コンビニ業界で高まる人材確保の動き
コンビニ業界における人材確保の動きが活発化している。ローソンは新会社を設立し、人材確保をするとともに、業務のトレーニングを受けた人材を店に紹介するシステムを開始する。また店舗だけでなく人材の適性によっては製造工場などでの勤務も可能にする。ファミリーマートは人材派遣会社に加盟店専用の受付窓口を設けローソン同様の取り組みをスタートさせる。コンビニ業界で始まった人材確保・育成
マクドナルドの不振も人材を抜きには語れない。以前よりマクドナルドについてはブログでも書いており、複数の経済誌のインタビューでも考察を述べてきた。
<過去ブログ>
苦境のマック、なぜ主要客・ファミリー層の“心”は離れた?客数減の理由を店舗から考える
原田CEO時代に進めたフランチャイジー店舗比率の増加、頻繁に実施した期間限定メニューやプロモーションによって店員からスマイルが消え、オペレーション力も落ちた。リカバリーしようと、注文から60秒で商品を提供できなければハンバーガー無料というキャンペーンを実施したこともある。あのキャンペーンは外部へのアピールという意味だけではなく、スタッフへの意識付けという内部へのアピールという意味も強かった。それほど人材問題が深刻になってきたことの証明だ。
増える外国人と高齢者スタッフ
ファストフードもコンビニで働く人に外国人や高齢者の割合が飛躍的に増加した。少子高齢化によって若年層スタッフが減り、高齢者層が増加したという理由もあるし、そもそも若者がきついバイトをしなくなった面もある。私はファストフード、コンビニなどの定点観測を都内数ヶ所で続けているが、表参道ヒルズのオシャレな飲食店よりも、近くのすき家のバイトの方が時給が高いにも関わらず、すき家にスタッフが集まらないという現実も目の当たりにしている。今の若者たちは時給以上にきつさを敬遠しているのだ。こうして今後も外国人と高齢者スタッフの割合は増えていくことになるだろう。コンビニ、ファストフードでの仕事はやることが多い。だからこそきつい仕事になり敬遠されている。しかしコンビニ、ファストフード業界もなんとか人材は確保しなければならない。そして、その人材が優秀であることも重要なことだ。マックカフェが始まる以前、スマイルが店頭メニュー表示されている頃のマクドナルドは、人材確保と人材教育においては最も優れた企業だった。それが今や見る影も薄い。マクドナルドに行ってもオペレーションの良さや店員のホスピタリティを感じられることが少なくなった。だからファミリー離れも加速しているのだ。
日本だけでなく世界で起こる労働者の取り合い
ローソンやファミリーマートが人材確保に目をつけたのは至極当然のことだ。人口が減る中で、これからの日本では人材の取り合いになる。現在はアジアからの留学生たちの多くが、コンビニやファストフードでバイトをしているが、今後それが続くとは限らない。なぜなら、アジアの人たちはどんどん裕福になっているし、留学先として日本ではなく別の国を選ぶ可能性も増えて行くからだ。このような状況を踏まえれば、コンビニやファストフードにとって人材確保は急務だったのだ。ますます重要になる「人」の存在
あらゆる業界において、製品やサービスの差別化は難しくなってきている。コンビニ業界も例外ではない。その中で、消費者の購買行動において「人」の要素が重視されてきたことをローソンとファミリーマートは認識しているのだ。ローソンやファミリーマートの人材確保・教育の動きには、もう一つポイントがある。それがフランチャイズ加盟店(FC店)の負担軽減だ。人材確保が難しくなる中で、今までのように店舗ごとに採用をしていても、なかなか採用が進まない。採用がFC店にとって負担になれば、他の業務に割く労力や時間を減らさざるをえない。結果としてFC店はどんどん疲弊していき、本部にとってもマイナスになってしまう。
企業が成長するためにはFC店の成長が欠かせないと経営者が考えれば、共存共栄のための方策を取る。本部による人材確保・教育システムの用意は、まさにそこにも繋がる。
コンビニ業界が始めた人材確保・教育のシステム。低迷を続けるマクドナルドを始めとするファストフード業界よりも、好調であるコンビニ業界が先んじた事は、まさに現在の状況を象徴しているように見える。ファストフード業界も早急に同様以上のシステムを構築するべき重要なことなのだ。