増える「個住」
家族の時間と自分の時間を分けることのできる個住は、ストレスの少ない住環境がつくれる?
ただし、個食は家族の絆を阻むなど、あまり良いイメージではありませんが、ここで述べる「個住」には、特にマイナスのイメージはありませんので、誤解なきよう、お願いします。
まず、私が実際におこなった住み方調査で見た、個住の典型的事例をご紹介しましょう。
夫の部屋は地下か1階
目黒、世田谷の地価の高いところに住む夫婦と子どもひとりの3人家族。土地の有効活用をするため、ホームエレベーター付の地上3階建てもしくは、地下1階・地上3階建が主流です。こうした住まいはほとんどといっていいほど、1階もしくは地下が夫の部屋になっています。2階がリビング・ダイニング。3階が妻と子ども部屋および洗面室・浴室・トイレ、というのが間取りの典型パターンです。
夫の部屋が1階、地下1階というのは、平日の帰りが遅く、帰宅時の物音で他の家族の迷惑にならないようにという配慮と、気兼ねなく酔っぱらって深夜帰宅をしたい、という願望がまじっての選択かと思われます。朝食は摂らないケースも多いようです。
そうなると、家族が寝静まったころに帰宅し、家族が知らないうちに出掛ける夫は、家族と顔をあわせる機会がほとんどありません。ドアを閉める音で、出かける気配は分かるようですが、「行ってきます!」「行ってらっしゃい!」の挨拶を交わすことはないようです。
「家を建てて4年になりますが、家で食事をしたのは数回しかありません」と働き盛りの50代前半の男性が言っていたのが印象的でした。
妻は自分の部屋以外に趣味のスペースも確保
こうした住宅の特徴は、妻の趣味のスペースが十分とられているということです。2階リビングに隣接して彫金の作業スペースをとっていたり絵を描くアトリエを設けていたり、ダイニングキッチンを相当広くとって料理教室を開いているなど、妻の自己実現の場として、住いは大いに役立っているように思われます。
また、3階の自室にはベッド、パソコンとデスク、TVが置かれていて、ここにも自分の空間が確保されています。たいていトイレ、洗面室、浴室に隣接しており、使い勝手もよさそうです。家にいる時間が一番長い主婦だからこその特権といえるでしょう。
子ども部屋は家のなかで一番条件の良い部屋……次のページ