世界遺産/アジアの世界遺産

チトワン国立公園/ネパール(2ページ目)

チトワン国立公園の熱帯原生林には、トラやサイ、ヒョウ、クマ、ジャッカル、サル、ワニ、イルカ、クジャク等々、数多くの野生動物が生息している。そして原生林を歩くジャングル・トレッキングや、ゾウに乗って駆け回るエレファント・ライド、カヌーで川を下るリバー・クルーズなどで、ジャングルや野生動物たちと触れ合うことができる。今回は野生のジャングルが体感できるネパールの世界遺産「チトワン国立公園」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

チトワン国立公園のアトラクション 2. エレファント・ライド

エレファント・ライド

エレファント・ライドの様子。ゾウの背に乗ってジャングルを進む。ゾウに乗っている限り無敵だ

サバンナでもジャングルでも、どんな動物も手出しができない最強の動物、それがゾウだ。だからゾウに乗れば安全快適にジャングルをサファリすることができる。

おまけにゾウなら徒歩では厳しい湿地や川もぐいぐい進めるし、視線が高くなるので動物たちを見つけるのが容易になる。エレファント・ライドはチトワン最大のアトラクションと言ってもいいだろう。

国立公園へのサファリの起点となるのがソウラハ村だ。郊外にはゾウの飼育・繁殖を行っているエレファント・ブリーディング・センターがあるほか(見学可)、木々を運んだり農業の手伝いをしているゾウを見かけることもある。村にはすっかりゾウが定着しているようだ。

インドサイ

インドサイの親子

ソウラハ村の村外れでゾウに乗り込み、いざ出発! 川を渡り、ジャングルを抜け、湿地を駆ける。トレッキングのときは半分「出ないでくれ」と祈っていたが、エレファント・ライドでは同乗した皆でワイワイガヤガヤ動物を探す。

サイはしばしば湿地に現れる。ゾウはひるむことなく接近し、目の前に陣取ってじっくりとサイを眺める。サイの装甲は戦車のように重厚だが、上から見下ろすサイはとても愛くるしい。

チトワン国立公園はラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)の登録地でもあり、湿地ではバードウォッチングも楽しむことができる。クジャクをはじめとするカラフルな鳥類も多く、自分が熱帯にいることを強く感じさせてくれる。

 

チトワン国立公園のアトラクション 3.リバー・クルーズ

チトワンの湿地と河川

チトワンの美しい湿地と河川。いたるところに鳥や動物がいる

湿地が多いのはチトワン国立公園をナラヤニ川やその支流が貫いているから。その川を下るリバー・クルーズがまた見物だ。

早朝、ジャングルは深い霧に覆われる。視界が遮られている中で時折聞こえてくるキーとかカーとかいう鳴き声やパシャパシャと水を打つ音、バサバサという羽音が臨場感を盛り上げる。

ヌマワニ

ヌマワニ。チトワン国立公園ではさまざまな種類のワニが生息する

その中をカヌーはスルスルと静かに水を切って進む。明るくなるにつれて霧は次第に消え去り、視界が開けてくる。川縁には数え切れないくらいの鳥たちがいて、せわしなく活動している。

よく見ると川辺にはワニの姿もある。といっても、アフリカのサバンナで見るような巨大なワニではなく、口も細くてどこか愛嬌がある。

ジャングルに朝日が落ちると霧は完全に晴れ上がり、鳥たちがいっせいに飛び立ち、空を舞う。サルたちが木々を飛び、シカが湿地を飛び跳ねる。

日本では野生動物はなかなか見ることができないものだと思っていた。でもジャングルでは動物たちはどこにでもいて、当たり前のように生活をしていることを教えてくれる。これが本来の自然の姿なのだと。

 
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