製品を開発して投入してきたが、残念ながらどれも爆発的なヒットにはつながらずに不発。“最終兵器”として一縷の望みを託し投入するのが、かつて期間限定で好評を得たとんかつマックバーガーであり、定番化によって何とか復活のきっかけをつかもうと必死なのだ。