ランニングをする理由は

ランニングやジョギングを始める理由は、人によって実に様々です。しかし、いずれも共通しているのは、「今より走れるようになりたい」ということでしょう。記録を狙うランナーから、健康のためにランニングを続けたいランナー、あるいはウルトラマラソンなどに挑戦しようというランナーまで、根本には同じ思いがあります。

しかし、1つ念頭に置いて頂きたいことがあります。それは、「楽に走る」ということです。痛む脚を無理に動かして走り続けても、その先には望まぬ結果が待ち構えているでしょう。趣味であるはずのランニングやジョギングは、自分自身を苦しめるためのものではないはずです。しかし中には、

「フルマラソンを走り切れたら、どうなってもいい!」
「サブ4さえ達成できれば、もう思い残すことはない!」

などと考える人がいるかもしれません。しかし実際にフルマラソンを完走してからも、本当にそう思えるでしょうか?大きな感動や達成感を得られるマラソン。多くの方は、「もっと走り続けていたい」と感じるはずです。だからこそ、走る前に「楽に走る」ための下準備が欠かせません。結果としてその下準備は、早く、そして長く走るためのスキルとなるのです。

まずは正しい姿勢から

ランニングにおいては、フォームにおける姿勢について指摘されます。「正しい姿勢を保って」などと声を掛けられて、頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ経験をお持ちの方は、多いのではないでしょうか。

学校などで、「背筋を伸ばして」と言われた経験があるはずです。これは、姿勢を正すために掛けられる声。背中をピーンと伸ばして、ちょっと背が高くなったような気分になります。しかし本当に、これが正しい姿勢なのでしょうか?

ランニング,フォーム

背骨が曲がって腰が落ちている


いわゆる「背筋を伸ばした」姿勢を横から見ると、背骨は弓なりになっています。それと同時に、お尻が少し後ろへ突き出してしまうでしょう。胸が前に出て、上体が反っている姿勢です。もしかしたら、顎が上がっているかもしれません。

試しに、鏡の前で背筋を伸ばした姿勢を作ってみましょう。では、この姿勢で走ったらどうなるのか。腰が下がってフォームはバラバラ。お世辞にも綺麗なフォームで走っているとは言えないでしょう。

ランニング,フォーム

脚から頭までが一直線に安定している


ランニングにおける基本姿勢は、骨盤を前傾させて頭から脚までが一直線になる形です。そして、脚や膝、上体、顔がしっかりと前(=走る方向)へ向いていること。私自身の実践のみならず、トップランナーやトライアスリート、あるいはランニングスクールやワークショップを主催する方々のお話を聞いても、これは共通しています。

ランニング,フォーム

仰向けで骨盤を起こしてみる


試しに、膝を立てて寝転がってみてください。恐らく多くの人は、背中と床との間に空間があるでしょう。これは大人だけでなく、私が指導している中学生も同様でした。

ではそのままの姿勢で、骨盤と腹筋を意識しながら空間を埋めてみます。さらに、脚も伸ばしてしまいましょう。頭、背中、腰、お尻、脚のすべてが床に着いているわけですから、これが「真っ直ぐ」な姿勢といえます。この姿勢を、立った状態で作ります。

骨盤を起こした正しいランニングの基本姿勢。想像以上に難しいと感じるかもしれません。しかし、繰り返し姿勢作りを行っていくことで、この姿勢がむしろ普通になっていきます。

普段の動きから意識する

正しい姿勢を身につけるには、とにかく反復して覚えこませるのが一番です。そのため、日常から姿勢を意識して動くようにしましょう。例えば椅子に座っているときも、骨盤を起こして背筋を真っ直ぐに。あるいは道端を歩いているときも姿勢を但し、爪先がハの字にならないよう真っ直ぐに着地するなど。

わざわざ時間を設けてランニングに出かけなくても、これなら誰もが常に練習できます。そしてこの姿勢が、最終的にはランニングするうえで大切なスキルとなるのです。

ランニングする際にも、姿勢を崩さないようにするのがお勧めです。疲れて姿勢が崩れた状態では、良い走りなどできません。それでも距離だけを目指して走る人は少なくありませんが、効果半減。それならば、正しい姿勢を維持できる範囲で、気持よくランニングを終えられた方が良いでしょう。その際、できれば自分のランニングフォームをチェックできると最高です。

ロードトレーニングならば、近所のお店のガラス窓に映った自分を見ることもできるでしょう。スポーツジムであれば、トレッドミルの横に鏡があるかもしれません。グループで練習するならば、お互いにスマートフォンなどでフォームを撮影&チェックするのもお勧めです。

お勧めのランニングドリル

ランニングフォームをより実践に活かしていくために、ランニングドリルという方法があります。これは走るだけでなく、1つ1つの動作を確認しながら行う「基礎運動」です。50m程の直線があればできますので、近所の公園でも取り組めるでしょう。座位や立位などの静止した状態、あるいは歩きなどゆっくりした動きから、少し身体に負荷のある状態でフォームを念頭においた運動を行います。

ランニングドリルには様々な種類があり、人あるいは団体によって取り入れているものが異なります。ここでは、是非誰にでも実践して頂きたいランニングドリルを3つご紹介しましょう。いずれのドリルも、まず立位で正しい姿勢を作ってから、その姿勢を保持して行うようにしてください。

【ランジ】
ランニング,フォーム

上体を真っ直ぐ腰を落とす


片足を前へ出して、そのまま腰を低く下げます。このとき、上体は真っ直ぐなまま維持し、前後左右に傾かないように注意しましょう。また、脚の爪先と膝も、開くことなく前(=進行方向)へ向いているか確認します。そのまま、ゆっくりと脚を交互に出して進みましょう。

【アンクルリフト】
ランニング,フォーム

膝が前に出ないように注意


膝下を曲げ、脚を後ろに上げます。お尻につけるようなイメージで振り上げると、前から見ると膝下が消えているように見えます。お尻の前に手を添えても大丈夫です。脚が前に出ないように注意しましょう。その場で何度か振り上げ、少しずつスピードを早めながら前傾にして前に進みます。姿勢が保たれていれば、脚で地面を蹴ることなく前に進むでしょう。このとき、上下に跳ねないようにすることがポイントです。

【バウンディング】
ランニング,フォーム

着地反動を上手く使って斜め上へ


リズムよく「ポーン、ポーン」と跳ねるようにして進みます。このとき、着地は身体の一直線上、そして腕を大きく振るようにします。上に跳ねるのではなく、身体を前傾にして、その角度に沿った方向へ進むのがポイントです。上体が左右にブレないよう、しっかりと軸を意識して下さい。

身体を支える体幹を鍛えよう

正しい姿勢におけるランニングフォームは、前傾姿勢によるランニングが基本です。そのため、前傾を維持するために体幹(=コア)の筋肉が大切になってきます。体幹がしっかり締まっていないと、すぐに姿勢は崩れてしまうでしょう。

体幹を鍛えるには、いわゆる「体幹トレーニング」に属する練習が必要です。これは、筋トレのひとつです。しかし中には、この体幹トレーニングを通常のランニングトレーニングと別物として扱っている人も多いでしょう。もちろん別々に行っても、筋力は鍛えられます。しかしランニングで活かせる実践的なトレーニングとするためには、可能な限りランニング前に行うのがお勧めです。

体幹トレーニングによって、もちろん使用した筋肉は疲労します。だからこそ、ランニング中も各部位に意識が集まり、「どの部位が、ランニングでどう使われるのか?」を意識しやすくなるのです。具体的に、いくつかトレーニング例をご紹介しておきましょう。

【プランク】
体幹トレーニング

体幹をしっかり締めて真っ直ぐに


腕と爪先で身体を支え、脚から頭までを一直線に保ちます。このとき腰が曲がって“くの字”になったり、逆に背中が沿ってお腹が落ちてしまったりしないよう、しっかり腹筋・背筋を締めるのがポイントです。20~30秒維持し、これを1~3回繰り返します。

【サイドプランク>】
体幹トレーニング,サイドプランク

前後の揺れにも注意


プランクの横バージョンです。脚と脚を重ねあわせ、腕との2点で身体を支えます。脚から頭までは同様に一直線ですが、前だけでなく上から見た際にも真っ直ぐになるようにしましょう。

身体が開いて後ろに倒れ気味になったり、逆に維持しきれず前に倒れ込みそうになったりする場合があります。動きを確認するには、身体の真横で自由になっている腕を上げて、その角度を確認すると良いでしょう。20~30秒維持し、これを1~3回繰り返します。

【バックエクステンション】
体幹トレーニング,バックエクステンション

伸ばしたら膝と肘を引きつける


両手のひらと両膝を着いた状態で、左右反対の手足を伸ばします。伸ばしたとき、目線は手の先へ。手から頭、腰、脚までが一直線になるようにします。伸ばしきったら、ゆっくり肘と膝を引き寄せてくっつけます。これを、左右20~30回ずつ、2~3セット行いましょう。

いかがでしょうか?正しい姿勢、あるいはフォームを身に付ければ、無駄な筋力や体力を使うことなく走ることができます。そしてそれは、結果的に早く走ること、あるいは長く走ることに繋がっていくでしょう。下準備を欠かさず、さらにランニングを楽しんでいって下さい。

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