「いじめる人」の心理に潜む「強者からのプレッシャー」
つい、人をいじめてしまう人の心に抱えているものは?
では、いったいどうしていじめは起こるのでしょう? 理由には様々なことが考えられますが、その一つに、「いじめる側が何らかのプレッシャーにさらされている」という可能性が考えられます。たとえば、アニメ『ドラえもん』では、ジャイアンやスネ夫がいじめっ子です。しかし、彼らは家に帰れば、「親」という権力者におびえる「弱者」です。現実のいじめっ子も、自分より強い誰かにおびえる「弱者」なのかもしれません。
大人のいじめでも同様です。パワハラ上司は、上から課せられるノルマやプレッシャーにおびえている「弱者」なのかもしれません。モラハラをする人は、「見下されたら自分の立場が危うくなる」という不安におびえる「弱者」なのかもしれません。
<目次>
「いじめる人」が抱える「弱い自分」とは?
強者からのプレッシャーや見下されることへの不安におびえていると、「弱さ」を感じさせる存在に過剰に苛立ってしまうことがあります。これは、弱く見える相手に自分自身の弱さを投影し、相手の弱さを攻撃することによって、自分の弱さを打ち消そうとするためです。また、そもそも強者は弱者を威圧し、有無を言わせずに従わせることで優越感に浸ろうとします。自分自身が弱者として強者の優越感の犠牲にされてきた場合、「自分も同じように弱い者を威圧して、優越的な立場に立ちたい」と思い、人をいじめてしまうのかもしれません。
相手を攻撃したときに、後悔できるバランス感覚があるか?
いじめることを躊躇できる心を育てることが大切
たとえば、『ドラえもん』ののび太は、「また0点取ったの?」などとよくお母さんに怒られていますが、お母さんは暴力を振るったり暴言を吐いたり、親のプライドを押しつけせず、基本的には、穏やかな態度で息子に接しています。お父さんも同様です。さらに、のび太は幼い頃にはおばあちゃんに温かく見守られ、「のびちゃんのままでいいんだよ」と言われて育ちました。
したがって、のび太には「自分も誰か弱い者を見つけて、いじめてやろう」とするようなところがありません。時折「ころばし屋」や「のろいのカメラ」のような恐ろしい道具を使ってジャイアンやスネ夫に仕返しをすることがありますが、その後には必ず自身に災難が降りかかり、深く後悔しています。このように、他人を攻撃してしまったときに罪悪感を感じられることは、人間関係における健康なバランス感覚なのです。
いじめる側の心の問題への対策は、いじめ防止対策上も重要
以上のように、人をいじめたくなる気持ち、いじめの優越感に浸りたい気持ちの根底には、強者からのプレッシャーにおびえ、自分の弱さを他人に投影して攻撃する、という無意識の心理が働いているのかもしれません。もちろん、「人をいじめてはいけない」「いじめは人権侵害である」という原則は、しっかり伝え続けていく必要があります。ですが同時に、「その人は、なぜそのようないじめをするのか」といういじめる人の行動の背景や心理にも目を向け、対策を考えていくことも必要になると思われます。
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