マーケティング/マーケティング事例

赤字からのV字回復! USJ人気の秘密と次の展開(2ページ目)

2014年10月初旬、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの視察へと赴いた。そこでマーケティングコンサルタントとして気づいたこと、今後の戦略について考えたこととは。赤字からV字回復した人気の秘密とともに解説します。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

統一感の無さが課題

東京ディズニーランド(以下、TDR)に行くと、誰もが「夢の国」に来たような気持ちになる。まさに現実と異なる世界がそこにはある。

一方、USJはそうではない。確かにハリーポッターの世界観は素晴らしい。エリアも、施設も、スタッフもハリポタの世界を理解し、具現化しようとしており、完成度が高い。しかし、ハリポタ以外のエリアは色々なアトラクションが並べられたものであり、TDRのような統一された世界観はそこにはない。そもそもハリウッド映画のテーマパークとしてスタートしたUSJだが、それだけではうまく行かず、さまざまなコンテンツを取り入れるようになったのだ。

現在も「世界最高をお届けする」という名目のもと、ハリウッド以外にも、前述のモンハン、バイオハザード、ハローキティや時にはワンピースなどのアニメコンテンツも揃えている。ただ、ハリポタと比べると、どうしてもエリアの雰囲気や施設のクオリティが遠く及ばない。「世界最高をお届けする」という目標であるから全体としての統一感はなくても仕方が無いが、一つ一つのクオリティを上げていくことが重要だ。TDRのリピーター率は90%以上である。USJが安定的な経営をしていくためには、リピーター率を高めることが重要である。そのためにもハリポタだけでない他施設の質の向上が重要だ。

またTDRと比べてUSJのエリア、アトラクション数は少ない。TDRはすべてのアトラクションを回りきれないから「また来たい」ということに繋がる。同時にTDRは、アトラクションに乗れなくても、その場所にいるだけで充実した世界観を味わえるので「また来たい」という気持ちになる。USJの場合、アトラクションが少なく、世界観も徹底されていない。既存エリア・アトラクションの質を高めるだけでなく、新規エリア・アトラクションの充実も急務であろう。

USJの未来はどうなる?

USJの未来は明るいと見る。ハリポタ以外の課題も多いが、逆に言えば改善の余地が大いにあるからだ。

その一つがオフィシャルホテルだ。ガイドもオフィシャルホテルに宿泊したが、そのクオリティにはまだまだポテンシャルがあるように感じられた。例えばホテル周辺に遊ぶ環境が整っていないこと。USJが閉園したら、やることがないという状況だ。大阪中心部まで電車で乗り継いで行かなければならず、わざわざ行かない人の方が多いだろう。今後、ハイグレードなオフィシャルホテルの誘致、増設によって滞在型リゾートとしてのUSJの価値は高くなるはずだ。

もう一つの可能性は「カジノ」だ。USJ周辺は、工場や空き地がまだまだ多く見られる。政府の観光立国化推進の中で、カジノ法案が通過する可能性は高い。関西国際空港からのダイレクトアクセスという利便性、海や川に近いということもあり、シンガポールのマリーナ・ベイ・エリアのような開発も可能になるだろう。USJとカジノが同エリアにあることによって老若男女、日本人外国人の区別なく、観光客は増えるはずだ。カジノ法案成立を見込んで、マリーナ・ベイ・サンズを手がけたサンズ・グループと交渉するのも面白いだろう。

新しいアトラクションという意味では、ハリポタに勝てるようなコンテンツの創出は難しいかもしれない。あるとすればスターウォーズか。もちろん、TDRにスターツアーズというスターウォーズのアトラクションはある。しかし、USJとしては本気でこのような人気シリーズのアトラクション建設に乗り出す価値はあるだろう。ハリポタエリアのように大ヒットシリーズものの世界観を表現できるエリアがあれば、ハリポタ以上の集客力を得ることができるかもしれない。

今後のUSJの展開がますます楽しみだ。

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