街のランドマークとなるためには希少性や差別化が求められる
それでは、ここから本コラムのタイトルでもある8つの必須条件を見ていくことにしましょう。
1.希少性
必須条件の第1番目としては「希少性」が挙げられます。ここでいう希少性とは「唯一無二のマンション」ということになります。たとえば、閑静な住宅地にある武家屋敷や大使館の跡地に建設された低層マンションであったり、都心の一等地にあり駅近でありながら、一定の敷地を確保した大規模あるいは高層マンションなどは希少性に優れています。
特に、ブランド立地と呼ばれる高級かつ成熟した住宅街は、マンションを建設できるだけのまとまった敷地が売りに出されることが希有だけに、どうしても分譲価格は高くなってしまいますが、その分、価格に見合った資産価値が温存されることになります。総じて家賃水準も高止まりしていることから、経年劣化(価値の下落)しにくいエリア特性があります。誰もが一度は住んでみたいと思うあこがれの街は、人気が衰えない分、値崩れしにくくなっているのです。
2.ライバルマンションとの差別化
次に、マンションの商品企画がライバル物件と「差別化」できていることも重要な条件となります。時代を反映してか、今般、託児所や介護施設を併設したマンションが高い人気を誇っています。今年6月からは中学生以下のお子さんに対して子ども手当が支給されますが、その一方で待機児童の問題がいまだに解消されない中、未就児を持つご家庭にとっては子供の預け先が懸案事項となっています。そうした中、自宅マンション内に託児所や学童保育があれば、お母さんは安心して仕事に出かけられるようになります。
このように時代のニーズを先取りし、差別化できているマンションは高い資産性を堅持することが可能となります。同じ差別化でも、たとえば最上階のプールなどは維持費の問題から逆にマイナス要素であると、私ガイドは考えています。「差別化」≠「珍しさ」というわけです。気に入ったマンションが見つかったら、そのマンションは差別化できているかどうか、事前にチェックしておくと安心です。
3.可変性や持続性
2006年6月に住生活基本法が施行されたことで、わが国の住宅政策は「フロー型」から「ストック型」へと大きく舵(かじ)を切ることとなりました。これまで、あたかも住宅を耐久消費財のように扱っていたのを、同法を契機に「いいものをつくり、長く大切に使う」というストック重視の政策へと方向転換しました。その結果、マンションにも「可変性」や「持続性」が求められるようになり、家族構成の変化や維持修繕のしやすさに対する適応能力が欠かせなくなりました。長く住み続けるためには、そのための機能(仕掛け)が必要となるのです。その機能が備わっていることで、資産価値の維持にも大きく貢献することになります。
4.将来性
現在、人気の高いマンションを見比べてみると、ある共通点があることに気付きます。その共通点とは、再開発による複合型マンションであるという点です。単にマンションを1棟建てるのではなく、特定エリアを大規模に再開発して複合機能を持たせた開発手法が人気のもととなっています。日常生活の利便性向上に伴う将来価値の上昇期待が、人気の源泉となっているわけです。新駅の開業も同様です。長く住み続けるためには将来への期待は欠かせません。マンションを買うということは、同時に地域を買うことでもあります。将来性のあるマンションは、資産価値の温存に貢献すること間違いありません。
5.管理体制の充実
この点については、特段、説明するまでもありませんが、快適なマンション生活を送るためには管理体制がしっかりしていなければなりません。特に、管理費や修繕積立金が適正額であるか、また、実効性のある長期修繕計画が立案されているか ―― といった点が重要となります。居住者が気持ちよく生活できないマンションに、資産価値など期待できるはずもありません。マンション管理と聞くだけで眉をひそめる人がいますが、マンションに住む以上、マンション管理からは逃れられません。管理体制の善しあしをしっかり見極める目を持つことが必要となります。
6.景観価値 (周辺住民との合意形成)
ここでいう景観価値とは、「周辺住民との合意形成が取れているかどうか」ということです。地元住民にとってマンション開発は、これまでの生活を一変させかねない大きな地殻変動となります。それだけに反対看板を掲げ、建設に反対していた地域住民との意思疎通が十分でないと、せっかく夢のマイホームに入居しても、ご近所との関係がぎくしゃくしてしまい、気持ちよく生活することができなくなります。マンション建設反対の話題は代々、地元住民に引き継がれます。こうした話が風評被害となり、資産価値の下落要因となっていきます。
7.環境への配慮がなされているか (環境対応度)
地球温暖化の防止に向けて、全世界的に環境への関心が高まっています。京都議定書の締約国である日本でも、ようやく本格的な動きが見られるようになりました。この流れは、今後、さらに強まっていくことは想像に難しくありません。マイホームにおいて“環境配慮”がデファクト・スタンダードになる日は、そう遠くないのです。まだまだ分譲マンションに関しては、その普及度は一戸建てに劣っていますが、いずれはエコマンションが「標準」となるでしょう。当然、環境対応の遅れたマンションは資産価値の低下を余儀なくされます。エコロジーは住宅産業においても必須ワードです。
8.売り主の経営安定度 (倒産リスク)
詳しい説明は不要でしょう。ようやく景気にも持ち直しの色が見えるようになり、最悪期は脱することができました。しかし、油断は禁物です。これまで同様、売り主の倒産リスクには注意したいものです。