チトワン国立公園のアトラクション 4.村めぐり
花飾りが美しいタルー族の女性
ソウラハは村だが、川を渡ればすぐに園内だ。早朝、バードウォッチングをするためにホテルを出ようとすると、「出歩いちゃダメだ!」とスタッフに引き留められた。ホテルの庭にサイがいるという。もちろん野生のサイだ。
チトワン国立公園の湿地
このように、村にいるだけでジャングルの気分を味わえるし、少しバイクか車で隣の村まで出掛ければ、その途中の池や湿地でワニやサルやシカを見ることもできる。国立公園の外縁に柵があるわけでもなく、野生の楽園はそのまま村に通じている。私たちも野生に生きていることを、ここでは強く感じさせてくれる。
特に観光客に人気があるのがタルー族の村を巡るツアーだ。タルー族はネパール・インド国境に広がるタライ平原周辺で暮らす先住民で、古代からジャングルとともに生きてきた森の民。ツアーで村を訪れると、生活の様子や民族衣装、神に捧げるタルー・ダンスなどを見学することができる。
世界遺産「チトワン国立公園」の概要
タルー村の家。エントランスには手や足を用いて装飾紋様が描かれている(タルー・アート)
南部のインド国境付近にはタライ平原が広がっており、標高は50~200mほど。ナラヤニ川がもたらす豊かな土壌と豊富な降水量から深いジャングルが繁茂しており、生物多様性ホットスポットに選定されているほど多彩な動植物が生息している。
岸に寝そべるワニ
もともとマラリアの流行地でもあり、タルー族が細々と暮らす以外にほとんど人の手が入ることはなかった。しかし、イギリスによる南アジアの植民地化が進み、銃が浸透するとこうした動物たちがハンティングの対象となった。
動物の影が濃いことから19世紀から20世紀中頃までネパール王室の狩猟場として保護された。1960年代にマラリア対策で農薬が散布されたり森林が盛んに伐採されたが、自然破壊を憂えた国王が1973年に国立公園に指定し、軍の監視の下で環境保護が進められた。
1984年に「ロイヤル・チトワン国立公園」の名前で世界遺産登録されたが、2008年の王政廃止・共和制への移行を受けて「チトワン国立公園」に名称を変更した。世界遺産にも登録されている「カトマンズの谷」やヒマラヤの山地とともに、ネパールの重要な観光地となっている。