マーケティング/マーケティング事例

不振の続く”持ち帰り寿司”に未来はあるのか?(2ページ目)

持ち帰り寿司の老舗、「小僧寿し」が苦境に陥っています。なぜ、「小僧寿し」を始め、持ち帰り寿司業界の不振が続いているのか。そして、彼らに未来展望は描けるのか。マーケティングの視点から説明します。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

持ち帰り寿司に未来はあるのか

今まで述べたように、持ち帰り寿司の未来は厳しいと言わざるをえない。今の市場で戦うには、味か価格の見直しは必須だ。

これ以外に経営改善計画を真剣に策定するのであれば、経営に関わる数字をすべて把握するだけでなく、社員やFC店へのヒアリングをすることから始めたい。特に社員やFC店で働く人達には、今まで言う機会がなかった意見があるだろう。それが重要であることは前提だが、マーケティング視点だけで考えられるアイデアを二つほど挙げてみたい。この段階では仮説の域を抜けない点はご了承いただきたい。

持ち帰り寿司の未来戦略作りのヒント1:「ならでは」要素を明確にする

持ち帰り寿司の存在意義を再定義する。回転寿司でもなく、宅配寿司でもなく、コンビニやファストフードの持ち帰りでもない”持ち帰り寿司”の存在意義を見つけることが重要だ。その場合、味や価格に左右されにくいコンセプトを作ることから始めたい。仮に”サプライズ””ハッピー”をコンセプトにすれば、宅配寿司よりも豪華なパッケージを作り、お祝いのための寿司というポジションを獲得することも可能だろう。また最近の自宅パーティーの増加トレンドを踏まえて、みんなで盛り上がることを前提に、寿司にロシアンルーレットの要素を取り入れるという方法もある。”持ち帰り寿司”というポジションを守るならば、”持ち帰り寿司”でしか得られないUSP(独自の強み)を作ることが大事だ。

持ち帰り寿司の未来戦略作りのヒント2:戦う場所を変える

現在、日本の食文化は世界的にも人気がある。日本市場ではなくグローバル市場に目を向ければ、「小僧寿し」をはじめ、持ち帰り寿司の未来にも明かりが見えてくる。すでに日本でもFC化の展開を進めているので、直営店だけでなく海外の現地企業との合弁企業を設立したり、FC店舗を募るなどの方法もあるだろう。「小僧寿し」に関しては、持ち帰り寿司としての長い歴史が「古くささ」というマイナスのブランドイメージではなく、「日本の老舗」というプラスのブランドイメージにも変えられる。マーケティング視点から言えば、持ち帰り寿司が苦戦している現在の状況は、顧客の声をちゃんと聞かなかったり、競合分析が十分でなかったり、自社商品への評価が甘かったりと今までやるべきことをやってこなかった必然の結果だ。ただ、苦しい状況ではあるが、白旗を挙げる状況ではない。関係のない第三者にまで漫然と意見を募るよりも、やれることは数多くあるのだ。

最後に

持ち帰り寿司業界は、今のままでは近い将来消えて行くかもしれない。なぜなら消費者ニーズがそこになくなってしまったからだ。今必要なのは、人事や財務経理の手直し以上に、マーケティングの手直しだろう。そこに気づいて実行しない限り、10年後には業界自体が消えてしまうかもしれないのだ。
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