親の不安から受験生の子どもにかけてしまいやすい3つの言葉
中学受験では、受験に挑む子どもの意欲に「親の意向」が色濃く反映されます。なぜなら、小学生の子どもにとって、「親の考え」や「親の評価」に従うことは、とても重要で意味のあることだと感じるから。そのため、中学受験に挑む子どもたちは親の意見に素直に耳を傾け、親が勧めることを素直に信じて、頑張ろうとします。
だからこそ、受験への導き方が親の一方的な押しつけになっていないか、子どもに過剰にストレスを与えていないか、常に振り返る必要があります。その可能性に気づくためには、日々の生活の中でふと頭に浮かぶ言葉、子どもに何気なく伝えている言葉を手掛かりに、自分の考え方を振り返ってみるとよいと思います。たとえば、次のような言葉に心当たりはありませんか?
1.「この受験に○年、○百万円もかけたのだから」
中学受験までかかる費用は、200万円とも300万円とも言われています。これだけの膨大な時間とお金、そして労力をかけていれば、「それなりの結果を出してくれなければ困る」と考えてしまうのも無理はありません。
しかし、そもそも「教育はハイリスクな投資」と割り切って考える必要があります。受験は水ものです。大金を投入しても、子どもが必ず親が納得する結果を出せるという保証は、どこにもありません。「投資金額に見合う結果を必ず出すべき」という思いを子どもに向けていないかどうか、ぜひ振り返ってみてください。
2.「全落ちしたら、後がない」「落ちて、公立に行ってもいいの?」
「全落ち」とは受験した学校のすべてに不合格となること。子どもが勉強に身が入らない時期には、うっかりかけてしまいやすい言葉です。そもそも、中学受験に失敗したからといって、「後がない」ということなどありません。「白か黒か」の二分割思考で子どもにプレッシャーを与えるのは、とても危険です。
また、中学受験に熱心な親御さんの中には、残念ながら公立中学に偏見を持っている方も少なくないものです。しかし、多くの公立中学は実社会の縮図であり、ダイバーシティを体感できるとても学びの多い環境です。公立中学に対する偏見を植え付けてしまうと、子どもの視野を狭めてしまう危険があります。
3.「○○ちゃんは偏差値70超えている」
子どもは、模試の結果に一喜一憂しているもの。そんなとき、親から「○○ちゃんは偏差値70超えているんだって」などと、他の子と比較する言葉をかけられると、気持ちのやり場がなくなってしまいます。また高学歴な親ほど、子どもにも同等の栄光をつかんでほしいと望んでしまうものですが、そもそも親と子どもは別の人間です。
他者と比較されれば、「負けたくない」という一時の闘志を燃やすことができるでしょう。しかし、その思いだけで長い受験生活を乗り切るのは、とても大変なことです。たとえ受験には合格できても、入学した途端に燃えつき、本当に目指すべき目標を見失ってしまうかもしれません。
――以上のような言葉がふと心に浮かんだときには、欲望やあせり、目先の結果にとらわれて、子どもにプレッシャーを与えていないかどうか、よく振り返ってみましょう。
受験生の親が頑張っている子どもに伝えたい3つの言葉
では、逆に子どもにはどのような言葉をかけてあげるといいのでしょう? お勧めしたいのが、次の3つの言葉です。
1. 「ここが伸びているね」と以前に比べて向上した変化を伝える
受験勉強に臨んでいると、以前のその子に比べて、何かしら向上しているポイントがあるはずです。それを見つけて、ぜひ言葉で伝えてあげましょう。「小さい時には漢字が苦手だったけど、だいぶ間違えずに書けるようになったね」「苦手な科目も、毎日勉強するようになったね」、このように、身近で子どもの努力を見てきたからこそわかる変化。その変化を伝えてあげると、子どもは自分の成長に気づくことができます。
2. 「今、こういう気持ちなんだね」と、感情にラベリングする
受験生活は、喜怒哀楽の感情との格闘です。ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情を味わうことも、受験を通じて体験できる貴重な学びです。それらの感情との付き合い方を、ぜひ言葉かけを通じて伝えてあげましょう。
たとえば、子どもが不安になっていたら、「今の気持ちは“不安”から来ているんじゃないかな」というように感情を言葉にしてラベリングします。そして、不安は頑張っているからこそ生じる感情であり、話すことで乗り越えることができると伝えます。このようにすると、子どもは受験を通じて湧く感情と上手に付き合う方法を、体験的に学ぶことができます。
3. 「○○に頑張るあなたは、とてもすてきだよ」と、受験に挑む良い姿勢を伝える
子どもの受験生活を通じて注目したいのは、「結果」ではなく「プロセス」です。目標に向かって努力する子、苦手を克服するために頑張る子、あきらめないで何度も挑戦する子――子どものこうした姿に注目し、言葉にして伝えることです。
子どもが親に見てもらいたいのも、結果ではなく自分が頑張っている姿。それを親が具体的にフィードバックすることで、子どもは「自分のことをしっかり見てくれている」という安心感を感じることができます。
――中学入学は、これから続く長い挑戦の「序章」に過ぎません。その先には大学受験、就職活動があり、社会に出てからも数々の挑戦があります。子どもの人生には、この先、気の遠くなるほど長いチャレンジが待っています。中学受験の「プロセス」を通じて子どもの心を丈夫にし、親子の心のきずなを強くする関わりを、日頃の言葉かけから行っていきましょう。
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