不調に悩むワタミ
居酒屋業界の優等生、ワタミの不調
「和民」等を展開するワタミの2014年4~6月期連結決算は、売上高は394億円(前年同期比3%減)、 最終損益は9億9200万円の赤字 となった。業績悪化の要因は客数の減少だ。なぜ、居酒屋業界の代表格であるワタミの業績はここまで悪化してしまったのだろう。その要因を説明するには、ワタミの創業について説明しなければならない。ワタミは渡邉美樹氏が1984年に創業し、一代で築き上げた企業だ。裕福だった幼少時に父親が営む会社が倒産した後、運送会社の仕事で資金を稼ぎ、別の企業で経理を学び、創業した。その創業物語は小説『青年社長』(著者は高杉良氏)にもなり、多くのビジネスマンが読んだ。渡邉氏は新進気鋭の経営者として尊敬され、明るい店内、低価格で美味しい料理を提供する和民はビジネスマンだけでなく、子ども連れを含む老若男女で大盛況となった。
しかし、今のワタミにはその面影は無い。ワタミはブラック企業というレッテルを貼られることが多くなり、店舗からは活気がなくなった。
”ブラック企業のレッテル”以上に深刻な問題
ワタミに貼られた”ブラック企業”というレッテルはブランドイメージを大きく低下させている。この問題が本当に大きな影響を及ぼしているのは客に対してではなく従業員・スタッフに対してだ。多くの客にとっては、ブラック企業であろうとなかろうと店選びには関係ない。しかし、従業員・スタッフに対しての問題は深刻だ。今の時代、スタッフがイキイキと働けるかどうかは飲食業、販売業の大きなポイントになる。そしてスタッフがイキイキ働けなければ、店舗において客へのホスピタリティは落ち、オペレーションも悪化する。その結果、客離れが起きるのだ。ワタミだけでなく、牛丼チェーン店のすき家、マクドナルドも、スタッフに関しては問題を抱え、結果として客離れを招き、業績は悪化している。飲食店全体に言えることだが、今やどこの店に行っても、おいしい料理を低価格で提供することは当たり前だ。だからこそ、ホスピタリティ(おもてなし)が差別化のための重要な要素になったのだ。ワタミ離れの要因は、ブランドイメージの低下だけでなく、従業員・スタッフのホスピタリティ低下によるところが大きいのだ。
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